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プロローグ 現状に至る過去の経緯

小学校の入学式、私のあだ名がつけられた。

「ブサイクちゃん」という、とても不名誉なあだ名だ。

もう誰がつけたのかも忘れられているのではないか。


幼稚園児までは、自分の顔をそこまで気にしていなかった。親も、近所のお年寄りも、友達も

「房子ちゃんかわいいね」

と言ってくれていた。だが、それは行動について言っていたのだろうか。


幼稚園を卒園すると同時に、父の仕事の都合で転勤することになった。知らない土地、知らない人、知らない家、知らないことばかりだった。


だから、頑張って友達を作ろうと思っていた。入学式の日、自分の前後左右にいる子たちに声をかけていった。そして式の途中、少し花の香りがしたと思ったら、鼻がむずむずしてきた。くしゃみが出そうな状況である。


さっさと出したいと焦っても、なかなかそいつは追い出せなかった。ようやく「ハクチュン」と出たのは、たぶん30~40秒くらい後だったのではないか。


くしゃみの瞬間というのは、声を出したときにみんな気が付くものだが、その前のための段階――は…は…と言っているようなときのことだ――に、すでにみんな「何の音か」と探し出して、私のほうに注目していたのだ。式は騒然となり、一時中断するような大事件になった。


そして、くしゃみをしたその直後、誰かは忘れてしまった――確か私より前のほうの席にいた男の子だったと思う――が叫んだ。

「ぶっさいくだ!」

私の呼び方の誕生の瞬間である。


翌日から、声を掛けられ続けた。

「おはよう、ブサイクちゃん」

「げんき?ブサイクちゃん」

ある種いじめである。が、本人たちは気が付かないし、呼び名以外はものすごく親切だったので、先生も動かなかった。「その呼び方はやめてあげなさい」と言ってくれた先生のほうが多かったが、ひと月たっても変わらなかった。先生はあきらめてしまって、「ごめんね房子ちゃん、私の力不足で」と私に謝ってくれた。だが、現状が変わるわけじゃない、卒業までそのあだ名は変わらなかった。


ほかの子に廊下ですれ違うと、ヒソヒソ、ヒソヒソ。委員会で前に立つと、ヒソヒソ、ヒソヒソ。

私の顔があまりにもブサイクだから、陰口をたたいているんだ、そう思った。だんだん悲しくなった。


ちょっかいをかけてきた子もいた。私の作っていた工作を持って行って、壊してしまったのだ。打ちひしがれて泣き出すと、慰めてくれたのではあるが、壊れたものは戻らない。その子はそののち先生に呼ばれて職員室に行った。そこで何を言ったのか、聞いたのかは知らないが、本当に申し訳なさそうに謝った。


同級生に話しかけようとしても、そそくさと離れて行ってしまって、お話しできなかった。親にも相談できなかったし、先生に言っても無意味だったから、私はその嫌な思いを抱え込んだ。


あの病院の先生がいなければ、私がいま中学校の前に立っていることはなかっただろう。引きこもったまま部屋からも出ていなかっただろう。


今度の入学式は、目立たないように静かにしていよう、そう胸に誓って、初めて足を踏み入れる、体育館に向かったのだった。

お昼ご飯の途中でビビッとひらめきました。

おもしろそうなんで書いていきます。

そのうち別視点からも書こうかな。

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