第57話 追及
コーン。シュルルゥ。コトッ。
木琴に似た小気味よい音が
部屋に響いた。
「あなたは・・。
鈴木さんの部屋からだけでなく、
他の人の部屋からも所持品を盗んだ。
そうですよね?」
私の追及に、
蒼井は大きく欠伸をし、
そっけなく顔を背けた。
私は構わず続けた。
「でも。
私の荷物は盗まなかった。
万が一。
事が公になった時に、
私に罪を擦り付けるためですよね?」
「ふーん。
それでぇ?」
蒼井はふたたびグラスに口をつけた。
「認めるんですね、
盗んだことを?」
「ソレってさぁ。
全部想像でしょ?
ウミが盗んだ証拠でもあるのぉ?」
蒼井は二重の狐目をパチパチと瞬かせた。
「証拠は・・ありません」
「きゃはは」
蒼井の笑い声が耳に障った。
その表情はどこか楽しそうだった。
私はあえて大袈裟に溜息を吐いた。
「・・盗まれた物は
江藤さんが中庭で発見して、
皆さんの元へ返却されてます。
当然、
あなたの財布も。
蒼井さんって見かけによらず、
お金持ちなんですね」
私は皮肉を込めてそう言った。
蒼井の眉がピクっと動いた。
「盗難事件のことはどうでもいいんです。
私は警察ではないので」
私はあえて警察という単語を口に出すと、
蒼井の目をじっと見据えた。
コーン。シュルルゥ。コトッ。
木琴に似た小気味よい音が
部屋に響いた。
「はぁぁ」
蒼井がわざとらしいほど
大きな溜息を吐いた。
それから彼女はパンッと手を合わせた。
「本当に毒だったんだぁ。
あの紙包みの中身。
きゃはは」
蒼井はふたたび声を出して笑った。
私は思わず息を呑んだ。
蒼井の発言に微かな引っかりを覚えた。
その正体を探る暇はなかった。
私は軽く頭を振って、
もっとも重要な疑問を投げかけた。
「どうして私を殺そうとしたんですか?」




