第1話 視線が集中する原因は現在鋭意調査中
名前の順番、すなわち50音順で整列し、入場。
男女は分けられておらず、私の前は男子、後ろは女子だった。
「ねぇ、私は谷春香。あなたは何て名前?」
そう声をかけてきたのは、私の後ろの女の子だった。ポニーテールを茶色のゴムでくくっている。少し褐色がかった肌の色をしている。見た感じ、体育会系なのかな。
「私は宗谷房子。はるかちゃんね、どこの小学校から来たの?私は鈴鹿小学校なの」
「えっとね…すおう、ってわかる?山口県なんだけど…中学からこっちに引っ越してきたんだ。鈴鹿ってことは地元だよね。よかったら明日でも、三日市を案内してくれない?」
仲良くなれそうだ。
「いいよ!実はおしゃれなカフェがあってね、」
と言っていると、入場の時間になったようだ。廊下を歩いていると、前後でひそひそ、話し声が聞こえる。心なしか、見られているような気もする。また陰口だろうか。
渡り廊下から、体育館に入る。紅白の幕がものすごく目に去ってくる。先輩たちと保護者さんたちが拍手をしている。
気を引き締めなおし、言われた線の上の歩む。背筋を伸ばし、堂々と。顔は関係ないし。
校長の話、教頭の話。教育委員長の話に議員の話。長く聞いていると眠くなってくる。しかし、その都度立っては礼をし、座るの繰り返しで、眠っている暇はない。
先輩方が校歌を斉唱し、退場となった。なぜか式の間中、こっちをちらちら向く顔、顔、顔。気にしすぎなのだろうか?それとも、寝ぐせでも立っていたのだろうか。手で触れてみても、そのような様子はないし…。
教室に戻り、担任の話。
「私も今年からこの学校に入った新人です。新人同士、頑張りましょう」
話が終わったら、式典の日はがっこうがおわりである。小学生時代は友達ができなかったので、いつも一人で帰っていた。しかし、今日話しかけてきてくれた谷さんは、偶然家が近かったのだ。ということで、入学式が終わったら一緒に帰った。
「へぇー、春香ちゃんは引っ越しばっかりだったんだね。4回もなんだー」
彼女の両親はかなり異動の多い職場だったらしく、いわゆる引っ越し族であった。ただ、12年も経って、役職が付くと異動は減って、これからはここでずっといるのではないか、とのこと。せっかくできた友達だから、すぐにいなくなることはなさそうだ。よかった。
「そういえばさー」
彼女が思い出したように言いだした。
「あ、その前に、房子ちゃんってなんか呼びにくいから、ふーちゃんって呼んでいい?」
私はあの不名誉なあだ名以外ならば、何でもよかったし、むしろ変えてくれることを切望していた。
だから、二つ返事で了承した。
「それでふーちゃんってさー」
言いかけたその時、トラックが大きな音を立てて通過した。
口が動いているのは分かったが、何を言っているのかわからなかった。
トラックが通過した後、
「何を言っていたの?」
と聞くと、彼女は少し考えこんで
「うーん、何でもない」
と照れたように答えた。トラックに邪魔されたことで恥ずかしくなったのだろうか。
私はそれ以上聞かなかった。彼女もそれ以上は言わなかった。
私の家より彼女の家のほうが少し学校に近かった。またね、うんまた明日とあいさつをして、彼女が家に入っていくのを見送った。
そして、私は私の家へ歩みを進めた。




