研究成果
次の日も、その次の日も。
ナギサ達はフィールンを避けるように、朝礼が終わるとすぐ研究室へ逃げるようにいなくなった。
一度研究室へ入ると、夜まで出てこないみたいだし……
しかも出てきたと思ったら、そのまますぐに部屋まで戻っちゃう。
ご飯をちゃんと食べているのかもわからないような、そんな生活をしているナギサ達にフィールンは呆れ顔。
今日も朝礼が終わったら、ナギサとナユタは早々に部屋から出ていく。
そんな二人を見るともなく見ていたフィールンに、イェレッタが話しかけてきた。
「フィールン、今日もし時間があったらでええんやけど……ウチの研究室へ来れへん?」
「今日? うん、大丈夫だよ! 今から行こうか?」
「ありがとう! じゃあ一緒に来てもらってええ?」
「うん!」
イェレッタに誘われて、一緒に研究室へ向かうことに。
研究室に入ると、この前とは薬草の置かれている位置が変わってた。
上薬草の植木鉢は部屋の壁に沿って並べられていて、部屋の中央には……普通の薬草。
でも……上薬草じゃない普通の薬草は、この前まで一個しかなかったよね?
今は二個の植木鉢が並べて置かれてる。
「フィールン、これや!」
「これ、薬草?」
「そうなんよ。こっちがフィールンが育ててくれた薬草で、こっちはウチが育てたやつなんや!」
「えっ!? じゃあ、イェレッタ。魔力を放出することが出来るようになったんだ!?」
「うん、うん! 実は結構前から出来るようになっとったんやけど、薬草を育ててからフィールンに言おうと思って頑張ったんや」
「えー! 凄い! 凄いよ、イェレッタ!」
イェレッタが自分で育てた薬草だったんだ!
こんな短期間で育てられるようになったんだね!
「フィールンみたいに一気に成長させることは出来んかったんやけど、何日かかけてここまで育てることが出来たんや! ここまで出来たのもフィールンのおかげなんや。ありがとう、フィールン。ホンマに感謝しとる……」
「そんな……あたしなんて……」
イェレッタが涙ぐみながらフィールンにお礼を言ってる。
フィールンはちょっと気まずそう……
「あとはこれを発表すれば……ウチの実家があるような田舎でも薬草が簡単に手に入るようになるんや!」
「田舎でも?」
「そうや。フィールンは王都で生まれ育ったんやな? それなら知らんかもしれんけど……冒険者ギルドも無くて、隣の村や町まで何日もかかるようなド田舎の集落なんて行ったことあるん?」
「あたし、あまり王都から出たことなかったから……」
マリーのテッド村とかはそんな感じだったよね!
近くの町まで何日もかかってたし。
でも集落というよりは、ちゃんと村って感じがしたし……
集落ってことはテッド村より小さいのかな?
「そうなんやね。ウチの実家があるところは、そんなド田舎なんや。周囲が森に囲まれているんやけど、そこを開拓して畑を作ったりするんや。せやけど……」
「だけど……?」
「開拓しているとケガ人も出るんや。そのせいで薬草なんかは常に不足しとる」
「近くに森があるなら……って、採取にいく余裕もないってこと?」
「もちろん森へ探しには行くんやけど、そんな大量に取ってこれるわけやない。ケガ人の方が多くて間に合わないんや。それに採取へ行ってケガする人もおるし……」
「そうなんだ……」
田舎の集落ってそんなに大変な生活をしてるんだ!?
「だからこれや!」
イェレッタは自分で育てた薬草を、優しく包み込むように両手で持ち上げた。
「こうやって薬草を育てられるようになったんやったら、足りなくなることも採取でケガをする人もいなくなるんや!」
「そっか……そうだね!」
「それなりに魔力は必要になるけど、ウチにも出来るくらいや。どんな集落でも魔力持ちは何人かいるやろうし、一人では無理でも数人で協力すれば育てられるはずや!」
イェレッタは、研究成果をまとめれば終わりだと凄いやる気になってる。
フィールンの名前も連名でって言ってたけど、フィールンは断っちゃった。
今までまとめていた資料や、書き込む為の羊皮紙を取り出しているイェレッタを、フィールンは眩しそうに見つめていた。




