裂けたあと
* * *
次の日、ケイことクラルはルウの地の外れの方ででバイオリンを弾いていた。
人はほとんどいない。
畑で作業してる人が珍しそうに見ることもあった。
その隣でシームァが売り物のコーヒーを並べていた。一つ売れた。
三曲弾き終わると、クラルはこんなことを聞いた。
「怪しい人物はいない?」
シームァは辺りを見回し、首を振る。
のどかな畑風景で怪しい人はいない。
ピエロのお面のクラルこそがむしろ怪しいが、それは言わなかった。
「ここに結界があるんだけど、この結界を裂いた輩がいるらしいんだよ」
クラルは目を凝らすように、そこの空間を見ていた。
「確かに結界が裂けたあとがあるな」
クラルのつぶやきはシームァには理解不能だった。
「これを一人で修復してたのか」
言いながら、クラルは何か納得したようだった。やや興奮気味にも感じられた。
シームァには、クラルの言ってることがよくわからなかった。
シームァも、クラルがしているように目を凝らして見た。
クラルは遠くを見ているわけではない。その場にある何かを見ているようだが?
ふと、右目を手で覆い、左目で見てみた。
黒い世界。ふと白く光るオーロラのようなものが見えた。
「あれ?」
右目でも見てみるが、そんなものは存在しない。
これがクラルの言う結界だろうか?
「きみには結界が見えないんだっけ? でも遠くを見通せるその目は不思議だよ」
「え? えぇ」
シームァは動揺していた。
見えないはずのの左目は黒いはずのクラルの瞳が赤く見えたり、現実と違うものが見えている……?
何が起こっているのか、シームァ本人のもわかっていなかった。
シームァは落ち着きを取り戻すべく、じっとルウの地の外の方を見てみた。
「……温度が違う」
この地と、外では気温が違うようだ。
シームァは少し安心していた。温度なら錯覚ということはないはずだから。




