第33黒 禁術・合成魔獣アポクリファ
――蒼光の最深部、ウィザーの秘密の研究室。
魔法と剣が交錯する。
「――っ!!」
リィナが踏み込み、激しい斬撃。
だが――
ガキィィン!!
見えない壁。
≪多層防御結界≫
ウィザーは一歩も動かず、
その背後で魔法陣が回転する。
「無駄よ」
指先が揺れ即座に反撃の魔法を放つ。
≪最上級氷結魔法!領域支配≫
絶対零度の巨大な氷柱が一直線で迫る。
リィナは身体を捻るが、だが掠める。
血が飛ぶ。
「チッ……!」
着地と同時に――
≪最上級闇魔法!破滅の終焉≫
「リィナ!」
ヴェルミナも呪詛結界を展開。
≪影壁≫
衝撃が拡散する。
「……はぁ」
ウィザーが冷たい視線を向けながら、小さく息を吐く。
「やっぱり非効率ね。
感情で動く戦闘は、無駄が多い」
「…そう」
リィナの瞳が細くなり剣を握る手に力が入る。
「じゃあ見せてあげる」
一歩、踏み込む。
「“理屈じゃない戦い方”を」
その瞬間、空気が変わった。
「……?」
ウィザーの眉がわずかに動く。
リィナの魔力が――
“異質”に変わる。
黒でも、光でもない。
不安定で歪んだ流れ。
だが――
異様な密度。
「それ……」
ウィザーが初めて警戒を見せる。
「何の魔法?」
リィナは答えず
ただ、剣を構える。
「――借りるわよ、ルシオ」
低く呟く。
「蒼光第九位階―」
≪魔術侵食≫
ウィザーの魔法陣が砕ける。
「なっ――!?」
ウィザーの目が見開く。
「あなたが魔法をッ!?
それにその術は蒼光協会の秘術の筈……」
リィナは止まらず、次の一撃。
2つ目の魔法陣に触れると
今度は防御ごと削り取る。
「有り得ない……!」
ウィザーが後退する。
想定外を目の前にして、初めて“下がった”のだ。
「そんな、常識存在しない……!」
リィナが踏み込む。
「あるのよ」
低く言う。
「……あなたが知らないだけで」
剣が振り下ろされる。
ガキィィン!!
結界が砕けウィザーの懐に入る。
「終わりよ!!!!」
「くっ……!」
ウィザーが慌てて転移。
≪位相転移≫
だが――
リィナは追う。
「逃がさない!」
今度は回避が間に合わず、
リィナの斬撃が肩を裂く。
「っ……!!」
血が舞いウィザーの表情が歪む。
その瞬間。
空気が止まった。
数秒の沈黙。
そして――
ウィザーが笑いながら 血を拭う。
「……なるほど、面白いわね」
だがその笑みは――
明らかに“普通じゃない”。
「やっぱりあなたは危険だわ、リィナ」
視線が落ち、足元の魔法陣へ。
「だから――この術で排除する」
ゆっくりと両手を広げると、魔法陣が変質していく。
蒼光が――
黒く濁っていっている。
それを見て、ヴェルミナの顔色が変わる。
「ちょっと待って……それ」
一歩下がる。
「その術式……まさか……」
ウィザーが微笑む。
「そうよ」
静かに告げる。
≪禁術錬成≫
空間が裂け魔法陣が“肉”のように蠢く。
骨のような構造に脈打つ魔力。
それらが――
無理やり“形”を作られていく。
「……っ」
ヴェルミナが息を呑む。
「嘘でしょ……」
現れたのは――
継ぎ接ぎだらけの
異形の獣。
不完全なのに――
圧倒的な魔力量。
「合成魔獣……」
震える声。
「アポクリファ……!!」
ズン……
アポクリファが、ゆっくりと首をもたげる。
その瞬間――
空気が“軋んだ”。
「……っ」
ヴェルミナの足が、わずかに沈む。
ただ立っているだけなのに、圧が違う。
「何よこのバカみたいな魔力の塊は……?」
「ヴェルミナ、まずはあなたから始末してあげる」
「……!」
ヴェルミナが構える。
次の瞬間。
アポクリファの胸部が裂けるように開いた。
内部に――
渦巻く黒い光。
「――来る!」
≪虚喰砲!!≫
ドォォォォォンッ!!!!
黒い奔流が放たれる。
“砲撃”ではない。
空間ごと削り取る侵食。
「ッ!!」
ヴェルミナは即座に両手を叩きつける。
≪多重影障壁≫
影の壁が三層展開。
だが――
≪崩壊爪撃≫
ズガァァァァッ!!!
一瞬で一枚目が消滅。
二枚目も“溶ける”。
「嘘でしょ……!?」
三枚目に直撃。
バキィィィン!!
完全に破壊。
衝撃がそのまま直撃する。
「ぐっ――!!」
ヴェルミナが吹き飛び
壁をぶち抜き、瓦礫の中へ叩き込まれる。
ドゴォォン!!
粉塵が舞い上がる。
「はぁ……はぁ……」
ヴェルミナが血を吐きながら立ち上がる。
「防御ごと消すとか……冗談じゃないわね……」
更にアポクリファの腕が変形し刃のように伸びる。
≪断罪連撃≫
「速っ――!?」
ガキィィン!!
防御が弾かれ、影ごと吹き飛ぶ。
「ぐっ……!!」
再び壁に叩きつけられる。
「ヴェルミナ!」
リィナが叫ぶ。
だが――
その前に、ウィザーが立つ。
「よそ見してる場合?」
冷たい声で、再び魔法陣が展開される。
リィナが舌打ちする。
「……チッ」
分断された…。
ヴェルミナが立ち上がり、口元から血を拭う。
そして――
アポクリファを見る。
「……あんた」
低く呟く。
「そこまで堕ちたのね、ウィザー」
遠くで、ウィザーが答える。
「進化と言ってほしいわね」
ヴェルミナの目が細くなる。
「変わってないわね……本質は」
杖を構え直し、影が広がる。
「いいわ」
静かに言う。
「その歪んだ天才――」
「私が止めてあげる」
アポクリファが咆哮する。




