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元魔王の剣  作者: 鵙来 蜜柑
45/210

Side リン

時間は少し遡り、マリーが筆記試験を受けてるタイミングから始まります。

「くそっ! くそっ! なんなのよ、あいつ! なにが試験官よ、偉そうにして!」


 あー、イライラする!

 ちょっと寝坊して遅れただけなのに、失格ってどういうことよ!


「しかも……いい子そうに座ってたあいつら……ボクが困ってるんだから、だれか助けてくれたっていいじゃない!」


 あそこで「そんな優秀そうな方が昇格試験を受けられないなんて、冒険者ギルドの損ですよ! 少しの遅刻くらい多めにみましょう!」とか言ってくれる人いてもいいと思わない!? 思うでしょ!


 あーーーーーー! もう! ヤダヤダ!

 皆死んじゃえ!

 実技試験で全員死んじゃえ!


「ホントなら今頃、試験中のはずだったのに……筆記試験の為にカンニングペーパーこんなに用意したのに。もういらない!」


 ポケットの中、服の隙間、裾や袖にと隠しておいた紙を全部投げ捨ててやった!

 試験中にどんな隙があるかわからなかったから、どこからでも取れるようにあちこちに用意しておいたのに……全部無駄になっちゃったじゃん!


「あーあ、この後どーしよーかな。なにも予定ないし……」


 いつも通り裏道を歩く。

 大通りに並ぶ店には無い、面白い物が裏道の店にはいっぱいある。


「あ、この店。今日は開いてるんだ」


 たまにしか開かない店。開く日も不定期で、月一回開く日があるかどうか。

 そんな店だからこそ、ボクは王都にいる日は毎日この道を通る。

 だって……このお店で売ってる物ってすごいんだもん!


「こんちわー! 今日は何売ってるの?」


「またあんたかい。開く度に来るのなんてあんたぐらいだよ」


「えー、だってこの店いいもんばっか売ってるじゃん。来なきゃ損だよ」


「そうかい、そうかい。ありがとよ。そうさね、今日はこんな物あるよ」


 (ばばあ)(じじい)かもよくわからない、皺くちゃな顔をしてローブを被った店主が液体の入った小さな瓶を渡してくる。


「なにさ、これ」


「簡単に言えば、毒さ。しびれ薬だよ」


「しびれ薬~? そんな惹かれないかな」


「いいのかい? そんな事言って。それはかなりの一品だよ?」


「だってしびれ薬なんて、使えないじゃん。臭くて苦くて、すぐにバレるもんでしょ」


「この店でそんな物売ると思ってるのかい? 常連だと思ってたのにまだまだだね」


「なにさ! じゃあこのしびれ薬は普通とは違うっていうの!?」


「そうさね。元は無味無臭。そこに、味を付けるのに成功した。なんと、市販の回復薬と同じ味と臭いなのさ!」


「……だから?」


「まだわからんのかい。つまり、これを回復薬だって言って渡せば、その内勝手に飲むかもしれないんだよ? わかるかい?」


「えっ! あ……なるほど! えっ……それなら……」


 これ使ってあいつらに仕返しできないかな。

 試験官はさすがにムリ。

 昇格試験を受けに来てた奴ら……

 どんなのがいたっけ。

 たしか……


 お嬢様みたいな奴と、そのお付き。

 布で顔全体を覆ってた変な奴。

 でかいおっさん。

 田舎くさい獣人。


 お嬢様とお付きはダメだね。他人からもらった物を飲むわけがない。

 布の奴は……微妙。

 騙しやすそうなのは、おっさんと獣人。

 でもあのおっさんはたぶん巨人族の半人でしょ? 巨人族に効くのかな、これ。

 狙い目はあの獣人かな……


「どうするんだい? 買うかい?」


「ちょっ……ちょっと待って、今考えてる!」


 渡したからって飲むかわからない……

 しかも回復薬くらいなら持ってるもんじゃないの!?

 ダメじゃん!


 あ、でもあの獣人はこの王都で見たこと無い奴だった。

 もしかして王都に来たばっか?

 それなら……


「……買う。買うよ。いくら?」


「そうさね。本来なら金貨三枚!って言いたいとこだが、あんたなら金貨一枚でいいよ」


「ホント!? 買った! はい!」


 ボクくらいの冒険者になれば、金貨一枚なんてはした金!

 よし、これであとはあの獣人に渡すだけ!


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