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異世界で冒険を! 昭和時代でスローライフを! オレたちの世界交換ファンタジアライフ!  作者: タカハシあん


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第9話 寿司屋 *三月*

 駄菓子に五百円も使ってしまった。


 子供がいたら非難の目を向けられていたことだろう。恥ずかしい大人でごめんなさい。


「純。指輪にコロッケと駄菓子を入れてみろ。心の中でインと思い浮かべたら入るから」


 オレのに入れてもいいが、異世界で昭和の味が恋しくなるだろう。そんなときのためにたくさん入れておくがよい。


「は、入った!?」


「冒険に必要なものはあちらにあるが、持って行きたいものは買っておくといい。まあ、慣れるために近い町まで一緒に同行する。今やっているようにな」


 オレも純がいなかったら昭和時代に戸惑っていたことだろう。同じ日本なのに時代が違うだけで理解不能なものばかりで溢れている。付き添いしてくれなかったらボロを出していたことだろうよ。


「それはありがたいが、冒険に必要なものなんてマッチとか水とかし思い付かんしな~」


「まあ、そうだな。すぐ食べられるものを数日分、塩、砂糖、酒、醤油、味噌、米を持っていれば困らんだろう。純はタバコは吸うのか?」


「いや、吸わない。勧められたが体に合わなかった」


「そうか。あちらは吸うヤツがいるからコミュニケーション道具として持っておくといいぞ。葉巻とかあったからな」


「そうなのか。じゃあ、買っておくか」


 寿司屋の前に商店街の店を回って買うことにした。


「酒は高いんだな」


 瓶ビールは一本百三十円。日本酒は一杯五十円だった。平成と比べたら断然と安いんだろうが。


「まだ米が足りてないからな。酒に回せないと新聞に書いてあったよ」


 まだ豊かな時代ではないってことか。まあ、あるだけマシだろう。あちらでは一から作らないとならない。その手間を考えたら安いくらいだろうよ。


「寿司屋はあれだ」


 町のお寿司屋さんって感じのところだ。有名なのか?


「働いていたとき、先輩に連れて来てもらったところだ」


「そう言えば、純ってどこで働いていたんだ?」


「県庁だよ。土地改良課ってところだ」


「公務員かよ! 優秀じゃん!」


 県庁って、大学出とかが入るところじゃないのか? ざっくりなイメージでしかないが。


「勉強しか出来なかった社会不適合者でしかないよ」


 勉強だけしてきてコミュニケーション能力を鍛えなかった、ってヤツか。クラスにいたなな、中学受験に破れて公立の高校に入って来たヤツ。純もそのタイプってことか……。


「よほどひねくれてないのなら、頼れる者がいない場所に行けば人恋しくなるものだ。孤独に堪えれるヤツはそうそういないからな」


 オレだってこんなにフレンドリーな性格じゃなかった。大人になったってこともあるが、友達と別れてすぐ人恋しくなったものだ。村を創ったのも寂しさに堪えられなかったからだし。


「そんなものかね?」


「まあ、あちらで確かめてみるといい。一人でも生きられるなら一人で生きればいいし、一人が嫌なら仲間を捜せばいい。それを探す旅にしろ」


 チート級の能力があろうと、自由気ままに生きられるほど異世界は優しくはない。生死より精神的に来るものがある。チートで心は救えないのだ。


「……そうする……」


「そうしろそうしろ。んじゃ、寿司屋にお邪魔しますだ」


 回らない寿司屋とかちょっとドキドキするな。でも、ワクワクしながら暖簾を潜った。


「いらっしゃい。こちらにどうぞ」


 大将、っていうのか? 五十くらいの男とその息子か? なんか似ている。あとは、女将さんの三人でやっているようだ。


 まだ早いからか、客はオレらだけ。カウンターしかない店のようだ。


「大将。一人千円くらいでお願いします」


「あいよ。お任せね」


「お前、慣れてんな?」


「先輩がそう言ってたのを真似ただけだ」


 通だね。その先輩、通だね。よく知らんけど。


「飲み物はどうする? ビールがよく冷えているよ」


「じゃあ、お願いします。ビール飲みたかったので」


 異世界の酒はそんなに美味くない。が、酔いたいときはあるので、酔うためだけに飲んでいたんだよな。どうせなら美味い酒が飲みたかったのだ。


「純も飲むだろう?」


「オレはいい。寿司の味に集中したいから」


「お、通だね」


「通になるほど寿司なんて食ってたら破産するよ」


 この時代の寿司はまだ高価なようだ。いや、平成でも回らない寿司は高いか。


 先に瓶のビールを出してもらい、女将さんに注いでもらって一人乾杯。一気に飲み干した。


「あー。ビールってこんな味したんだな~」


 苦いが悪くはない。薄くて微妙なエールとは大違いだ。叡知が宿っている味だ。


「ビールも買って帰ろうか。とーさんにお土産だ。あ、大将。両親にお土産を持って帰りたいからお願いできますか? 夏だから無理かな?」


 指輪に入れたら暑さなんて関係ないが、それをいうわけにもいかないから持ち帰りはこの時代に合わせるとしよう。


「それなら鱒寿司を用意するよ。暑いところに置かなければ問題ないさ」


「鱒寿司? なんか聞いたことがある」


「富山の郷土料理さ。美味いぞ」


「じゃあ、四つお願いします。オレも食いたい」


「アハハ。こりゃ上客が来たものだ」


「五千円を越えたら言ってくださいね。贅沢は今日だけなんで」


 さすがに散財は出来んか。旅の資金としばらくの費用にしなくちゃならんのだからな。


「あいよ。美味いものを握るから楽しみにしててくれ」


 うん。楽しみに待ってます!

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