第245話 彼女(婚約者)に娘の面倒を見させ、愛人とデートする男
モニカのスマホを購入すると、2人でスマホを眺めながらスイーツが有名な店を検索した。
そして、モニカがこれが良いと言ったカフェに向かい、ケーキとコーヒーを頼む。
「モニカ、そのケーキを撮ってくれる?」
「写真ですか?」
「うん。自慢のメッセージが来た」
そう言ってモニカにスマホを見せた。
「あー……向こうもカフェですか」
写真はキョウカから送られてきたものであり、ティラミスと共に嬉しそうな顔をしているルリが写っていた。
なお、メッセージは『ウチの可愛い辺境伯令嬢』だった。
うん、可愛いね。
モニカが写真を撮り、それをキョウカに送ると、コーヒーを飲み、モニカもケーキを食べだす。
「うわっ……」
「しっ!」
声が聞こえたのでケーキが並んでいるショーケースの方を見ると、見覚えのある2人の女性がいた。
2人は休日だというのに制服を着ており、気まずそうな顔でこちらを見ている。
どう見ても九条さんと天海さんだ。
「……お知り合いですか?」
モニカが顔を近づけ、声量を落として聞いてくる。
「……ほら、退魔師の仕事をしている時に出会った名家の子達」
その辺の説明もしている。
「……あー、キョウカさんやユウセイさんと同じ……」
とても嫌な場面で遭遇してしまったかもしれない。
「ご、ごきげんよー」
「ど、どうもー」
2人はこちらにやってくると、挨拶をしてくる。
「こんにちは」
「どうも」
俺とモニカも挨拶を返した。
すると、何故か、ちょっと下がり、ひそひそしだす。
「……キョウカ…………浮気?」
「……不倫……でっか……山田さん……意外と……」
端々に聞こえてくるワードでどういう内緒話をしてるかが容易に想像がつく。
でも、不倫はおかしくない?
「2人共、今日は学校だったの?」
「あ、いえ、制服を私服にしてます」
「ウチらの家は厳しいからロクに可愛い服が着れないんだよね」
そんな感じなのか……
「ふーん、あ、せっかくだし、座る?」
「え? でも……」
「邪魔じゃない?」
正直、邪魔と思わないでもないが、ちょっと話をして、誤解(?)を解かないと俺の評判がマズい。
この子達の家ってすぐに噂が広がるし、ましてや協会の人間だから仕事場に行きづらくなってしまう。
「もう席も空いてないし、いいよ」
そう言うと、2人が周囲を見渡す。
「あ、ホントですね」
「じゃあ……」
2人はおずおずと俺達の対面に並んで座った。
そして、ケーキと紅茶を頼む。
「奇遇だね。よく来るの?」
「たまに来ますね。今週は初仕事を含めて頑張ったのでご褒美です」
九条さんが答えた。
「あ、今週からだったんだ」
「ええ。もうちょっと前から出向していたんですけど、テストもありましたし」
あ、それもそうか。
そりゃウチの子達ともタイミングが被るわな。
「大変だねー」
「いえ……あのー……」
九条さんがちらちらとモニカを見る。
「ねえ、山田さん。その人誰? キョウカは?」
九条さんが言い淀んでいると、天海さんがはっきりと聞いてきた。
「この人はモニカ。俺は協会以外にも仕事をしていてね。この子は部下なんだよ」
「どうも秘書のモニカです。社長がお世話になっております」
社長だって!
かっこいい!
「……社長……秘書……」
「……愛人だ…………エロいし」
またもや2人がコソコソしだした。
「2人共、勘違いしているようだけど、違うよ」
絶対に言いふらさないでね。
「違うんですか……」
「隣同士で座って何を言ってんだって感じだよね」
「しっ!」
だって、モニカがナチュラルに隣に座ったんだもん……
「あはは……ちょっと相談があってね」
苦しい……
「あの、キョウカは?」
九条さんが聞いてくる。
「キョウカはウチの子と買い物に行ってるんだよ」
そう言って、スマホを見せた。
すると、2人が『マジかこいつ』とでも言いたげな顔で俺を見てくる。
「か、可愛らしい子ですわね」
「う、うん……」
何がマズかったんだろうか?
「そ、そういえば、八神さんは?」
話を逸らそう。
「さあ?」
「さすがに休日は知らないよね。怖いから知りたくもないけど」
否定できない……
「実際、あの人で大丈夫? 怖くない?」
「いえ、怖いのは怖いですけど、ちゃんと教えてくださいますし、良い方だと思いますわ。怖いですけど」
「まあ、そうだね。怖いけど、やっぱり長くやっているみたいだから効率的だし、丁寧だよ。怖いけどね」
やっぱり仕事は真面目にやる人なんだな。
怖いのは仕方がないとしてもそういう意味では良いチームなのかもしれない。
「一応、桐ヶ谷さんに気にかけてあげてって言われてるから困ったことがあったら言いなよ? キョウカでもユウセイ君でもいいからさ」
「「桐ヶ谷さん……」」
2人が微妙な顔をした。
「やっぱり微妙な感じ?」
この2人もか……
「あ、いや、そういうわけではないです」
「ただ、親にあれにだけは気を付けろって言われてるんだよね」
どうも桐ヶ谷家と他の家は仲が悪いんだよなー。
桐ヶ谷さんは良い人なのに……
まあ、目は一切、笑ってないけど。
「普通に仕事をしていれば関わることはないと思うよ。実際、キョウカとユウセイ君もほとんど絡んでない。基本的には俺が窓口になってるし、そっちも八神さんがやってくれるでしょ」
「それもそうですね。リーダー八神様ですから」
まあ、あの人がリーダーだわな。
「あ、そうだ。山田さん、ちょっと教えてほしいことがあるんだけど……」
ん?
「何?」
「加賀美さんってどんな人? 絶対に近づくなって協会に言われてんだけど、誰って感じ」
「あ、わたくしも気になりますね」
「キョウカに聞いた方が良いよ……でも、絶対に近づいたらダメ」
話すだけでセクハラだし……
しかも、超厄介な使い魔までいる。
「は、はぁ……?」
「皆、そう言う……」
そりゃ言うよ。
「いや、本当にそういうことなんだよ。じゃあ、俺達はそろそろ行くよ。ここは払っておくから」
モニカはすでに食べ終わっていたので立ち上がった。
「え? あ、ありがとうございます」
「ど、どうも。大人だ……」
俺は2人の分の伝票を取ると、モニカと共にレジに向かう。
「……これからどこに……」
「……大人……ホテル……」
「きゃー」
若いって楽しそうだな。
悪いけど、行くのは本屋だよ。
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