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夏色デイズ  作者: digital boy
3/3

転機、まさかの事実。そして今、始まる

ライブ中の中で、ケイが私と言うところがあります。分かりにくいことだと思うのですが、前後の文脈で判断してください。




放課後、あたしは屋上にいた。

昼休みに、「放課後、屋上で」とだけ、彼は言い残し、去って行った。

恐らく昨日のバンドのことだろう。実は、あれはかなり緊張していたのだ。勿論、自分の歌に自信がなかったわけじゃない。でも、それ以上に、彼らの技術は神がかっていた。

本家顔負けの演奏だったのでは?と、昨日のスタジオで思った。

彼らと組めれば、行けるかもしれない、あの頂きへ…。ガルオワと同じ舞台まで。

そんなことを期待して、あたしは屋上で待っていた。

10分後、来ない。20分後、まだ来ない。

30分後、ひょっとしてこれが不合格の通知なの?そんなことを考えていると、重たらしい音を立てて、屋上のドアが開いた。


屋上に入ってきたのは、一風変わったスーツ姿の、3人の少女だった。

「え、なんで?どうしてガルオワの3人がここに?」


私は驚きのあまり、腰が抜けて、ヘナヘナと座り込んでしまった。

「俺達だよ、夏風さん」

とギターのKEYが手を振ってくる


「誰?」


「え?」


「いや、あたしの友達にガルオワみたいな可愛い女の子達いないんだけど?」

「いや、僕達男っすよ?」

「私を間違えるなんて、ひどいっ」

SEYとHANAもそれぞれ返事をする。


「え?貴方達男の子?」


「「「うん」」」


「・・・・ガルオワの真似?」


「「「いいえ、本家です」」」


「四葉君達?」


「「「はい」」」


「エーーーーーーッ!!!」


嘘だとしか、思えなかった。でも実際、姿も声も背格好も一致する。

まさか、本家顔負けの演奏をする人達だと思ってた人達が、本家だったなんて…。


「今日は話があってこの格好なんだ。」

四葉君が話しを切り出してきた。


「実は君に、ガルオワへ入って欲しいんだ。前話したあいつって、実はKAYOの事なんだ。」


突然色々起きて、脳がオーバーヒートしてる。でも、夢だったことだ、ガルオワは。

ガルオワに追いつくことが目標だったのに、ガルオワからお誘いがきた。まぁ実際入りたかったし、でも、自分で大丈夫なのか。そんな不安が胸を抉る。

「あの、あたしでいいのかな?」

俯いて、スカートの裾をギュッと絞る。肩は震え、今にも涙が落ちそう…


「何を言うかと思ったら、当たり前じゃん。むしろこっちから頼んでるんだよ。バンドに1番大切なのは、技術の高さじゃない、一体感なんだ。そして、それは前のスタジオ練でしっかり分かった。そして、俺は君に勇気をもらった。これ以上いい人材はいないと思う。」

