僕と仮説②
「ウル、大丈夫かい?」
「うん……」
「落ち込ませるつもりは無かったんだよ。まだ仮説だし、ウルを襲う衝動の元が何なのかはわからないよ」
「そうだけど……僕、もう一度会話してみたい。あの衝動がもしかしたら魔王様かもしれないなら!」
「会話? もう一度ってどういうことだい?」
「……前に一度だけ会話というか、話したことがあるんだよ」
「話せた? あのオーラの元と?
……よし、じゃあ前に会話出来た時の状況を詳しく聞こうか!」
ダンジョンであったことをなるべく詳しくグリュエールに説明する。
モーティマが襲われていて、マリーが助けようとした時。
いつもより斬りたいって衝動は弱かった。
マリーが戦ってる間に声が聞こえてきて、ほとんど会話にならなかったけど……それでも反応はしてたんだ!
「鍵はそのモーティマだね。モーティマってどんな人なんだい?」
「モーティマは巨人族と人族の混血だって言ってたよ!」
「混血……混血なら誰でもいいのか。それともモーティマじゃないといけないのか……
うーん……そのモーティマってどこに住んでいるのかわかるかい?」
「住んでる場所とかは聞いてないからわからないよ……でも今日の二の鐘が鳴る頃に冒険者ギルドに来るはずだよ」
「なんだって! じゃあそのタイミングで捕縛しよう!」
「捕縛というのは穏やかじゃないですね」
今までずっと黙って僕達の様子を見ていたギルド長が口を挟んできた。
「うるさいよ、イリーシス。言葉の綾じゃないか。協力をお願いするって言えばいいかい」
「そうですね。ただ、彼は昇格試験の結果を聞きに来るはずです。無理矢理連れて行って、邪魔をしないように」
「結果なんか聞いたらすぐ終わりでしょ? それくらい待つさ」
「いえ……彼はすぐには終わりませんよ」
「はあ!? なんでだい! 結果聞いて合格してればちょっとギルド証をいじるだけでしょ」
「詳しくはお話出来ませんが、すぐには終わりませんとだけ」
「まさかモーティマって……いや、まあいいよ。わかった。
じゃあ会議室使うよね?」
「ええ。そうですね」
「そっちの話が終わったら時間をもらえないかい?」
「本人が了承するならば、いいのではないですか」
「もちろん確認するさ。それと、ウル。マリーって子は? もしかしたら、そっちの子も関係があるかもしれないよ」
「マリーも同じ時間に冒険者ギルドに来るはずだよ。モーティマと待ち合わせしてたから。
でもマリーはその後すぐに村に戻るって言ってたけど……」
「なんだって!? それじゃ今日引き止めないと実験が出来ないじゃないか!」
実験!? 実験て言われるとちょっと怖いんだけど……
「イリーシスがモーティマと話している間に、あたし達はマリーと話そう」
グリュエールがそう提案してきた。
マリーとまたお話が出来る!
それなら僕は大歓迎だよ!
これが本当に最後かもしれないけど……
「うん。わかった!」
「よし、二の鐘はもうすぐだね? ギルド前で待ち伏せしよう」
グリュエールは僕を掴み取り、そのまま部屋を出て行こうとする。
「あ、イリーシス。あたし達にも会議室貸して」
「はあ……まあいいでしょう。モーティマさんと使う会議室の隣をお貸しします」
「さすがイリーシス! 話がわかる!」
「モーティマさんが来たら私に報告するように伝えてあります。それまでには会議室も用意しておきますので、問題を起こしたりしないようにしてくださいね」
「わかってるよ! よろしく」
グリュエールはそう言うと、部屋から出て階段を駆け下りていく。
何事かと見てくるギルド職員や冒険者を無視して、冒険者ギルドの外へと飛びだした!




