表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で冒険を! 昭和時代でスローライフを! オレたちの世界交換ファンタジア!  作者: タカハシあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/49

第23話 桜小町 *三月*

「まずはなにを飲む?」


「うーん。じゃあ、ビールで。ツマミは適当で構いません」


 異世界じゃエールなんてクソ不味かったが、昭和のビールは神の恵みかと思うくらい美味かった。もう、この味を覚えたら異世界の酒なんて飲めたもんじゃないよ。


「いい飲みっぷりだね」


 女将さんにお代わりを注いでもらい、今度は喉で味わった。


「はい、タコとワカメの酢の物だよ」


「飲み屋とか初めてだけど、美味しそうなもの出すんですね。小料理屋の小鉢みたいだ」


 小料理屋とか行ったことないんですけどね。ネットで見た記憶でしゃべっております。


「それはしずかが作ったものだよ。東京の料亭で働いていたんだよ、この子は」


「料理人だったので?」


 この時代って、女性でも料理人になれるのか? 異世界では珍しいことだったが。


「料理人じゃないよ。賄いを作っていたのさ」


 なにが違うんだ? 料理人じゃない者が賄い料理を作っていたってことか?


「これだけ美味いものを作るなら料理人を名乗ってもいいでしょう」


 オーバーリアクションをするほど美味いわけじゃないが、毎日食べたくなる美味さではあった。


「煮物も美味いよ」


「じゃあ、お願いします」


 鶏肉が入った煮物もなかなか美味い。こんなの出されたら真似したくなる。オレ、家に帰ったら煮物を作るんだ!


「しずかさん、とっても美味しいですよ」


「気に入ったらまた来ておくれ」


「はい。次は父親も連れて来ますよ。一人で飲んでも寂しいですからね」


「それに付き合うのもあたしらの役目さ」


 仕事ではなく役目か。飲み屋のおねーさんは世界が違っても同じこというんだな。


「そうですね。じゃあ、熱燗をお願いします。お猪口は二つで」


 しずかさんは料理をしているし、酒飲みの相手をするような雰囲気ではなかった。それは、女将さんの担当だろうよ。


 熱燗を出してもらい、女将さんが注いでくれ、一気に飲み干した。


「美味いね。女将さんも一杯」


 徳利をつかんで女将さんに注いだ。


「じゃあ、ご相伴にあずかるよ」


 飲み屋をやっているだけに熱燗を一気に飲んでしまった。


「イケるね~、女将さん」


「こんなの序の口にもならないよ」


 飲み屋の女将ってこういうノリなんだな~。悪くないじゃん。


 料理をいただき美味い酒を飲む。異世界では経験出来なかった楽しみだ。


「この煮物、お土産に出来ます? 器代もお会計に混ぜていいんで」


 これで白飯を食いたい。三杯はいける自信しかない。


「あいよ」


 他にも小料理をお願いし、熱燗も四本も飲んでしまった。


 お代は千と五十円。一万円は使った感じか? まあ、一万円以上の価値はあったから満足したがな。


「ご馳走様でした。とても楽しい時間でした」


「お客さん、酒に強いね。まったく酔っている感じがしないよ」


「酔ってはいますよ。美味い酒を飲めてに美味い料理を食えたんですから。こんなに酔えたのは生まれて初めてです」


 精神を守るために悪酔いしていたところがある。でも、今日は気分をよくするために幸せな酔い方をした。


 これだよ、これ。これがしたかったんだよ、オレは。


「あ、そう言えば、お店の名前、なんでした?」


 気にもしなかったから看板とかまで見なかったんだよ。


「桜小町だよ。あたしが桜だ」


「いい名前ですね。女将さんにぴったりだ」


 春を感じさせる居心地さがあった。てか、小町ってなんだ? 読んで字の如く小さな町ってことか?


「やだよ。色男に言われたら照れるじゃないか」


「ふふ。じゃあ、また来ますね」


 店の外に出て看板を見たら確かに桜小町って書いてあった。


「結構長いことやってそうなくたびれ具合だな」


 女将さんも五十を過ぎてそうだった。戦争前からやってたんだろうか? いや、戦争中は飲み屋なんてやってられたのか?


「あ、あの」


 さあ帰ろう、としたとき、しずかさんが出て来た。


「あ、なにか忘れものしました」


 お土産の煮物は鍋に入れてもらってこうして手にしているが。


「いえ、また来てください」


「はい。また来ますよ。美味しい料理でしたから」


 馴染みの飲み屋があるってなんか大人になった感じがする。女将さんもおしゃべり上手で町のことも教えてくれた。やっぱ、情報は酒場に集まるは、昭和時代でも通じることなんだな~。


「ありがとうございます」


 なんか嬉しそうなしずかさん。あ、営業ってヤツか? なるほど納得だ。


「次は野菜や卵を持って来ますね」


 付与魔法で虫が付かないようにし、山の落ち葉や牛糞で肥料を作った。土も栄養豊富になって美味い野菜が出来ている。飲み屋の伝手で買ってもらうとしよう。ふふ。


「はい。お待ちしております」


 しずかさんに見送られ、誰もいないところで転移する。


 とーさんやかーさんは寝たようで灯りは消えていた。


 起こさないよう入れるが、今日は異世界に行って純に煮物を食わせやろう。起きてるかな?


 って行ってみたら獣人たちと酒盛りしていた。あいつ、そんなにコミュニケーション能力高かったか?


「純、土産だ」


「ああ、お帰り。皆と酒盛りしてたよ」


 スッゴい笑顔だ。なんかわかり合えることでもあったか?


「皆と仲良くなれたんだな」


「相撲をして仲良くなった」


 相撲? あー、こいつらは力を示したら気を許す種族だったな。


「純、相撲とか出来たんだ」


「子供の頃はよく皆でやったものさ」


 疎開のときは相撲をして遊んでいたそうだ。なんとも昭和だね~。

 岡田おかだしずか 二十五歳 子持ち

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