四葉君は照れくさいのか、目線をそらす。


「はい………こちらから、も…よろしく…お願い、しまずっ!」

私の頬に喜びのあまりか、涙がポロポロと滴る。

四葉君達が、ハンカチを渡してくれる。


そして、私はGIRLS OF WARのニューボーカルになった。




「カンパーーーイッ!!!」

ここはこの前行ったファミレス。テーブルには今にも落ちそうなくらい、お菓子やら、料理が散らばっている。

四葉君は、前からメンバーが揃ったらここにくるつもりだったらしい。

とりあえず、色々食べたり、はしゃいだりして少し経ったぐらいで、

「ねえ、何でまた、バンド活動再開しようとしたの?」

するとヒデが、話しだした。


「もともと、活動休止か活動停止かでも、だいぶ揉めたんだ。そのきっかけになったのは、もちろんKAYOの事だよ。

その後、KEYは活動停止、私達は活動休止で対立して、多数決で活動休止にしたんだ。

その後、私とシュウちゃんがボーカルを探し回ってたところ、ケイがあなたを連れてきたってわけ。」

活動休止か活動停止で悩んだのは知らなかったけど、後は想像しやすかった。


その後、シュウ君が話し始めた。

「ケイ君が連れてきたって事で、早速スタジオでやってみたんすけど、これがもうピッタリで!3人で顔を見合わせたのを覚えてるっす。

その日の夜、ケイ君から電話がきて。

『今まで迷惑かけてごめん。ガルオワを再開したいんだ。』って言われたことは、一言一句忘れてないっす。その後は今の通りっす〜」


四葉君は耳まで真っ赤にして、外を見ている。ちょっと可愛い。


「ねえ!3人の名前の由来は?何で、女装を?」

と私は、ワクワクしながら聞いた。これには四葉君が答えてくれた。


「俺のケイは、佳広の佳をよしではなく、ケイとよんで、ヒデは英人の英が、ハナってよんで、シュウはそのまま清秋の清をセイってよんでんだ。カヨは本名そのままな。

元々俺達4人は幼馴染で、普通の格好でライブしてるたんだけど、誰にも見られなかったんだ。そしたら、カヨがインパクトが大事って、当時カヨが持ってたコスプレ衣装でライブしてたら、メジャーデビューしちゃったんだ。」


うん。女装の件は聞かない方が、カヨさんの印象が変わらなかったな…。

「じゃあ、私の名前どうしよう?」


これも四葉君が、

「夏風だからFUKAか、夏でNATSUか、翠でSUIだな!」

「みんな下の名前だからスイよね?」

「僕もスイがイイっすね」


まさかの、シュウ君とヒデ君に決められてしまった。ま、あたしも抵抗ないしいっか。

それから2時間程楽しく騒いで、おひらきになった。



あたしがガルオワに入って1ヶ月。事務所にも、慣れて、バンド内のメンバーも全員親しく、下の名前で呼び合うようになったころ。

ケイ君から、まさかの提案が。

いや、いつかは来ると覚悟していたことかな?

「復活ライブをする!告知は公式サイト、ツイッター、動画サイトで。場所は○○公園の野外ステージ、入場料無料!!!

さらに、そこに向けて新曲も作った!!

お前ら、やるぞ!!!」


すごいやる気だ。こんなやる気なケイ君初めてだ。あたしが初めてのケイ君の熱意に付いて行けず、狼狽えていると、

「ケイは、実は誰よりもバンドに熱心なのよ。作詞作曲も彼だしね。」

「っす!」

と、ヒデ君とシュウ君から言われた。すごく意外で、まさかの出来事だった。

このバンドに誘われてから、驚いてばっかだ。


これからのスケジュールを、バンッとケイ君がホワイトボードに磁石で止める。

「ライブは1ヶ月後、今日は、告知動画を撮る。今週はセットリストを考えて、来週はセトリの曲を練習するため、合宿だ!

再来週は、当日の会場の下見や、下準備だ!」

彼はやる気のようで、腕を組んでウンウンと頷いている。結構ハードなんですけど…。


そんな彼の熱意に叩かれまくれ、3人でヒイヒイ言いながら、とうとうライブ当日になった。まさかケイ君がここまでスパルタとは…


「とうとう今日がきたぞ!俺達はやれるだけやった!どんなに人がいなくても、これがスタートだっ!やるぞ!!」

4人の右手が重なる。ケイ君が思いっきり息を吸い込んで叫ぶ、


「絶対成功させるぞーーー!!!」

「「「「おうっ!!!!」」」」


そしてが入場、各楽器のセッティングが終わる。

あたしは最初、ステージ横でスタンバイだ。ちょっとだけ顔を出し、観客席を見た。

そこには、眼を見張る程人が溢れ、ステージ外にも人が鎮座して、溢れかえっていた。

こ、こんな中であたし歌えるのかな?

そんな不安を抱えているのは、私だけでは無かった。

ステージ横から見ると、3人みんな、足が震えていた。

楽器の調整を、終え、ケイ君が声を発した。

「みんな、今日はガルオワの復活ライブに来てくれて、ありがとう。まず、今までの活動休止について話さなきゃ、いいライブになんないから、包み隠さず、本当のことを言おうと思う。・・・・・・」

そして、ケイ君はKAYOさんの死をみんなに告げた。みんなの表情は、暗くなった。中には泣き出す人もいた。

このままじゃ、ライブなんて出来ないんじゃないのか?バンドメンバーの誰もがそう思った。けどケイ君は語り続けた。

「私達も最初は今のみんなと同じだった。でも、それじゃダメだ。それじゃいけないんだ。だって、KAYOは、そんなこと望んでないから…。

彼女はバンドを組んだ時からいつだって、世界に行くと言う夢を忘れなかった!

私達もそんなKAYOに付いてきた!だからまた歩き出したんだっ!!!

彼女の残した夢を叶えるために…お前らを、世界へ連れて行くために!!!!!」


会場が盛り上がる。歓声が上がる。さっきまでの暗い表情はどこえやら、今はみんな輝く目でケイ君を見ていた。

「これがガルオワのリーダーか」

そんな言葉が、独り言になった。

またケイ君が叫ぶ。


「そして!ガルオワは進化する!ガルオワは進化して引き継がれていくバンドだ!

そんなバンドのニューボーカルを紹介する!こいっ!!SUIーーー!!!!」

私は小走りでステージまで行く。マイクの位置にきて、一礼する。


足が震える。体が石のように重く感じた。震える息の音が大きくなる。

不意に私の肩に手がかけられた。3人の手だ。とても暖かい。さっきまでの緊張が、嘘のように消し飛んだ。

「皆さん!はじめまして、ニューボーカルのSUIです!あたしも、このバンドが世界に翔けれるように、精一杯頑張ります!!」

みんなからしたら、普通の挨拶だったかもしれない。

でも、あたしには特別な挨拶だった。決意表明でもあったのだ。

みんなの反応は、、、。


拍手喝采の歓声が聞こえた。あぁ、あたしはなんて幸せなんだろう。幸せを噛みしめる。

目尻が熱くなる。

けど、まだライブは始まってないんだ!!!


あたしは叫んだ!

「新しくなったあたし達の最初の曲!聴いてくださいっ!!!“To KAYO”」


ドラムが鳴り響く。それに続くようにギターの音が重なる。Aメロに入る前でベースソロが入る。3つしかない音なのに、こんなにも心に響く重厚感…。

このメロディに乗せて私の声が重なればどうなるんだろう…。

緊張なんか放り出して、この胸の中にある高揚を、思うがままに歌い出したい!!


3つの音にさらに1つの声が重なる。それは凄く重たくて、芯の通ったハリのある旋律で。聴く人の耳に、音の爆弾を投下した。

それは次々爆発していき、爆発で暖められた聴く人の体は、氷を溶かしたように動きだす。

さらに爆弾が増えた。サビに入ってKEYがコーラスに入ってきたのだ。

聴く人の耳はさらに爆撃される。勢いが増したと同時に聴く人達の動きも激しくなる。

瞑った瞼を開いてみると、そこには音の爆弾の勢いと一緒に、激しく踊りだす観客がいた。

私は、本物のガルオワ、GIRLS OF WARのボーカルになった。








〜3年後〜

「おーい!忘れ物してないよな〜?」

あたし達は空港で待ち合わせていた。

KEYの質問に、みんなが答える。

「私はないよ〜♡」

「僕もないっす〜」

ルンルンのHANAとSEY、


『ケータイの充電器忘れたーーー!!』

1人あたふたしているのは、私、SUIだ。

「コンビニで買ってくるーー!!」

私は空港内のコンビニに走りだした。

「あの馬鹿、コンセント類は向こうで買えって言ったろ…」

「本当、面白い方っすね。バンド復帰してよかったす!」

「本当ね」

後ろで3人が、あたしのことを暖かい目で見ているとも知らずに…



あの活動再開ライブから、あたし達のガルオワは動き始めた。あたしの評価は、と言うと、、、。


2代目ボーカルって事で、叩かれることもなく、寧ろ想像以上に優しかった。

それから、全国ツアーを周り。武道館でもライブを成功におさめた。

そして今日、あたし達は海外単独ツアーに向けて、飛行機に乗る。


あたし達は世界に羽ばたく


〜end〜



これで第2作目完結です。次の3作目をお待ち下さい。

これは連載してますが、短編でやりたかったので、最後は展開をすすめすぎましたが、どうしても3話で終わりたかったので、ご理解お願いします?

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