嫉妬
戻ろうとしたガイルは、少し離れた位置で姉のミンがこちらを見ているのに気づいた。
ミンは鬼のような形相でシームァを睨みつけていた。
ミンはガイルが見ているのに気づき、そっぽを向いた。
そのまま、立ち去る。
クスナが気づかなったから、これは幸いだとガイルは思っていた。
忘れてしまっているが、クスナはミンと一線を越えた関係になっている。
大事な人といる時にそのことを思い出さないことを願うばかりだ。
ほっとしたガイルだったが、では、なぜミンはシームァを睨んでいたのか。
ミンはガイルよりはっきりと例の写真を見ていたはずだ。
思い出すのに時間がかかったガイルと違い、ミンはすぐシームァが写真の女だとわかったのだろう。
――嫉妬?
そんな言葉が脳裏に浮かぶ。
まさか、ミンはクスナに本気で惚れてしまったのか。
だとしたら非常にまずい。
ガイルはそうじゃないことを願っていた。
*
「シームァ君」
と、シームァを呼んだのは、ピエロのお面をつけた男だった。
「こんなとこにいた。あまり僕から離れないでほしいな」
「ごめんなさい」
謝るシームァの手を男はつかんだ。
「僕の演奏は退屈だった?」
シームァの手をつかむ反対の手にはバイオリンケース。
「そういうんじゃないの。知り合いがいたから」
「ふうん?」
ピエロのお面の男は、ちらっとクスナを見た。
「そんなことより、二人で散歩しようよ」
男が引っ張るようにして、シームァの手を引いて行ってしまった。
ガイルはやはり、ん?と思った。
シームァという女性は、密かにクスナが持っていた写真の女性に見えた。
クスナが大事な人と言ってたのは、シームァでないのか。
だが、そのシームァは別の男と手をつないで行ってしまった。
そういえば、さっき、シームァは妹と言ってたな。
妹にしては……? とも思う。
大事な人の姉妹構成ぐらいは普通は知ってるだろう。
どういうことか、なんとなく疑問に思ったガイルだった。




