マリーと実技試験 ~二階層~
すぐに出発! と思ったら、マリーがゴブリンから魔石の回収をしてる。
そっか、この魔石で試験の結果が変わるから、ちゃんと集めておかないとね。
ゴブリンの魔石は体の中心部分。人間でいう心臓の辺りにあるらしい。
マリーはゴブリンを斬るときに、魔石を傷つけないように考えながら僕を振るったみたい。
マリーにとっては魔石の回収はお手の物。戸惑うこともなく、作業はすぐに終了。
ダンジョン探索を再開したけど、出てくるモンスターはほとんどゴブリン。たまにスライムと呼ばれる液体みたいなぷよぷよしたモンスターが出てくるくらい。
両方ともマリーが僕を振るえば一発。難なく倒して進んでいく。
一階層はそんなに広くも無く、すんなりと階段を見つけることが出来た。
二階層に入っても、ほとんど一階層と変わらず。見た目も出てくるモンスターも一緒。
道がちょっと複雑になったかな? って思うくらい。
少し歩いているだけで階段を発見!
あ、でも……
「マリー、ちょっと待って。階段の所に誰かいるよ」
「え? 私にはわからないけど……」
「誰か隠れてる。たぶん人間」
「わかった。気を付けていく」
マリーが警戒しながら階段へと向かう。
階段へ一歩足を踏み入れた瞬間、マリーの後ろに何かが飛び出て来た!
マリーもすぐに気付き、僕を抜きながら振り向く……
「!!!」
斬りたい。切りたい。斬りたい。
……!
なんで……いきなり……!?
斬りたい。斬る。
ダメ。違う。
斬らせろ。
「一人…………一緒……」
「……私は…………それ」
マリー達が……何かしゃべってる。
話してないで斬っちまおう。
違う。斬るんじゃない。
斬りたいな。なんでもいいから斬らせろよ。
「……その方が…………ろ」
「わか…………で……」
もういいだろ。
斬っちまおうぜ。
……ダメ。斬るだけじゃダメなんだ。
でも…斬りたいな。
一人くらいなら斬ってもいいかな。
いや、ダメだよ! ダメ……だよね? あれ……いいのかな……
___カチンッ___
…………。
マリーが僕を鞘に納めてくれた。
斬りたいって衝動がまた襲ってきた。
後少しでもマリーが鞘に納めてくれるのが遅かったら……たぶん耐えられてなかった。
マリーは会話をしていた人間に背を向けて歩きだす。
背を向けられた人間は、マリーとは逆に二階層へと戻って行った。
あれ? あの忍者みたいな姿は……イゾウ?
一緒に昇格試験を受けてる人だ。
「ねぇ、ウル。勝手に決めちゃったけど、これで良かった?」
「……ごめん。さっき何の話をしてたの?」
「えっ? 聞いてなかった?」
「うん……話を聞いてる余裕が無かった」
「余裕無かったって……? どうしたの?」
「僕の事も後で話すよ。先にイゾウが何を言ってきたのか教えて」
イゾウは朝まで一緒にいようって提案をしてきたみたい。
一人でダンジョンにいるよりは複数でいたほうが警戒も出来るし楽になるからって。
でもマリーは断った。
イゾウはダンジョンの奥まで潜るつもりがないみたいで、上層で魔石の数を稼いでポイントを増やす予定だとか。
それだと二人になれば稼ぎは半分。
合格ラインに届くかもわからない。
それなら危険だとしても、別々のほうがいいってマリーは考えたみたい。
「それにイゾウさんと一緒にいたら、ウルとお話出来ないしね」
「……! マリー、ありがとう」
「どういたしまして。それで、ウルはどうしたの?」
「僕は……僕もよくわかってないんだけど、たまに全てを斬りたい。目の前の人間を斬り殺してしまいたいって衝動が起きるの」
「たまに……なの?」
「うん。今までに二回だけ。すごい衝撃で、斬りたいってこと以外何も考えられなくなるの。それに耐えようとしてたら、さっきは話を聞いていられなかった」
「それはどんな時にくるの?」
「わからないんだ。前にきたのは……盗賊に拾われて、その人が僕を鞘から抜いた時。それと今の二回だけ」
「その前にゴブリンを斬ったときにはその衝動はこなかったの?」
「うん、こなかった」
「うーん……その二回に共通点があるのかな」
「鞘から抜かれたときにくるってこと以外はわからないよ」
原因はよくわからない。だけど、僕があの衝動に耐えられれば何も問題はない!
うん。耐えればいいだけなんだ。
「ウル……大丈夫?」
「うん! 大丈夫だよ。もしまたあの衝動がきてもちゃんと抑えるから! 今回だってなんとかなったんだから、これからも大丈夫!」
「そうだね……私にも協力できることあったら言ってね」
「うん! ありがとう、マリー」
やっぱりマリーは優しいな。
マリーの為にも…僕も頑張らないと!
絶対にあんな衝動に負けないんだから!
僕達はこの階層もどんどん進んでいく。
途中で出会ったモンスターを斬ったりもしたけど、あの衝動がくることは無かった。
魔石を集めながら下へ進む道を探していると、十字路になっている場所に出た。
左右の道を覗きこみながら確認していると……話し声?
この声は……




