マリーと実技試験 ~一階層~
いよいよダンジョンの中へ入る。
これがダンジョン……
なんかそこら辺にある洞窟と変わらないように見えるけど……
周りは岩壁。人が二~三人並んで歩ける位の広さ。
「ウル……行くよ?」
「うん! 頑張ろうね!」
マリーは僕をカバンの中から取り出し、代わりに今まで持っていた剣をカバンに仕舞う。
王都では一緒に護衛の仕事をしていた冒険者達に僕が見られないようにする為にカバンに入れられてたけど、ダンジョンに入っちゃえばもう心配ない!
「あ! そうだ、マリー。“アイテムボックス”!」
「え!? なにこれ……」
「“アイテムボックス”だよ。この中にカバンとか仕舞っておけるから、入れちゃっていいよ」
「え……うん」
マリーは大きなカバンの中から、腰に着けられる小さいカバンだけ出して他を全部“アイテムボックス”に仕舞った。
小さいカバンを腰に着け、準備が出来たと確認するように頷く。
よーし、ダンジョン探索を再開だ!
周りには人の気配も、モンスターの気配も無い。
先に入った人達がモンスターを狩っていっちゃったのかな?
ダンジョン内は静かで、マリーの足音だけが響いてる。
「ウルはダンジョンの様子とかわかる?」
「うーん……モンスターが近付いてきたりすればわかるかもしれないけど。それ以上はわからないよ」
「そっか。何かわかったら教えてね。それで……今更なんだけど……」
「なに?」
「ウルってどんなことが出来るの?」
「どんなことって?」
どんなこと出来るかって聞かれても……僕ってなにが出来るんだろ?
「しゃべれたり、魔法が使えたりするでしょ? どんな魔法が使えるとか、他にできることがあるのかとか……さっきの“アイテムボックス”にもビックリしちゃって」
「うーんとね。魔法はいろいろ使えるよ!」
「いろいろって?」
「火炎魔法、水氷魔法、風土魔法、闇魔法だったら大体全部。後は生活魔法とか空間魔法もちょっとだけ。光魔法は使えないんだ」
マリーがいきなり立ち止まった。
ギギギギって音が鳴りそうな、ぎこちない動きで僕に視線を送る。
「……え? 全属性使えるの!? 空間魔法ってさっきの“アイテムボックス”もそう?」
「うん。“アイテムボックス”は空間魔法の一つだね。それに全属性じゃないって。光魔法は使えないもん」
「あ、そっか……えっとね、ウル。
空間魔法を使える人なんて、ほとんどいないんだよ。それに、普通は自分が得意な一つの属性しか魔法は使えないの」
「えー!? 空間魔法はそんな珍しい魔法じゃなかったよ! それに皆もいろんな属性の魔法使えてたと思うけど」
「皆って? ウルはどこから来たの?」
「僕はね……」
ダンジョンを進みながら、マリーに魔族領の話や、魔王様の話。それから僕が目覚めてからの話をしてあげた。
昨日は、マリーの話を聞いていたけど、僕の話は全然してなかったもんね。
マリーは最初、驚いた顔をしていたけど、魔王様が殺されちゃった話を聞くと憤りを感じているみたいだった。
「それで川に流れて、人のいるところまで来たの」
「そうなんだ……ウルは復讐しようとかは考えないの? 魔族の敵を討とうとか」
「うーん……復讐するより平和になったほうが楽しいこといっぱいありそうでしょ? それに魔王様が平和を望んでいたから!」
「そっか。優しいんだね、ウルは」
「えー? そんなことないよ。あ! マリー、気を付けて。あの曲がり角の向こうに何かいるよ」
会話をしながらダンジョンを進んでいた僕達。途中で別れ道もあったけど、悩んでも仕方ないと適当に進んできた。
そして今、目の前にある曲がり道。
その奥からなにか生き物の気配がする。
僕が声をかけてからマリーはすぐに構えをとる。
曲がり角の向こう側にいる存在はまだ僕達に気付いた様子は無い。
見つからないように慎重に進み、角から道の先を覗く。
そこにはいたのは、緑色の体をした子供くらいの大きさの生き物。
「ゴブリンね。一体しかいないならすぐに……」
マリーはそう言うと、僕を鞘から抜きゴブリンへ向かって走り出す。
走るマリーの足音を聞いて、ゴブリンもやっとこっちに気付いた。
でも、もう遅い。
マリーが僕を振るうとゴブリンは真っ二つに。
「宿屋で試し斬りしたときも思ったけど……ウルの切れ味凄すぎるよね」
「…………!」
「ウル? どうかした?」
初めて生き物を斬った。
ゴブリンの体を僕が通り抜けていく感覚。
肉を斬り裂き。
骨を砕く。
柔らかい肉だろうが。
硬い骨だろうが。
スルリと通り抜ける。
後に残るのは、ゴブリンの死体。
そして大量の血を浴び、ゴブリンの血肉がこびり付いた僕。
うん、なんか感じることがあるかなって思ったけど……何も感じないや。
だって僕、剣だしね。
キレイにしてほしいなとは思うけど。
「ねえ。ウル?」
「あ、ごめんね! 初めて生き物を斬ったから、ドキドキしちゃって」
「えっ!? 初めてだったの?」
「さっきも話した通り、魔王様のお城ではずっと飾られてるだけだったから」
「そうなんだ。初めて斬ってどうだった?」
「うーん。特に何も……キレイにしてほしいなって思うくらい」
「ふふ、そっか。わかった」
マリーはカバンの中から布を取り出し、僕を拭ってくれる。
こびり付いていた肉はすぐに落ちたけど、血や斬ったときについた油は簡単には落ちない。
「今はこれでいい? ダンジョンから出た後ならちゃんとキレイにしてあげられるんだけど……」
「うん! 大丈夫だよ。肉片とかがついてなければ、“クリア”! ほら、もうピカピカ」
「あ、魔法……」
僕の体は新品のようにキレイに!
スッキリしたし、ダンジョン探索を再開だ!




