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81話 ボス戦

「ボスキャラのお出ましか!?」



 突っ込んで来たのは、山のように巨大なカバようなモンスターだった。

 うっすらと霞がかかるほど遠くに居るにもかかわらず、地響きと土煙を巻き上げながら走る姿がはっきりと見える。

 すかさず鑑定と解析ツールで解析をする。





《鑑定不能》

:-

------------------------------------------------------------

名前:ー

種族:ベヒーモス

年齢:327歳

レベル:351



HP:118304

MP:42043

スタミナ:120579



筋力:3520

敏捷:2739

知力:301

器用:433

体力:8320

魔力:1003

頑健:4245

精神:1351



物理攻撃力:10236

魔法攻撃力:1212

物理防御力:12822

魔法防御力:4317



称号:暴風の疾走者 フロアボス



スキル

 パッシブ:風耐性 LV7

     :物理障壁  LV2

     :HP自動回復 LV2



 アクティブ:チャージ LV7

      身体強化 LV4

       風の盾 LV2



各種コード     

 ・

 ・

 ・

------------------------------------------------------------





「ベヒーモスって風属性のモンスターだ」



 見た目が俺の知ってるゲームのベヒーモスとはなんか違うな。

 ドラゴンには流石に劣るが、それでも相当やばい相手だ。



「イオリ! アレ使える!?」



 アリーセが暗に付してチートツールで倒せないか聞いてきた。



「出来ないこともないが、あの速度のまま突っ込まれたら間に合わない!」 



 打ち込みさえ間に合えば、すぐにでもHPを0にしてやるのだが、コードがドラゴン並みに多かった。

 何か足止めでもできれば何とかなるかもしれないが、このままでは半分も打ち込こまないうちに街に到達されてしまうだろう。

 しかも、ぎりぎりで倒したとしても、突っ込んできたときの運動エネルギーは残されているので、死んでも勢いそのままに突っ込んできてしまうと思われる。



「とにかく、トロールと同じように、物理攻撃に強くて魔法攻撃に弱い相手だ、ジークフリード様に早く下がってもらわないと」



「そちらはわたくしが引き受けますわ!」



「それじゃあ、私とイオリは届く距離まで来たら全力で攻撃ね!?」



 エーリカが素早く呪文を詠唱する。



『伝令! 正面に風属性持ちのベヒーモスが現れました! 物理攻撃はあまり効果がありません、ジークフリード様、一度お引きになられてください!!』



 拡声の魔法だったのか、エーリカのよく通る声が辺り一面にこだました。

 空気の振動を距離に比例して増幅させるイメージが出来れば俺にも使えそうだな。

 しっかりと伝わったのか、ジークフリード様を含めた騎兵が転進して戻ってきている。



「イオリのそのウルサイやつってたしか風属性なのよね? ダメージ通る?」



「風耐性がLV7もあるから効果は薄そうだな」



「風耐性があるモンスターの弱点は土属性ですわよ」



 エーリカが弱点を教えてくれたが少し困った。 土の属性弾は一応用意してあるが、反動が強すぎて『|FM‐MININI‐MK3(ミニニ)』で、撃ち出すと、本体が俺ごと後ろにぶっ飛んでしまうのである。

 何処かに固定してやれば使えないことも無いが、土塁では固定する場所がない。



 仕方が無いので、アイテムボックスからもう一つの魔導銃となった『FM‐SCARU‐Hスカルヘビー』を取り出して、土の属性弾の入った弾倉をはめ込み初弾を装填した。

 フルオートでの射撃しかできない『|FM‐MININI‐MK3(ミニニ)』に対して、こちらはセミオートでの射撃が可能なので、反動については幾分かマシな事と、こちらの方が命中精度が高いので狙撃してやろうという心算だ。



