マリーと実技試験 ~三階層~
「カティナ様、この辺りまでにしておきませんか」
「何を言っているのかしら? もっと奥まで行かなくては、またあの獣人に負けてしまいますわ」
「そうかもしれませんが……これ以上奥まで行きますとカティナ様にお怪我をさせてしまうかもと……」
「まあ! 私がこの程度のモンスターに後れをとると?」
「いえ! 決してそのような!」
「なら問題ありませんわ。最下層まで行きますわよ」
「カティナ様! それは……」
「まったく、あなたはウジウジと! 早く行かないと追いつかれてしまいますわ。行きますわよ」
カティナとミゲルだ。
あの二人は筆記試験の時にも一緒だったし、ダンジョンに入った後に合流したのかな。
「マリー、どうする?」
「カティナさんはたぶん、私の事嫌ってるみたいだから……あまり近付きたくないかな」
「そうだね。あの人達とは違う道で行こう」
カティナ達が向かった道とは別の道へ歩き出そうとした、その時。
あれ? ミゲルが慌ててる?
「カティナ様! 前から……」
「キラーアントですわね」
キラーアント! 毒を持ってるって聞いたモンスターだ。
マリーは通路の影からカティナ達の様子を見守る。
キラーアントの姿は大きな蟻みたいな形をしている。
「ふんっ!」
ミゲルがカティナの前に出て、背負っていた大剣を振るう。
キラーアントの装甲は硬くないのか、それともミゲルが強いのか。
キラーアントを一発で両断しちゃった。
「早く魔石を回収しなさい。急いで行きますわよ」
「はい! 承知しております」
カティナ達は魔石を回収したら逃げるようにして行っちゃった。
ミゲルはさっきまで奥へ行くのを躊躇ってたのに、キラーアントを倒した後には文句も言わずに走って付いて行く。
マリーも、ここに居てもしょうがないからと、カティナ達とは別の道へ向けて歩き出す。
もしかしたらカティナ達が向かった方向が、下層への近道なのかもしれないけど……見つかったら面倒くさそうだから、会わないのを優先だね。
「さっきの大きな蟻がキラーアントなんだね」
「そうみたいだね。ダンジョンや洞窟みたいな所でしか出ないから、初めて見た」
「薬は貰ったけど、出来るだけ噛まれないようにするんだよ、マリー?」
「もちろんだよ!」
ダンジョンの三階層を進んでいくけど、出会うモンスターは変わらずにゴブリンやスライムばっか。
他のモンスターどころか、キラーアントにもあれから出会わずに下層へ降りる階段を見つけちゃった。
「弱いモンスターばっかだよね。これで試験になるの?」
「うーん……私も初めて受けたからわからないけど、下層にはもっと強いモンスターがいるんじゃないかな」
「じゃあどんどん下へ行って強いモンスターを狩らないとね!」
「そうだけど、時間も気にしないといけないから」
「時間はまだ……大丈夫だよね?」
「うん。まだまだ余裕あるよ! ウルは時間ってわかるの?」
「僕は時間の感覚ってよくわからなくて……ごめんね」
「そんな、謝ることないよ! 時間は私が気にしておくから大丈夫!」
時間……時間かあ。
ずっと魔王城で飾られてただけで、魔王城から出てきた後もまだ少ししか経ってないし。
時間の感覚とかよくわからないけど、これからマリーや他の人間と一緒に旅をしたりするなら気にしていかないとかな。
でも今すぐには無理だから、まずはこの試験を合格してからだね!
「じゃあ、試験時間が半分くらい過ぎたら帰ろうか?」
「うん、でも帰りは道を覚えてるから、行きよりは早く行けると思うよ」
「え? マリーは今まで通ってきた道覚えてるの!?」
「え? うん。道がわからなくなったら迷子になっちゃうよ。それに森の中を歩くより覚えやすいし」
マリーは村にいた頃は、森の中で狩猟が中心の生活だったんだ。
森みたいにちゃんとした道が無くても迷子にならなかったなら、ダンジョンの通路を覚えるなんて簡単みたい。
マリー……凄い子!
「それならもっと時間に余裕あるね!」
「そうだね! 行ける所まで行っちゃおう!」
よーし、四階層だ!
四階層に入ったら、さっきまでと少し雰囲気が変わった。
今までは岩がゴツゴツしているような壁だったけど、ここは土が固まったような通路になってる。
ちゃんと固まってるから崩れてくることはなさそうだけど、何かあるのかな。




