第254話 優しい子なんだよ
「ハァ……仕方がないか」
スマホを取り出し、電話をする。
『もしもしー? どうしたー?』
ユウセイ君だ。
「今いいかな?」
『やることないなーって思ってたからいいぞ。何? 相談?』
「相談と言えば、相談だね。ちょっと皆で集まって話さないといけないことがある。大丈夫?」
『いいぞー。迎えに来てくれ』
ユウセイ君は話が早くて良いな。
「じゃあ、行くから」
『よろしくー』
電話を切ると、車を発進させる。
そして、駐車場を出ると、ユウセイ君の家に向かった。
マンションの前にユウセイ君の姿が見えたので止めると、後部座席に乗り込んできた。
「車って良いなー。俺もさっさと免許を取って、金が貯まったら買おう」
「良いと思うよ……なんで後部座席?」
今日は助手席が完全に空いてるよ?
「そこはキョウカかモニカさんの席だから」
関係ないんだけどなー……
「なんかユウセイ君がVIPみたいだよ」
俺が運転手。
まあ、運転手なんだけど。
「まあ、いいじゃん。それよりも相談って?」
「皆が集まったら話すよ。キョウカとモニカ、ミリアムはマリエル様のところにいるから家で待とう」
「はいよ」
出発すると、家を目指す。
「そういえば、免許を取って車を買うのは良いけど、ユウセイ君は卒業後、家を出るの?」
「んー……数ヶ月は実家にいると思うけど、ある程度、貯金ができたらどっかにアパートを借りると思うな。一人暮らしがしたい」
良いねー。
俺も初めての一人暮らしは楽しかったよ。
「家事とか大丈夫?」
「やったことがあるから洗濯くらいはできる。飯は外食かコンビニかな?」
俺もそうだったなー。
ユウセイ君を見ていると、若い頃を思い出してしまう。
もっとも、ユウセイ君の方がずっとちゃんとしている。
「栄養が偏るし、ウチにおいでよ」
「そうする。山田さんちの飯、美味いし」
ホントにねー。
ウチの子は料理上手だし、可愛いんだ。
非の打ち所がない子だ。
「キョウカはどうするんだろう?」
「住みつくんじゃね?」
どこにとは聞かない。
「ウチ、そんなに部屋がないけど……」
リビング以外は俺とルリの部屋しかない。
「広げればいいじゃん。土地はいっぱいあるわけだし。いっそ山田城を作ろうぜ」
名前がなー……
「ユウセイ君は無限の土地があったら何を建てる?」
「想像したこともないな……バーベキュー場?」
やはり食。
とはいえ、良いと思う。
単純に広場を作るだけだろうけど。
「思いついたらじゃんじゃん意見をちょうだいね。俺、プールくらいしか思いつかない」
「山田さんはエロいなー」
違うよ……
本当に思いつかないんだよ。
あとはテニスだよ。
「お金持ちの家にある施設を考えてみたんだよ」
「色んな物を作るのは良いけど、管理が大変だし、持て余すんじゃね?」
それはそうだな……
「バーベキュー場くらいにしておくよ……」
プールの掃除なんて無理。
でっかいカエルが棲み着くやつじゃん。
「時間もあるし、ゆっくり考えればいいでしょ。家族4人と1匹で考えたら?」
そうするか……
俺達は話をしながら家に帰ってくると、留守番をしていたルリと共にコタツに入って、キョウカ達の帰りを待つ。
「山田さんに言われてちょっと部屋を見ているけど、家賃って高いんだな……」
ユウセイ君がスマホを眺めながらつぶやいた。
「地方に行けば随分と安くなるみたいだけど、こっちは高いよ。俺もなんでこんなに高いんだろうって思いながらボロアパートに住んでいた」
帰っても暗く、誰もいないあのボロアパート。
夢も希望もなかったが、今はルリとミリアムがいるし、良い家に住めているから今は幸せ。
爺さん、ありがとう。
「地域によっても変わるが、ちょっと広くなったり、綺麗めを選ぶだけでめちゃくちゃ上がるな」
「そんなもん、そんなもん。でも、ユウセイ君なら高給取りだからタワマンで民衆を見下ろす生活もできるよ」
君なら絵になる。
若き成功者って感じ。
「別に普通でいいよ」
ユウセイ君が苦笑いを浮かべた。
でも、俺はわかっている。
キョウカもだが、ユウセイ君の普通は普通じゃない。
この子達が住んでいるマンションも結構すごいし。
「ユウセイさんは1人暮らしをされるんですか?」
ルリがユウセイ君に聞く。
「高校卒業後の話。多分、ほぼ飯を食いに来るからよろしく」
「それは良いですけど、彼女さんとかいらっしゃらないんですか?」
ルリ……大人になって……
でも、まだそういうのに興味を持つのは早いんじゃないかな?
「別にいいかなー? 身近にいるのが良くないってミユとリコが言ってたが、そのせいかも……」
金の亡者だっけ?
大変だな。
「実際さ、君ら名家連中って癖の強い人が多いの?」
ユウセイ君はすごくまともだけど。
「どうだろ……でも、俺が一番知っている一番癖が強い人間が山田夫人だから安心してくれ。あれを超えるのはいないと思う」
そんなドヤ顔で言われても……
「キョウカは良い子だよ」
「毒されたか、もう慣れてしまったか……まあ、楽しい奴だから上手く手綱を握ってくれ」
「暴れ馬じゃないんだから」
「そうだな。刀持ってるもんな」
馬は刀を持たないもんね……
『ただいまー』
玄関の方から暴れ刀馬……じゃない、キョウカの声が聞こえてきた。
転移で帰ってきたのだろう。
すぐに扉が開くと、ミリアムを抱えたキョウカと共にモニカもリビングに入ってきた。
「ただいまにゃー」
「ただいま戻りました」
ミリアムはすぐにコタツの中に入っていき、モニカが品良く微笑んだ。
「おかえり。早速だけど、ちょっと大事な話があるから座ってよ」
「大事な話? あ、先に着替えても良いですか?」
キョウカが聞いてくる。
さすがにそうした方が良いだろう。
「うん。着替えておいでよ」
「はーい。部屋借りまーす」
キョウカは元気に俺の部屋に入っていった。
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