第257話 今後
「あのね……攻められるわけないじゃない。ウチは超が付くほどの弱小だよ」
「そうですね。先ほど、ウチを攻めるのはマズいと言いましたが、逆はもっとマズいです。新興貴族であるウチがそんなことをすればこれまで無害をアピールして得た地位を失い、周りが敵だらけになります。陛下もラヴェル侯爵も庇ってくれないでしょう。何よりもそれはクロード様と敵対することになり、輸出入を頼り切っているウチの終わりを意味します」
どう考えても無理。
「いや、別に戦争をしようってわけじゃないぞ。その伯爵さんが悪魔教団に関わっていて、これまでと同じような敵ならその伯爵さんだけをやればいい」
「そ、そうそう」
ウチの山田辺境伯夫人はそう思ってなかったぽいぞ。
「伯爵さんを倒すっていうのもハードルが高いよ」
「一言で言えば暗殺ですからね。貴族が最も警戒することです。ましてや伯爵の地位なら警備も万全でしょう」
バレて、兵士に囲まれるな。
失敗して逃げても伯爵が陛下や周りに報告したら俺達は終わる。
少なくとも、村の人々は生活を失ってしまう。
「じゃあ、どうするんだ? 後手に回るのは悪手だと思うぞ」
「先手必勝」
キョウカは置いておいて、ユウセイ君も結構、好戦的なんだよな……
まあ、子供の頃からあんな仕事をしていればそうなるのかもしれない。
「モニカ」
「今は動くべきではありません。情報を集めるべきかと思います」
「伯爵の?」
「ええ。ラウレンツ・ポートリエ伯爵のこと、ポートリエ家のこと、伯爵領であるローライの町などを調べましょう。まずはそこからです」
確かに相手のことを知らないとな。
「できる?」
「私達にも派閥があります。ただ、それにはキョウカさんの協力が必要です」
モニカはあくまでも秘書だからな。
貴族の繋がりとなると、俺かキョウカだ。
「派閥の貴族夫人から情報を集めるわけ?」
「はい。こちらにはシャンプーを始め、多くの武器があります。それらを使ってお茶会などをし、情報を集めることも可能かと。ポートリエ家から挨拶を受けていますし、向こうがそうであったようにこちらもクロード様との繋がりがあります。情報を集めても、貴族夫人方は新しい商売先を探しているんだとしか思いません」
なるほど。
「俺がラヴェル侯爵から聞くのはマズい?」
「教えてくれるでしょうが、おしゃべりなのは貴族夫人です。何よりもウチの強みはそちらです」
それもそうか。
貴族夫人をターゲットに動いてきたわけだしな。
「キョウカ、春休み中で悪いけど、いける?」
「もちろんです。これも妻の務め!」
心配だなぁ……
でもまあ、モニカがいれば大丈夫か。
武のキョウカ、知のモニカ。
「じゃあ、モニカ、進めてくれる?」
「かしこまりました。明後日にはドレスを受け取りに行くことになっています。その際にマリエル様とクラリスに相談しましょう」
あ、ドレスって2日で仕立ててくれるんだ。
「クラリス様も?」
「ネックレスなんかの窓口はクラリスなので」
あ、そうだった。
お願いしたんだった。
「わかった。それでお願い。キョウカもよろしくね」
「任せてください。私も貴族夫人が板についてきたもんですよ」
ホントかな……
俺達は方針を決めると、やることもないのでまったりと過ごしていった。
そして、夕食の時間になると、ルリ(とキョウカ)が作ってくれたご飯を皆で食べる。
「キョウカ、夏休みに車の免許を取りに行かね?」
ユウセイ君がキョウカを誘う。
「夏休み? また先の話だねー」
「今日、山田さんとそういう話になったんだよ」
「ふーん……1人で行きなよ、6月生まれ」
ユウセイ君は6月6日生まれ。
「あ、お前、1月だったな」
「どっちみち、私はいいかな……取ろうかと思ったこともあるけど、親もタツヤさんもやめろって言いそうだし」
うーん、人斬りキョウカちゃんがちょっと怖い。
「キョウカ、行きたいところがあったら言ってね。どこでも連れていってあげる」
「わーい。ね? 周りがどう思っているかがわかるでしょ?」
いやー……
「首都高をぶっ飛ばしそうだな」
そんなことないよ……
「そんなことしないって……それよりもユウセイ君、お金は大丈夫? 詳しくは知らないけど、免許を取るのって高くないっけ? なんかお兄ちゃんがそう言ってた気がする」
そういやキョウカにはお兄さんがいるんだったな。
「山田さん、どれくらい?」
ユウセイ君が聞いてくる。
「今はどうかな……でも、軽く20万は超えたと思うよ」
「高っ……」
うん、高いね。
高校生が出せる金額じゃない。
「親御さんに借りるか払ってもらったら? 社会人になってからは時間的に厳しいっていうことで払ってくれる家庭も多いと思うよ。俺も爺さんが出してくれた」
まあ、ユウセイ君は協会に就職するから時間はあるだろうけど。
「親父に聞いてみるかー……」
正直、卒業後はばんばん稼げるだろうから貸してもいい。
何ならこれまでの仕事的にも俺が払ってもいいくらいだ。
でも、ユウセイ君にはちゃんと保護者がいるからな。
「おすすめはセダン。荷物なんか空間魔法で良いしね」
釣りもそれで完璧。
「その辺はまた考えるわ。そういや、村ってどうなってるんだ? 最近、行ってないから全然知らない」
ユウセイ君はあまり自然を好まないシティーボーイだからな。
まあ、同じ東京出身なんだけど。
「色々やってるよ。温泉とか牧場とか。あ、舗装は終わったかな」
「へー……」
あんまり興味ないっぽいな。
「タツヤ様、報告を忘れていましたが、ヤギや牛はすでに来ております」
モニカが報告してくれる。
「あ、そうなんだ。じゃあ、明日にでも見に行ってみようかな……」
「ぜひ。皆も喜ぶと思います」
いや、家でトランプかリバーシをしてるでしょ。
最近、全然人を見てないぞ。
「夫人である私も行きましょう。執事、お供しなさい」
「弟子設定から執事になったぜ……」
ご飯ばっかり食べている執事ね。
斬新だわ。
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