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異世界で冒険を! 昭和時代でスローライフを! オレたちの世界交換ファンタジア!  作者: タカハシあん


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第37話 なんで!? *純*

 山からの眺めはいいものだ。


 遠くに見えるのは月山だろうか? 日本海も見える。こっちの山はなんだ? 人が山を登りたくなる気持ちがよくわかるよ。


「世界が広がる!」


 これまでの世界がなんて狭きことよ。世界を知ることで自分を知るってのは本当だったんだな。


「高山植物か。咲いているときに来たかったな」


 異世界にも高い山はあるんだろうか? あるのなら登ってみたいな~。どんな景色が見えるんだろう。楽しみだ。


「うおっ! 風が強い!」


 やはり山頂は風が強いな。飛翔の指輪だと風に包まれているから風をあまり感じないんだよな。


「いいところですね。連れて来てくれてありがとうございました」


「構わない。案内しただけだから」


「宏子さんは、山が好きなので?」


「別に好きではない。ただ、自分が小さくなれるから来ているだけ」


「小さく?」


 その問いには答えてはくれなかった。


 ……小さく、か。他とは違う体で生まれてしまったからだろうな……。


「その白い髪はアルビノというそうですよ。数万人に一人生まれるそうです。まあ、その体はなんなのかわかりませんが、熊を殴り殺せないのなら弱いほうでしょう」


「基準がおかしい」


「基準の外にいるヤツと友人になりましたからね」


 飛翔の指輪を発動させて、空中に浮かんだ。


「…………」


 前髪で目が見えないが、口は驚きを主張していた。


「オレ自身の力で飛んでいるわけじゃありません。この指輪の力で飛んでます」


 宏子さんの前に下り、手を出した。


「自分の存在がもっとちっぽけだと教えてあげますよ」


 どうする? と思ったらすぐにオレの手を取った。


 ……あの崖をこんな柔らかい手で登ったんだ……。


 というか、女性の手を握ったのはいつ振りだ? 子供の頃まで遡らないとないんじゃないか?


 風を操りながら宏子さんを包み込み、浮かび上がらせた。


「オレの手を離さないでください」


「……わかった……」


 驚いてはいるが、恐れてはいない。一人で山を登るだけあって度胸はとんでもないようだ。

 

 そのままゆっくり上昇して宏子さんに空を飛んでいる感覚を教え、海のほうへと飛んだ。


 海岸まで十キロもないので三十分くらいでやって来れ、人のいない砂浜に下りた。


「ちょっと早いですが、お昼にしますか」


 オレが腹が減った。やはり山を登るのは体力を消費する。


 収納の指輪から御座を出して敷き、握り飯と三月が作った煮物と玉子焼きを出した。


「あなたが?」


「友人です。なにか料理に目覚めたみたいで暇があると作っているんですよ」


 集落では鶏を飼っている家がほとんどだ。産まれる卵も食い切れない。そこを三月が買って玉子焼きの練習をしているのだ。

 

「遠慮なく食べてください。溜まる一方なので」


 収納の指輪があるからか、練習に容赦がない。焼いては仕舞いの繰り返し。あいつの到達点がわからないよ。


 腹が減っているから毎日食べているものでも美味しく食べられる。


「美味しい」


 宏子さんは少食、ってこともなく、いや、意外と大食漢だった。


 魔法の水筒を出して、茶碗にお茶を注いであげた。


 負けてられないとオレも限界まで食う。食いすぎて動けなくなってしまった。


「美味しかった。いつもは遠慮して食べないようにしてたから」


 確かにあんなに食べたら吉沢家は破産するだろうよ。


「山形に出て働いては?」


 その体力があれば仕事はあるんじゃないか? 工事現場では女性でも働いているし。


「無理。わたしは、血に飢えた鬼だから」


「人を殺したくなると?」


「もう十人は殺した」


 世間に出てないほうが恐ろしいな。仁井家、どんだけだ?


「そうですか。今は大丈夫なので?」


 人を殺したことに恐怖はない。戦争に出なくても人は残虐だと知っているからだ。


「空腹で誤魔化している」


「満腹なら満たされるのでは?」


 オレは腹一杯で動きたくない状況だ。動いたら出る自信しかない。


「体が疼いてくる。血が見たいって」


 なかなか厄介な体質──いや、性質か? なんなんだ?


「それならオレと異世界に行きませんか?」


 そう誘うと、キョトンとした顔になった。口許だけでもわかるものだ。


「異世界?」


「オレは戸川純の名前を捨てて、こことは違う世界に行きます。そこは弱肉強食な世界で熊が可愛く思えるほどの生き物がいるそうです」


「だから熊を殺せるか訊いたの?」


「友人の基準では熊だっただけです。オレはまだ力が足りないので一人で行動するのは禁止されているので、どれだけ強いかも知りません」

 

 熊を倒せるなら旅をしても問題ないだろうって話だ。


「異世界なら宏子さんの血を満足させられるんじゃないかと思って。ただ、二度と戻って来れない場合もありますから。一緒に来るなら覚悟してください。オレは覚悟しましたから」


 最初は三月に言われたからだったが、今はオレの意志で行きたいと思っている。だから宏子さんにも自分で決めて欲しいのだ。


「行く。あなたの求婚を受ける」


 ………………


 …………。


 ……。


「はい?」


 なんて言った? なんかとんでもないことを聞いたような気がしたが。


「あなたと異世界に行く」


 だよね! そう言ったんだよね! びっくりした~! オレ、耳カスが溜まってんだな。帰ったら掃除しよう。


「旦那様。ふつつかな女ですが、よろしくお願いします」


 なんで!?

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