「アリーセ、何処を狙ったら良いか教えてくれ!」



「そもそも大型のモンスターは正面からは狙わないけど、セオリーなら足ね。 でもイオリの武器ならどこ狙っても良いと思うわ」



「それもそうか……」



「なぜか不穏当な会話に聞こえますわ……」



 そうこうしている間にも、ベヒーモスはどんどんと近づいてきている。

 もう少しで射程に入りそうだというあたりで、アリーセが弓を構えた瞬間、ベヒーモスが急激に加速をし始めた。



「加速した!?」



「大丈夫当てられるわ!」



 アリーセが放った矢はまっすぐベヒーモスに飛んでいったが、何も起こらない。

 俺の渡した矢だと、この距離からでもわかる爆発なりなんなりが起こるのだが、何の反応もなくベヒーモスも走り続けている。



「外したのか?」



「外してないけど見えない何かに弾かれたみたい」



「そういや、風の盾ってスキルもってたな」



「多分それね、それだったら爆発するやつを足元の地面に山ほど叩き込んでやるわ!」



 それは頼もしい。

 ベヒーモスは他のモンスターを轢き潰しながらもどんどん加速していく。

 この調子で加速されたらあっという間にここまで来てしまいそうだ。



「土塁の前に出る!」



「よくわからないけど、わかったわ!」



 俺は少し慌てて走り出そうと一歩踏み出した。

 その途端、足が後ろに滑り土塁キスをすることになった。



「何やってるの?」



「い、いや、ちょっと忘れてただけだ……」



 敏捷がそこそこ上がっているせいで、足の動きの速さに対して地面の摩擦が足りなかったのである。

 最近まで、オットー君に選んでもらったスパイクつきの靴を履いていたので、随分マシだったのだが、今着ているのはゲームから持ち込んだ鎧一式だった。

 靴底って大事だな……。



 ここへ来て、痛いタイムロスをしてしまった。

 焦る気持ちを抑え慎重に土塁の下に降り、壁に背を付けて座る。

 土塁を利用することで撃った反動で飛ばないようにするためだ。



「絶対に肩が痛いだろうから、やりたくないけど仕方がない……」



 片膝をたて、膝に肘を乗せて銃身を安定させ、ベヒーモスの頭を狙う。

 エリーカや他のマジックユーザーによる魔法攻撃やアリーセの足元を次々を爆発させる攻撃で、多少勢いを殺すことに成功してはいるが、重量がありすぎるからか、ものともせずに突っ込んでくる。

 覚悟を決めて『FM‐SCARU‐Hスカルヘビー』の引き金を引いた。



「ぐあっ!」



 岩が大砲のように発射され、それと同時に銃床と土塁に挟まれた肩に激痛が走る。

 発射された岩は『風の盾』に弾かれ着弾が中心から少しずれ肩口あたりに命中した。

 肩口に大穴を開けたベヒーモスは即死こそしなかったようだがバランスを崩し、派手に転倒をした。



「って、あんまり失速してねぇ!?」



 転倒したことで加速こそしなくなったが、もともとの重量が重量である。 車が急に止まれないのと同じで、地面を滑りながら結構な勢いでこちらに迫ってきている。



 「ぐおっ! うがっ! くっそ全然失速しねえ」



 反動のダメージに耐えながら数発撃ち込むが、焼け石に水だ。



「退避しろおおおおおおおおおおおっ!!」



 兵士や冒険者達が急いで退避していく。

 これは流石に逃げた方が良いか?



「イオリ! どうする!?」



 土塁の上から顔を出してアリーセが俺に聞いてくる。



「逃げないのか?」



「どうせ、なんとか出来るんでしょ?」



 なんだよ、信頼しすぎだろ、それ。



「しょうがねぇな。 あとで言い訳を一緒に考えてくれよ?」



「そんなのは今更じゃない?」



 アイテムボックスから、戯れで作った封印石のロープを取り出し、輪を作って自分の周りを囲むように置いた。

 チートツールを立ち上げ、更にアイテムボックスから大きな魔道具と魔晶石を取り出した。

 ベヒーモスは後から撃った弾丸で、すでに事切れているようではあるが、その巨大な体は生前の勢いのままに眼前まで迫って生きている。



「よーし、大盤振る舞いだ! なんとかラートアー起動!!」



 取り出した魔道具は、改造済み都市防衛魔道具だ。

 魔晶石を10個程突っ込んで、さらにチートツールで耐久各種を減らないようにダメ押しをし、フルパワーで結界を展開した。

 急速に展開された強力な結界で大気が焦げ、モーターが焼けたときのような臭いがする。

 ベヒーモスは展開された結界に衝突し大きな衝撃音とともに、自らの運動エネルギーによって押しつぶされていく。



 結界という大きな壁に衝突したベヒーモスは頭と体の一部を潰して停止した。

 衝突の勢いで持ち上がった下半身が、地響きをたてて地面に落ちる。



「……終わったの?」



 いつの間にか俺の横に来ていたアリーセが聞いてくる。



「まだ、モンスターが少し残ってるけど、概ね終わったんじゃねーかな」



「そっか」



 顔を見合わせて、なんとなく可笑しくなってきてお互いに笑い合う。



「これは、言い訳が大変そうね」

次回更新は週明けに幕間の予定です。

(もし書けたら休日中に投稿します)

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