ギルド長とグリュエール
「起きてください、グリュエール!」
ギルド長が、グリュエールに声をかけながら揺らしてる。
それでもなかなか起きないなんて……もうお昼なのに。
「う……ん……」
「起きましたか? まったく、どんな生活をすれば……」
「起きてない」
ギルド長の言葉を遮ってしゃべったと思ったら、またすぐに目を閉じて寝始めた!
あ、ギルド長がプルプル震えてる。
「いいかげんにしなさい、グリュエール! あなたはいつも、いつも!」
ギルド長がキレた!
無理矢理体を起こさせて、頭を押さえつけてる。
「いいかげんにするのはあんただ、イリーシス。こんな朝っぱらから人の家に来るとか、非常識だ!」
「もうすぐ三の鐘が鳴りますよ! 朝っぱらではありません!」
「三の鐘!? ……やっぱり朝じゃん。あたしが動き出すのは五の鐘からだって決まってるの」
「決まってるのじゃありません! そんな生活をしているから、あなたは……」
ギルド長のお説教が始まった。
このグリュエールって人は、金色で腰まで届くくらいの長い髪をしてる。寝むそうに半分閉じてる目は、キレイな碧眼。そして……耳が尖ってる!
エルフだ!
でもエルフって森の中とかに住んでるんじゃなかったのかな。
こんなにお酒を飲んで、お昼まで寝てるエルフって……
「わかった、わかりました! 今度から出来たらちゃんとしまーす。これでいい?」
「はあ、本当にあなたは……もういいです。せっかくあなたが興味を持ちそうな物を持ってきましたが、今日は帰ります」
「えっ!? あたしが興味ありそうな物でイリーシスが持ってくるって……
まさかあれ!? サウザントドラゴンの素材でも手に入ったの!? それともクラーケンの方!?」
「いえ、そうでは……」
「じゃああっち!? ヒュドラとか、アトラスとか!?」
「いえ、だから……」
「まさか!! まさかあれを!? 存在するかも定かではないと言われてる……」
「落ち着きなさい! モンスターの素材ではありません!!」
「え、違うのかい? じゃあなによ。つまらないものだったら帰ってもらうわよ」
「はあ……まったく。あなたに見てもらいたいのは、こちらです」
ギルド長はそう言って僕をグリュエールに差し出す。
「何よこれ。剣じゃない。これがどうしたのよ」
「漆黒の刃……といえばわかりますか」
「はあ!? 何寝惚けたことを言ってるんだい。漆黒の刃って言えば、呪われた魔剣のことだろう? この剣からはそんな禍々しい気は感じないわ」
「……やはりそうですか。ウルさん、自己紹介して頂いてもよろしいですか?」
自己紹介!?
えっと……何を言えばいいんだろ?
「ウル? いきなり何言って……」
とりあえず……あいさつだよね!
あとは名前?
「こんにちは。ウルです。えーと……よろしくお願いします?」
「えっ!? この剣……知識あるアイテムかい!?」
「そうです。グリュエールにはこの剣について調べて頂きたいと」
「やる! やるよ! あんた、ウルっていったよね」
「うん、そうだよ」
「あたしはグリュエール。あ、今までの話も聞こえてたのかい?」
「うん。グリュエールがなかなか起きない所から」
「そっか、そっか! いいね、久々にやる気でてきたよ!」
「グリュエール、それでその剣の……」
「あぁ!? イリーシス、まだいたのか。邪魔だからさっさと帰りな」
「……はあ、わかりました。ウルさん、時間のあるときに様子を見に来ます。グリュエールですが、こんなですけど信用はできるので安心してください」
「うん、わかった!」
「ちょっと、ちょっと! こんなってなにさ。大丈夫だよ。優しくするよ」
「あまり無茶はしないでくださいね。それでは私は帰りますので、後はよろしくお願いします」
「わかったわかった! 邪魔だからほら、さっさと帰りな」
邪魔もの扱いされたギルド長がちょっと寂しそうに帰っていく。
グリュエールって人も悪い人ではなさそうだし、大丈夫……かな。




