痛み
ロイはぞっとした。
さきほどのケイの状態からして、魂がロボに乗り移ってる時に破壊されたのだろう。
想像を絶する痛みに襲われたに違いない。
血だらけの女も同じ人物にやられたのだろうか。
「ケイ、体は大丈夫なのか」
女を抱き上げるほどの余裕があるとは思えなかったが。
「あぁ」
ケイは女を抱き上げ、歩き出した。
「ロイ君、荷物を持ってきてくれない?」
「わかった」
ロイは女のものであろう荷物と、壊れた環境維持ロボを持ち上げ、ケイの後に続くのだった。
* * *
リゾはファウの声を聞いていた。
『キョウの家のそばで、アンドロイドの残骸でガイルが怪我をした。最高位って神の化身で、民を護ってるんじゃなかったの?』
リゾは、そんなはずはないと思った。
キョウの家周辺は特に隈なく調べている。
そんなものはないはずだった。
自分がいない間にアンドロイドが入り込んだ可能性は……?
と、考えている時、ファウのこんな声も聞こえて来た。
『今の忘れて。今のなし』
どういうことだろう? リゾは思案する。
ファウの勘違いだった?
ガイルが怪我をしたというのは事実で、その原因がアンドロイド以外のものだった……?
いろんな可能性を考えたが、よくわからなかった。
どういうことか詳しく聞かせて欲しい、とリゾから呼びかけてみようと思ったがやめた。
ファウとキョウが二人でたこ焼き作るとか楽しそうに計画してたのを、リゾは知っている。
だから、今は詮索しないで欲しいという意味で、ファウは自身の発言を取り消したのかも知れない。
リゾも、わざわざ無粋な真似はしないでおこうと思った。
なので、リゾは環境維持ロボを操りキョウの家周辺を隈なく調べ始めた。
いつの間にか、自動操縦のロボがリゾのそばで同じような作業をしていた。
元はレンが使っていたロボで、最近ではキョウが操るようになっていたロボだ。