第27話 軍刀 *純*
朝飯が終わり、立派な座敷に場所を移した。
なんというか、趣があるというのか? 重厚感が凄い。なんか飲み込まれそうだ。
「改めて礼を言う。救ってくれて感謝しる」
畳に両手をつけて頭を下げる学さん。偉くなっても礼を忘れないんだな。
「純。お前に言っているんだよ」
「オ、オレですか!?」
旦那さんに頭を下げているのかと思ったよ! オレはなにもしてないんだから。
「オレはなにもしてませんよ。たまたま持っていたものを渡しただけですから」
頭を下げられても困るだけだ。なに一つ、オレは関わっていないんだからな。
「お前がいてくれたから学は救われた。おれからも礼を言わせてくれ。友人をすくくれて感謝する」
「ああ。なにか礼をさせてくれ」
だから頭を下げないで欲しい。オレはなにもしてないんだからさぁ~。
「それなら、これを買い取ってもらえますか? ちょっと資金集めをしたいんです。旅をするためにいろいろ買いたいので」
一応、質屋に行くために金貨や宝石をいくつか持って来ている。これだけの家ならなんか買い取ってくれるところに伝手があるんじゃなかろうか? ないのなら質屋を紹介してもらおう。
「薬はまだあるか?」
「あと二つなら。治癒の指輪なら十個はありますね」
蔦で編んだ籠の中に五十個くらいは入っていた。あいつの拘りが未だに理解出来ないよ……。
「指輪も売れるのか?」
「構わないとは言われてますが、寿命があるものです。よほどの重病なら半年で寿命が切れるとは言ってましたね」
冗談か本気か、五回は死ねるぞ、とか言ってたよ。
「それでも病気や怪我は治るわけか」
「はい。薬は失われた腕や足を復活させれるそうですが」
「失った視力もか?」
「そこまでは聞いてはいませんが、大丈夫ではないですかね? 失った手足を復活させるくらいですから」
とりあえず死んでないのならオールオッケーとかも言っていた。あいつは真面目なのかふざけているのかわからんのだよな。
「すべてわしに任せてくれるか? 安売りはしないと約束しよう」
「お願いします」
どうするかは学さんに任せるとしよう。伝手は多そうだからな。
「それだと礼には足りんな。いいものを渡そう。来てくれ」
と、学さんが立ち上がり、座敷を出て行った。
どうします? と旦那さんを見ると、行くぞと言われて立ち上がった。
仕方がないと、オレも後に続くと、土蔵の一つにやって来た。
……てか、土蔵が五つもあるよ。なにが入っているんだ……?
やたら古い錠に太い鍵を差してガチャガチャと解いた。
「ここは、能己家の家宝が仕舞ってある」
家宝と言われてもまったく想像が付かない。うちの家系は満州で死に絶えている。お袋のほうの親戚とも縁が切れている。東京にいるんじゃないかとはお袋が言っていた記憶がある。
中は当たり前のように暗いので、ライトの指輪で明るくした。
「そんな指輪もあるのだな」
「明るくするだけの指輪ですがね」
一応、目眩ましのために作ったとか言っていたな。
光量を絞れば電球くらいにはなる。異世界の小屋はこれで明かりを取っていたよ。
「奥を照らしてくれ」
言われたとおり奥を照らし、学さんが長い箱を取った。
なんだと見ていると、箱の中には日本刀が入っていた。
「わしが若い頃使っていた軍刀だ。お前にやろう。好きに使え」
「い、いいんですか? 大事なものでしょうに」
軍刀とは軍人の魂と言っていいもの。おいそれと渡していいものではないだ。
「構わん。わしが死んでいたら土蔵の錆びとなっていたもの。持ち手がいるなら使って欲しい。こいつはまだ錆びるには早いものだ。お前の戦場に連れてってくれ」
本当にいいのかと思ったが、たぶん、オレに託したいのだろう。そう思って軍刀を受け取った。
「吉倉万五郎作、月山だ。業物だ」
刀はまったくわからんが、鞘から抜いた刃を見て見入ってしまった。
「……綺麗だ……」
刃物を見て綺麗だとか思ったことないのに、月山の刃はなんとも綺麗だった。
「大事にすることはない。お前の戦場で使ってくれたらそれでいい」
「わかりました。オレの戦場に連れて行きます」
月山、よろしくな。




