商談
* * *
「……きみはひいひい言って僕の話を聞く余裕もないだろうね」
ケイは、クスナにそんなことを言った。
おそらく慌てふためるか、さっと否定するかだと思った。
だが、クスナはそんなことは意に解さず、シームァと共通の話題で盛り上がってる。
思い出話で盛り上がるクスナは少し幼くも見えた。
おそらく、素に近い姿なんだろう。
そんな姿が新鮮だと思った。
その時、パース・ソナリアが歩いて来るのが見えた。
行商であり、四番隊隊長でもある男だ。
「おーい、コーヒー売りー!」
「いたいた。あんただろ、旅のコーヒー売りって」
パースは、シームァに声を掛けた。
パースは本人は隠しているが、左手左足が機械だ。
面倒なことにならなければいいが、ケイはそんなことを思った。
「えぇ」
「俺はパース。行商だ」
パースは自分に親指を立て、にやりとする。
「俺にコーヒーを売らないか。損はさせないから」
「えぇ、でも?」
シームァにとっては初対面の相手だ。
そこで、クスナが助け船を出す。
「彼の信頼できる人間だ。悪い話じゃないと思うが?」
「そう?」
「それ、俺の畑のコーヒーだろ。――品質は保証するよ」
後半は、パースに言ったようだ。
「なあ、導師様、『俺』になってるよ」
「あ……」
パースの指摘に、クスナは口を手で押さえる。
同郷のシームァに会って、素が出てしまったようだ。
そこで、ケイは、今のクスナがいつもの『ですます』口調じゃないのに気づいた。
いや、そんなことよりも、パース・ソナリアがクスナの素を知っている……?
そういえば、幾度となくパースの家を秘密裡に訪れるクスナの姿を見ていた。
パースとクスナの関係が気になるケイだった。
「ハチさんがそういうなら」
「だから、クだって。いや、クスナだって」
「じゃあ、決まりだな」
と、パースがパチンと指を鳴らす。
「お金の話になるから、二人で話そう。大丈夫、変な事しないから」




