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VISION  作者: Mr.M
四章 殺人未遂事件

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第65話 探偵の使命

「ふむ。

 如何にも。

 毒を用意したのは私だよ」

大烏はカップを傾けながら、

さも当然のことのように言い放った。

その穏やかな声色が、

私にはひどく滑稽に思えた。


食堂の柱時計が

コツコツコツと時を刻んでいた。


「元々。

 この集まりを開いたのは、

 鈴木さんのためだからね」

大烏が僅かに口元を緩めた。

その醜い笑みを見た瞬間、

背筋に冷たいものが走った。

私はそっと紅茶を口に含み、

ゆっくりと飲み込んだ。

それから恐る恐る口を開いた。

「つまり・・。

 大烏さんは、

 鈴木さんが笠原さんを

 殺そうとしていたことを、

 知ってたんですね?」

「はっはっは」

大烏が声を上げて笑った。

乾いたその笑いは、

ひどく芝居がかって聞こえた。

「本来であれば。

 招待するのは、

 鈴木さんと笠原くん、

 その2人だけで十分だった。

 だが。

 さほど親しくない笠原くんを

 呼ぶには餌が必要だった。

 そこで。

 私は歌川さんに声を掛け、

 君を誘うよう仕向けた。

 ところが。

 3人の招かれざる客が現れた。

 小鳥遊くん、ヒカルくん。

 そして蒼井くんだ」

大烏の言葉に

私の頭は激しく混乱した。

餌・・。

大烏はたしかにそう言った。

まさか・・。

私が口を開くよりも先に、

大烏はさらに続けた。

「多少のイレギュラーはあったものの。

 それでも。

 計画に支障はないと思っていた。

 毒を入れたシャンパングラスを、

 笠原くんに渡すだけだからね。

 だが。

 蓋を開けてみれば・・」

大烏はそこで言葉を切った。

「私が・・邪魔をした」

一瞬の沈黙の後、

大烏は溜息交じりに頷いた。

「毒の包みを

 2つ用意しておいて正解だった。

 そう思ったのだがね・・」

「2つ目の包みは蒼井さんに盗まれた」

私がふたたび言葉を継ぐと、

大烏は苦虫を噛み潰したような

表情を浮かべた。

「蒼井くんの手癖の悪さは

 わかっていたのだがね。

 まさか。

 こんな閉鎖空間で盗みを働くとは。

 完全に想定外だったよ。

 いやはや。

 私が考えていた以上に、

 彼女の頭の中はお花畑だったようだ」

そう言って大烏は

「はっはっは」

とふたたび大袈裟に笑った。

やはり。

大烏は蒼井が窃盗犯であることを

知っていた。

私は改めて紅茶で唇を湿らせた。

「だから・・。

 あなたは彼女に包みの中身が毒だと

 明かしたんですね?

 その包みを使うなと暗に釘を刺した」

大烏が黙って頷いた。

馬鹿馬鹿しい。

そこまでわかっていたのなら。

なぜ蒼井を追求して、

毒の包みを回収しなかったのか。

そうしなかったせいで。

蒼井は実際に私で実験しようとしたのだ。

結果私は・・未来を・・。

胸の奥で燻っていた怒りに

パッと火が点いた。

私はそれを大きく頭を振って消した。

私は大烏を真っ直ぐ見た。

「大烏さん。

 あなたの目的は一体何ですか・・」


食堂の柱時計が

コツコツコツと時を刻んでいた。


大烏は紅茶の香りを

ゆっくりと吸い込んだ。

「ふむ。

 探偵である私の使命は1つ。

 依頼人の問題を解決することだよ」

そしてカップに口をつけた。

「つまり。

 笠原さんを殺すこと・・ですか」

私はそう問いかけてから、

ごくりと唾を飲み込んだ。

「簡潔に言うとそうなるね。

 だが結局。

 私の計画は君に潰された。

 この計画のキーパーソンであった

 君こそが、

 何よりのイレギュラーだったのは、

 まさに皮肉としか言いようがない」

そして大烏はみたび

「はっはっは」

と声を上げて笑った。

私はカップの紅茶を飲み干した。

やけに喉が渇いていた。

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