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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

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113/113

第113黒 譲れぬ信念

 

 ――黒と白


 二つの閃光が正面からぶつかり合う。


 轟ォォォォォンッ!!


 激突の衝撃で礼拝堂の柱が一本、また一本と崩れ落ちる。

 床には無数の亀裂が走り、天井を覆っていた巨大術式も明滅を繰り返していた。


「はぁぁぁぁぁッ!」


 リィナが魔法を斬る。


「……ッ!」



 そのたびに光と闇の魔力が爆ぜ、周囲の空間を歪ませた。


「先程までとは別人ですね。」

 ビションが低く呟く。


「当然よ。」

 リィナは剣を振るいながら答える。


「私は一人でここまで来たんじゃない。

 みんながいたから、今の私がいる!だから……私は負けない!!」


 黒剣が唸る。


黒百合乱舞(リリィ・ダンス)!!》

 一瞬で十数もの斬撃が放たれる。


 ビションは杖を旋回させる。


聖光拘束(ホーリー・チェイン)!!》

 無数の光の鎖が飛び出し、黒い斬撃へ絡みつく。


 だが、一本、また一本と鎖が断ち切られていく。


「何……!?」


「まだよ!」

 リィナが踏み込む。


黒百合魔装(リリィ・アームズ)!!》


 闇が身体へ纏わりつき、身体能力が一段階引き上げられる。


「速ッ……!」

 ビションの視界からリィナが消える。


「そこッ!!」


 ギィィィン!!


 光壁が間一髪で受け止めるが、

 完全には防げず押し負ける。


「くっ……!」

 ビションの身体が十数メートル吹き飛び、礼拝堂の柱へ激突する。


 それでも彼は静かに立ち上がるが、法衣は裂け、肩口から血が流れていた。


「ハァハァ……見事です。」


「まだやる?」

 リィナは剣を下ろさない。


「当然です。」

 ビションは微笑む。


「私には救わねばならない世界があります。」


「まだそんなことを!」


「救済の光を受けなさい。」


天光降臨(ディバイン・フォール)!!》》

 ビションは静かに杖を掲げ、幾百もの光柱が降り注ぐ。


「そんなの、全部まとめて砕いて見せるわ!」

 リィナは黒剣を天へ掲げる。


黒百合(ノクス・)終焉(カサブランカ)!!》

 

 闇が花のように咲き、礼拝堂を覆い尽くす。


 闇花びらが光柱へ触れた瞬間、闇が光を飲み込み

 礼拝堂全体が黒と白に染まる。



 轟音が止んだ時、ビションの結界は崩壊していた。


「……馬鹿な。」


 初めて、その声に動揺が滲む。


「ビション。あなたは救いたかったんでしょう?」

 リィナは静かに歩き出す。


「ええ、その通りです。」


「だったら、どうして生きてる人の心まで殺したの?」

 リィナは悲しそうに笑う。


 その一言に、ビションの瞳が揺れた。


「…………。」


 返事がない。


 リィナは続ける。


「ウィザーは最後、自分の意思で笑った…。でもあなたはその笑顔さえ奪おうとした。

 それが救済?」


「感情は迷いを生む、だから私は……。誰も失わない世界を作ろうと」

 ビションは静かに首を振る。


「違う。それは失わないんじゃない。あなたが失うことを怖がってるだけよ。」

 リィナは首を横に振る。


 その言葉は、剣より鋭かった。


「……!?」

 ビションの瞳が初めて大きく揺れる。


「あなたも辛かったんでしょう?救えなかった命が、仲間が…だから死を否定した。」


「……。」


「でもね。それじゃあ、()()()()()まで消えてしまうわ。」

 リィナは黒剣を構える。


「……。」


 静寂が流れ、瓦礫が崩れる音だけが響く。


「……やはり、私は貴女を理解できません。」

 ビションはゆっくり目を閉じた。


「私もよ。だから、ここで終わらせる。」

 リィナは答える。


「ええ、リィナ。……最後の審判です。」

 ビションもまた杖を構え、二人が同時に駆け出す。


黒龍断閃(ヴァル・ノワール)!!》


聖天(アポカリプス・)終焉(ルクス)!!》


 二人の奥義が真正面から衝突し、支えていた柱が次々と崩れ落ち


 リィナの斬撃がビジョンの奥義を食い破った。


「……っ!」


 ビションの障壁が砕け散り、斬撃がその胸元を深く切り裂いた。


「見事……です、リィナ。貴女は……私を超えた。」

 鮮血が宙を舞い、ビションは、荒い息を吐く。


「終わりよ、ビション。」

 リィナは剣を向けたまま、一歩近づく。


「……ええ。認めましょう。今の私では、もう貴女には勝てない。」

 ビションは、小さく笑う。



 その穏やかな口調に、リィナはわずかに眉をひそめる。


「ですが…」

 ビションはゆっくりと立ち上がり、血に染まった法衣のまま、静かに右手を胸へ当てた。


「私はまだ、()()()()()()()()()()()。」


 その瞳には、なお狂気にも似た確信が宿っていた。



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