休み
女性の手?
シーナとそういう事をしたことはある。
だが、夢の相手はシーナではなかった。
……その相手は長老だった。
夢の中の自分はそれに応じていた。
後で思い返すと、まるで本当にしたかのような感触で到底、夢とは思えない。
思い切って、長老の甥であるガイル・ラテーシアに相談に行ったのだが、笑って返された。
ガイルが言うには、その日は長老と会ってるはずがないと言う。
とても嘘をついてるようには思えなかった。
やっぱり夢だったんだろう。
そう結論づけた。
それだけ故郷やカノジョが恋しくなったんだろうか。
シーナに会いたい。
会って抱きしめたい。
そんな思いが募るのだった。
*
クスナは中央の広場へ行ってみた。
昨日、シームァの連れのバイオリン弾きがそこで演奏を披露してたのだという。
そこに行けば、シームァに会えると思ったのだが。
今日は休みということになった。
最近のクスナの様子がおかしいということで、是非休むように言われた。
レファイ家の人々に気を遣わせてしまったのが申し訳なくもあったが、お言葉に甘えることにした。
中央の広場にはいなかったが、バイオリンの音は聞こえる。
クスナはそちらへと向かった。
シームァに会って、故郷の話が話したかった。
それに、彼女に確認したいこともあった。
バイオンの音が聞こえるのは、畑の方。
少し前に砂に埋もれたあの畑の辺りだ。
そっちへ歩くと、歩いてくるシームァにばったり会った。
シームァは片手に荷物。その反対の手でバイオリンを持ったお面の男と手を繋いでいた。
「あ、ハチさん」
シームァが声を掛けて来た。
「だからクだって。クスナ・ク・ガイル。」
親友からは、あまり他人の興味のない妹と聞いていた。
名前を覚えるのが苦手なのかもしれない。
「あ、そうだった」
言いながらシームァは、クスナの目が、クラルと繋いでる手を見ているのに気づいた。