第256話 相談
「えーっと、モニカさんもお姉ちゃんもこの人を知っているんですか?」
ルリが2人に聞く。
「ラウレンツ・ポートリエ様は王都の西、リンゴ村からはハリアーよりさらに北にあるローライという町を治める伯爵です」
「王妃様の誕生パーティーで話しかけてきた人だよ」
「それは……偶然の一致? そこまで珍しい名前とは思いませんし……」
外国の名前事情に詳しくないが、こっちでも通じる名だ。
「人斬りキョウカちゃん、どう思う?」
キョウカは最初からポートリエ伯爵を怪しんでいた。
「たまには愛の言葉を囁く時にそう言って欲しいね」
愛の言葉を囁いたことなんてそんなにないけどね。
「ごめんね。でも、言ってみて」
「同じ名前、あの時のウェアウルフ襲撃事件、ずっと昔から活動しているのにまだ全貌が見えていない。スリーアウトでしょ」
そう思うか……
「モニカは?」
「私もキョウカさんと同意見です。同じ名前なのはまだ偶然と言えるかもしれませんが、召喚の魔法陣をあの場に設置した人間が城に入れる者というのは皆がわかっています。そして、伯爵様はその場にいました。また、教団があれだけ暗躍し、それを国が追っているのに見つかっていないのは権力者が隠しているからと考えれば納得できます。ポートリエ家は歴史ある名門で権力と影響力は伯爵という身分を超えていると評判です」
色々なピースがぴったり当てはまるような感覚がした。
「これを聞いて、ユウセイ君とルリはどう思う?」
「それらが偶然一致したとは考えづらいな……」
「あまりにもぴったりはまりすぎています」
2人もそう思うか。
「ミリアム、ミリアム、聞いてた?」
コタツの中からミリアムを引っ張り出す。
「聞いてたにゃ。黒と見てもいいレベルだと思うにゃ」
皆の意見が一致した。
「山田さん、どうするんだ?」
ユウセイ君が聞いてくる。
「それを相談したいんだ」
「静観じゃダメか? 前にそういう結論になっただろ」
なったね。
「ユウセイ君は平和な考えだねー。現代の子って感じ」
キョウカが呆れたように首を振る。
「お前もだろ……いや、いい。お前はちょっと違った」
生まれてくる時代と世界を間違えた子って言わないでー。
「キョウカはどう思うの?」
「静観は無理。何故なら向こうはこちらを認識している。わざわざ挨拶に来たんだよ? しかも、あの嘘くさい顔で」
嘘くさいかはどうかはわからないが、確かに認識はされている。
「タツヤ様、このリストに名前があるということはポートリエ伯爵はこちらの世界に関係しているということです。それはつまりシャンプーなどの整髪剤もあれほど精巧な技術で作られたネックレスも知っているでしょう。それに何より……」
リンゴか……
「リンゴはあっちの世界になく、こっちの世界の果物なんだよね……」
わざわざ変える必要もないと思い、そのままにしてしまった。
しかも、村の名前をリンゴ村にしたというアピール具合。
「どこの国かはわからないけど、さすがにリンゴはわかるよね。アップルかもしれないけどさ」
どちらにせよ、同じことだ。
魔力を込めれば言語は通じるのだから。
「山田って名乗ってるからわかる人は日本人ってわかるんじゃない? タツヤさんと私の名前も完全に日本人だしさ。金髪碧眼のモニカさんはあれだけど、私とタツヤさんは黒髪だし」
国までバレてると思った方がいいな。
「ルリも日本人で通じる名前か」
「伯爵なら調べようと思ったら家族関係は調べられますのでルリという名の娘がいることは認識しているでしょう。出自不明なタツヤ様が家族を連れて、異世界の日本から来たんだろうっていうのはすぐに想像できると思います」
だろうなぁ……
「それで挨拶に来たのかな? 要は確認に来た」
「ありえます。リンゴの件もでしょうが、名門が新興の貴族に挨拶をすることは変ではありません。ましてや、クロード様という共通の知り合いがいるならなおさらです。近づくには格好の場でしょう」
挨拶をして、バレただろうな……
「確認して、敵じゃないと判断してもらったって考えるのは楽観的すぎるかな? 一応は無害アピールをしているわけだし」
「難しいかと……陛下や王妃様からの覚えも良く、何よりもラヴェル侯爵派閥です。幸いなのはポートリエ伯爵と親交の深いクロード様と良好な関係を築いていることですが…………タツヤ様、実はネックレスや整髪料の発注はポートリエ家からも来ています」
まあ、色んなところから来ているからあの場で挨拶をしたポートリエ伯爵から来てもおかしくない。
「送った?」
「はい。先ほども言いましたが、名門ですので優先的に……」
やっぱりかー。
「これで確信に至っただろうね」
「だと思います」
ハァ……
「攻めてくるかな?」
「それはないと思います。さすがに陛下から辺境伯を任せてもらっている領地を攻めるなんてありえません。これは反逆と同義です。辺境伯はそれだけ重要かつ、重い爵位なので」
村と森だけどね。
「それは一安心だけど、だったら来るのは悪魔教団?」
「それはありえます……ただ、向こうもタツヤ様が次元転移を使えるのはわかっているでしょうし、どう思うでしょうか?」
うーん……攻めてきたらバルトルトの時と同じように戦うだろうけど、いざとなったら村人を転移でどこかに逃がし、俺達も日本に逃げるからな。
「攻めてくるか? 向こうも山田さんやキョウカの力を見たわけだろ? それに次元転移を使えるうえに山田さんの爺さんも有名人。無理じゃないか?」
ユウセイ君の意見もわからないでもない。
「どうだろ……向こうの力がどれくらいかもわからなかったし……それに数で来られたら厳しいのは間違いない」
悪魔教団の規模はかなりのものだし。
「じゃあ、こっちから攻めるか? その伯爵の領地に乗り込む」
「それだ」
それだじゃないよ、辺境伯夫人。
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