心配
「ところで、ガイルさんのお名前って何だったかしら?」
シームァがそんなことを言ったので、ガイルは、ん!?と思った。
深い知り合いなら名前を知らないということはないはずだ。
「ガイルさんの名前って長くて覚えられなくて。ナナさんだったかしら? ハチさんだったかしら?」
「クだよ」
「……ぶほっ!」
淡々と答えるクスナの言葉に、思わず噴き出したガイルだった。
クスナのフルネームはクスナ・ク・ガイル。
シームァは、クスナのことをミドルネームで呼んでいた……?
だがそんな二人の関係性よりも、クスナの淡々とした言い方がガイルの笑いのツボにはまったのだった。
「ひ、ひ……ひぇ」
自分でも自覚のあるおかしな笑い声を漏らしていた。
「思ってたんですけど、その笑い方、前からですか?」
クスナがガイルに尋ねた。
「お前が言うな! ……ふふぇえ…へへ」
言いながらも、ガイルはまだ笑っていた。
誰のせいでこうなったと思ってるんだ、とガイルは恨みがましい気持ちがあった。
「愉快な人」
シームァが静かにつぶやく。
「ところで、私に何か御用でしょうか?」
ようやく、笑いのおさまったガイルにクスナが尋ねた。
「いや、大したことじゃない。体調は大丈夫かなって思って様子を見に来た。もう行く」
「お心遣いありがとうございます」
クスナは一礼した。
以前、相談したこともあり心配してくれたのだろう。
「なんか、ハチさん、変わった?」
とシームァが不思議そうに言った。
「だから、クだって」
と、クスナが言うと、ガイルはまた噴き出しそうになった。
「…う、くふぇ」
「じゃあ」
ガイルは戻る事にした。
「えぇ」
クスナは頷く。
アンドロイドの部品が落ちてたとかで警備を強化するとか、二番隊隊長であるファウが言ってたのだ。
それなら、一番隊隊長であるガイルがこんなとこで油を売ってるわけはないのだ。
いそがしい時間を縫って、わざわざ様子を見に来てくれたのだろう。




