危惧
* * *
ケイの腕の中で、シームァは眠りに落ちていた。
邪眼にかけたのもあるが、そもそも疲れているせいもあったのだろう。
いや、シームァは邪眼にかかったのだろうか?
ケイにはよくわからなかい。
ただ、さきほど、わずかながらシームァの左目の瞳孔が動いていた。
左目が回復してくれることを願うばかりだ。
ケイはベッドにシームァを横たえる。
シームァの左肩に頭を乗せてみる。
目を閉じ、気配を探る。
そこにいるはずの彼女の中に巣くうモノ、気配は感じない。
今はおとなしくしているようだ。
さっき、キョウの家で子どもたちの声が聞こえなかった時は、ぞっとした。
シームァの体内にいるモノが子どもたちを何かしたのではないかと思ったのだ。結局、杞憂だったが。
もし、そういう事態になっていたら、このシームァを始末しなければならない。
最高位として、この地を守るため、ルウの民を傷つけるやつは容赦しない。
そうはならなかったことに安堵していたケイだった。
頭を上げると、今度は眠っているシームァの左肩をなでるように手をおいた。
彼女の中に巣くうモノ、眠ってるのだろうか? そのまま眠ってくれていればいい。
ケイはシームァから離れ、椅子に座る。
しばらく、ぼーっとしてた。
すっかり夜も更けていた。
* * *
カースは環境維持ロボを操り、ラテーシア邸のそばを周回していた。
その理由は?
愛しのミン・ラテーシアが何をしているのか気になったから……ではなく。
ミンに何か危機感のようなものを抱いていた。
長老代理として謁見に訪れるようになったミン・ラテーシア。
その役割に重さを感じてるのか、彼女本来の責任感なのか、かなり思い詰めてるように見える。
長老を暗殺……なんてことにならなければいいのだが。
その時だった。
――カース君? 聞こえる?
そんな声が脳裏に聞こえた。ケイだった。
(あぁ、聞こえるよ)
カースは動きを止めた。




