イメチェン
*
ガイル・ラテーシアは、泉の祈祷をするクスナ・ク・ガイルを見ていた。
護衛についている兵士に一礼し、祈祷を終えるのを待っていた。
同じ名前のせいだろうか。
それとも、男と一線を越えたと思い込んでいたクスナと、男であるキョウを女だと勘違いし好きな気持ちがあるガイルと、妙な共通点のせいだろうか。
ガイルは、クスナに親近感を抱き始めていた。
その時、女が近づいてくるのに気づいた。
見覚えのない女だ。見張りの兵士から二人の旅人が来たと報告を受けていたから、その女だろう。
はじめて見るはずの女だが、どこかで会ったことがあるような気がした。
「……ガイルさん?」
ガイルは自分が呼ばれたのかと思った。
だが、女の視線はクスナを見ていた。
祈祷していたクスナは振り返る。
クスナは女の顔を見て、息を飲んだ。
「……っ!?」
クスナは相当驚いている。
「やっぱり、ガイルさん? ずいぶんイメチェンしたのね。驚いたわ」
女がそう話す。
驚いたクスナは言葉が出ないようだ。
「あの、妹の……」
と女が言うと、そこでクスナは返事した。
「あ、あぁ。シームァか?」
「えぇ、お久しぶりです」
護衛の兵士は女に警戒していたが、知り合いだと分かると口を出すことはなかった。
「なんで、ここに?」
「コーヒーを売りに来たの。途中で大道芸人の人に会って、一緒にルウの地へ行こうって」
「大道芸人?」
「今、あっちの広場でバイオリン弾いてる」
確かに何か音楽が聞こえてくる。
ガイルは、クスナとシームァのそんなやり取りを見ていた。
そうして、ガイルは思い出した。
この女はクスナが持ってる写真の女だ。
その事に気づくと、ガイルはとても緊張した。
クスナは、以前、大事な人の治療費のためにこの地に出稼ぎに来たと言っていた。
その事実は、雇い主であるレファイ家にも明かしていない秘密なのだそうだ。
その大事な人は、このシームァという女なのだろう。
だったら、とにかく姉のミンとは会わせないようにしないと。と、ガイルは思っていた。




