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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第一章 最初のメインターゲット 大魔導士、ウィザー=アルヴァレン編

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第33黒 禁術・合成魔獣アポクリファ

 

 ――蒼光の最深部、ウィザーの秘密の研究室。



 魔法と剣が交錯(こうさく)する。


「――っ!!」


 リィナが踏み込み、激しい斬撃。


 だが――


 ガキィィン!!


 見えない壁。


多層防御結界マルチレイヤー・ガード


 ウィザーは一歩も動かず、

 その背後で魔法陣が回転する。


「無駄よ」


 指先が揺れ即座に反撃の魔法を放つ。


≪最上級氷結魔法!領域支配アブソリュート・リバレート


 絶対零度の巨大な氷柱が一直線で迫る。


 リィナは身体を捻るが、だが掠める。


 血が飛ぶ。


「チッ……!」


 着地と同時に――


≪最上級闇魔法!破滅の終焉エンド・カタストロフィ



「リィナ!」


 ヴェルミナも呪詛結界を展開。


影壁シャドウ・ウォール


 衝撃が拡散する。


「……はぁ」


 ウィザーが冷たい視線を向けながら、小さく息を吐く。


「やっぱり非効率ね。

 感情で動く戦闘は、無駄が多い」


「…そう」

 リィナの瞳が細くなり剣を握る手に力が入る。


「じゃあ見せてあげる」


 一歩、踏み込む。


「“理屈じゃない戦い方”を」


 その瞬間、空気が変わった。


「……?」


 ウィザーの眉がわずかに動く。


 リィナの魔力が――


 “異質”に変わる。


 黒でも、光でもない。


 不安定で歪んだ流れ。


 だが――


 異様な密度。


「それ……」


 ウィザーが初めて警戒を見せる。


「何の魔法?」


 リィナは答えず

 ただ、剣を構える。


「――借りるわよ、ルシオ」


 低く呟く。


「蒼光第九位階―」


魔術侵食スペル・イーター


 ウィザーの魔法陣が砕ける。


「なっ――!?」


 ウィザーの目が見開く。


「あなたが魔法をッ!?

 それにその術は蒼光協会の秘術の筈……」


 リィナは止まらず、次の一撃。


 2つ目の魔法陣に触れると

 今度は防御ごと削り取る。


「有り得ない……!」


 ウィザーが後退する。


 想定外を目の前にして、初めて“下がった”のだ。


「そんな、常識存在しない……!」


 リィナが踏み込む。


「あるのよ」


 低く言う。


「……あなたが知らないだけで」


 剣が振り下ろされる。


 ガキィィン!!


 結界が砕けウィザーの懐に入る。


「終わりよ!!!!」


「くっ……!」


 ウィザーが慌てて転移。


位相転移フェイズ・シフト


 だが――

 リィナは追う。


「逃がさない!」


 今度は回避が間に合わず、

 リィナの斬撃が肩を裂く。


「っ……!!」


 血が舞いウィザーの表情が歪む。


 その瞬間。


 空気が止まった。


 数秒の沈黙。


 そして――


 ウィザーが笑いながら 血を拭う。


「……なるほど、面白いわね」


 だがその笑みは――


 明らかに“普通じゃない”。


「やっぱりあなたは危険だわ、リィナ」


 視線が落ち、足元の魔法陣へ。


「だから――この術で排除する」


 ゆっくりと両手を広げると、魔法陣が変質していく。


 蒼光が――

 黒く濁っていっている。


 それを見て、ヴェルミナの顔色が変わる。


「ちょっと待って……それ」


 一歩下がる。


「その術式……まさか……」


 ウィザーが微笑む。


「そうよ」


 静かに告げる。


禁術錬成アポクリファ・ジェネシス


 空間が裂け魔法陣が“肉”のように(うごめ)く。


 骨のような構造に脈打つ魔力。


 それらが――


 無理やり“形”を作られていく。


「……っ」


 ヴェルミナが息を呑む。


「嘘でしょ……」


 現れたのは――


 継ぎ接ぎだらけの

 異形の獣。


 不完全なのに――


 圧倒的な魔力量。


「合成魔獣……」


 震える声。


「アポクリファ……!!」


 ズン……


 アポクリファが、ゆっくりと首をもたげる。


 その瞬間――


 空気が“軋んだ”。


「……っ」


 ヴェルミナの足が、わずかに沈む。


 ただ立っているだけなのに、圧が違う。


「何よこのバカみたいな魔力の塊は……?」


「ヴェルミナ、まずはあなたから始末してあげる」


「……!」


 ヴェルミナが構える。


 次の瞬間。


 アポクリファの胸部が裂けるように開いた。


 内部に――


 渦巻く黒い光。


「――来る!」


虚喰砲アビス・デヴァウア!!≫


 ドォォォォォンッ!!!!


 黒い奔流が放たれる。


 “砲撃”ではない。


 空間ごと削り取る侵食。


「ッ!!」


 ヴェルミナは即座に両手を叩きつける。


多重影障壁シャドウ・マルチウォール


 影の壁が三層展開。


 だが――


崩壊爪撃ルイン・クロウ


 ズガァァァァッ!!!


 一瞬で一枚目が消滅。


 二枚目も“溶ける”。


「嘘でしょ……!?」


 三枚目に直撃。


 バキィィィン!!


 完全に破壊。


 衝撃がそのまま直撃する。


「ぐっ――!!」


 ヴェルミナが吹き飛び

 壁をぶち抜き、瓦礫の中へ叩き込まれる。


 ドゴォォン!!


 粉塵が舞い上がる。


「はぁ……はぁ……」


 ヴェルミナが血を吐きながら立ち上がる。


「防御ごと消すとか……冗談じゃないわね……」


 更にアポクリファの腕が変形し刃のように伸びる。


断罪連撃ジャッジメント・ラッシュ


「速っ――!?」


 ガキィィン!!


 防御が弾かれ、影ごと吹き飛ぶ。


「ぐっ……!!」


 再び壁に叩きつけられる。


「ヴェルミナ!」


 リィナが叫ぶ。


 だが――


 その前に、ウィザーが立つ。


「よそ見してる場合?」


 冷たい声で、再び魔法陣が展開される。


 リィナが舌打ちする。


「……チッ」


 分断された…。


 ヴェルミナが立ち上がり、口元から血を拭う。


 そして――


 アポクリファを見る。


「……あんた」


 低く呟く。


「そこまで堕ちたのね、ウィザー」


 遠くで、ウィザーが答える。


「進化と言ってほしいわね」


 ヴェルミナの目が細くなる。


「変わってないわね……本質は」


 杖を構え直し、影が広がる。


「いいわ」


 静かに言う。


「その歪んだ天才――」


「私が止めてあげる」


 アポクリファが咆哮する。


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