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異世界で冒険を! 昭和時代でスローライフを! オレたちの世界交換ファンタジアライフ!  作者: タカハシあん


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第8話 六十年差 *三月*

「いや~、穴の開いてない五十円とか一万円札がない時代があったとはね~。昭和時代は奥が深いわ~」


 ネックレスを売った金を見せてもらったらすべて千円札。聖徳太子が描かれていたよ。聖徳太子って一万円じゃなかったのか? 意味わかんねー。


「一万円札ね~。車を買うわけでもないのに必要なのか?」


 昭和時代を生きる純にしては一万円札があるほうが不思議か。お互い、六十年以上の差があるんだな~。


「結構、店があるんだ。商店街か? 平成ではたくさんシャッター街になってんのに」


「商店街がなかったら買い物とかどうするんだ?」


「スーパー、スーパーマーケットってわかるか?」


「いや、わからん」


「八百屋も肉屋も魚屋も合わさった店さ。雑貨もあるが、ホームセンターってのもある。今よりもっと車社会になって郊外に大きいスーパーが出来るのさ。新幹線や高速道路が出来る前に土地を買っておくべきだな」


「どこかわかるのか?」


「知らん。オレ、埼玉生まれの埼玉育ちだったし。それも十七年しかいなかったから地元のこともよく知らん。旅行も年に一回とかだったしな。バイクで旅とかしてみて~」


 なんかカッコイイバイクが通りすぎて行った。ハーレーみたいなバイクだな?


「美味いもの巡りとかもしてみたい」


 海で海産物とかもいいよな。海老フライが食いてー!


「それだと食っていけんだろう。仕事はどうする?」


「手っ取り早く出来る仕事ってなに? オレ、高校出てないから学歴も学もない。力仕事なら出来るんじゃないかな?」


 工事現場で働くか? それはそれでおもしろそうだ。社会人っぽくて。


「新聞配達や牛乳配達だな。よく募集していたよ」


「おー! 新聞配達、いいね! 苦学生がやっているヤツ!」


 高校の友達でもやっているヤツいたわ。オレは早起きとか無理、って感じだったが。


「純はやったことがあるのか?」


「ないな。戦後だったから畑仕事ばかりだったよ」


「ここでは戦争を知っている子供たちがまだいるんだな」


 なんか、戦争を知らない子供たち~って歌、なかったっけ? あれは何時代──って、昭和時代か。オレ、平成元年生まれだし。


「戦争を知っていると言っても戦争に出たわけじゃないからな。十年前も前のことだし」


「十年一昔、か。十年なんてあっと言う間に過ぎるものだよな」


 まだ若いつもりでもアラフォーだ。高校生のときのようにははしゃげない。まったく、オレの青春を返しやがれってんだ。


「そうだな。二十歳を過ぎたら一年が短く感じるようになったよ」


「まだ二十半ばだろうが。年寄りみたいなこと言ってんな。今が人生で輝いているときだぞ」


 オレの二十代は魔王退治で真っ暗だったがよ。


「うおっ!? コロッケが五円?! マジかよ!」


 総菜屋、いや、肉屋か? のぼりにコロッケ五円と書いてあった。


「今の時代ってこんなに安いの? オレの時代は安くても六十円だったぞ」


 スーパーの安売りならもっと安いんだろうが、記憶に残るコロッケの値段は百円だった。


「純、コロッケ買おう! かーさんやとーさんにお土産にしよう! てか、オレが食いたい!」


 芋は散々食ったが、コロッケみたいにはならなかった。たぶん、油がわるいんだろうな。なんかいまいちだった。


「これから寿司屋に行くんだろうが」


「コロッケは別腹だ」


「人間の胃は一つだけだ」


「お前、男相手に言うのはいいが、女の子には言うなよ。嫌われるからな」


 まったく、昭和の男は女の扱いを知らんのか? 


「嫌われたところで問題ない。もう結婚出来る歳でもないしな」

 

 昭和の男には結婚適齢期があるのか? まだ二十も半ばなのに。昭和の男は面倒だな~。


「あ、おばちゃん。コロッケ十二個お願い。二個は食べるから十個は包んで。もし、迷惑じゃなければ二十個は欲しい」


「あはは。豪快なあんちゃんだね。買ってくれるならいくらでも買っておくれ」


 ってことなので三十個お願いした。


「三十二個買って百六十円とか、逆に恐ろしくなるな。消費税もない時代かよ。いい時代だな。コロッケうめー!」


 学校帰りに食ったコロッケを思い出す。あの頃のことが鮮明思い出されるよ。


 オレもこんな美味いものを作ってみたい。


 あ、この時代なら料理本があるだろうから料理を覚えるのもいいかもしんないな。オレには十年もの時間があるんだ。その時間を有意義に使うとしよう。


「オレ、コロッケには醤油派なんだ」


「コロッケに? このままでも美味いだろう」


 おっと。コロッケ戦争になりそうだ。この辺で止めておこう。


「なんか飲みたいな」


「じゃあ、そこの駄菓子屋で飲みか」


 おー駄菓子屋! なんか年期の入った駄菓子屋! 平成にあったのとはまるで違う。ラムネはわかるが、ニッケイ水ってなんやねん? 飲んで大丈夫なものなのか? 昭和はこんなものを飲んでいたのか?


 ニッケイ水を買い、飲んでみたらとんでもない味がした。なんだ、この味は? 八つ橋? みたいな味がする。昭和の子供はこれを美味しいと感じているのか? でも、なんかクセになる。


「駄菓子も食おうぜ」


「だから寿司屋はどうするんだよ?」


「寿司も食う。そして、駄菓子も食う」


 オレの腹はまだ余裕がある。てか、やっすいな~! 一円とか二円とか、高くても七円か? ちゃんと商売になっているのか不思議でたまらんよ。

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