第14話 友達 *純*
親父と三月が米が買えないかと話していた。
米か。そう言えば、友達の良二は米沢に婿入りしに行ったんだっけ。
最後に会ったのは結婚式に行ったときか? 米沢からも疎開に来ていたものもいたから何回か行ったことはある。
もう四年も前だから町も変わっているだろうな~。
「三月。米なら米沢まで買いに行って来るぞ。昔の友達が農家やっているから」
そう提案してみた。
「へー。友達いたんだ」
「失礼な。昔は活発な子供だったんだよ」
本当に失礼なヤツだ。今は友達はいないがな。
久しぶりに行くのだから手土産として収納の指輪でもやるか。三月もあっさりと許可をしてくれた。あと、刃物も持ってってやるか。好きにしていいと言ってたしな。
あ、米沢にも質屋はあるだろうし、銀の食器を売るか。
用意が出来たら米沢へと向かって飛び出した。
たぶん、あっちと思ったが、念のため線路沿いに飛ぶことにした。方向を間違えて会津のほうに飛んで行ったら洒落にならんし。
二十キロくらいなのでゆっくり飛んでも三十分で着くだろう。
「ふふ。慣れたものだ」
朝から晩まで練習したお陰で、ゆとりある飛行が出来ている。景色を楽しめる余裕まであるよ。
板谷を越え、山を越えると、米沢の町が見えて来た。
確か、結婚式は米沢駅近くのホテルでやった記憶がある。で、米坂線に乗って……四、五駅は通過したような? まあ、行ってみてだ。
最上川沿いの林の中に下り、城下町の中を通って駅のほうに向かってみた。
途中、町地図があり、質屋も書いてあったので、そこに行ってみた。
銀製品を持ち込んだオレに訝しく思ったようだが、親友の家に酒を土産にしたいからと、なんとか説得して買い取ってもらった。
「十五万とは奮発してくれたな」
と言うか、資金力の高い質屋だな。十五万円も手元にあるんだから。
十五万円なんて大金、昔なら身震いしていたことだろうが、魔法を知った今では金の価値はかなり下がってしまった。
……小屋には金貨銀貨が溢れている。三月が言うには城くらい建てられるくらいはあるそうだ……。
近くに酒屋があったので、言い訳を現実にするべく高い酒を一本買った。
「四百円か。一級酒でも本場だと安いんだろうか?」
福島では五百円くらいしてたような気がする。これなら親父にも買ってってやるか。
「米沢牛か。そういや、牛も有名だったな」
牛肉は近所の牛飼い農家がシメたときに食った以来か? どんな味だったかも思い出せないよ。固かった記憶はあるが……。
肉屋があり、米沢牛入りコロッケが売っていたので土産用と持ち帰り用を二十個ずつ買った。やはり肉がいいからか一個三十円もしたよ。
少し歩いたら路地裏に入り、空へと飛び上がった。
夕方に行くのも失礼だし、昼前に行ってまずは挨拶だけするか。近くに来たから寄ってみたとかでいいだろう。あとは行き当たりばったりだ。
そんな性格でもなかったのに、三月に毒されたんだろうな。人付き合いがなんか軽く感じれるようになったよ。ふふ。
米沢駅の上空まで行き、米坂線を辿って飛んでみた。
「確か、川を渡って、山沿いを走った記憶がある」
あ、あの寺の柳の木、見覚えある! ってことはもうちょい先の駅だったはず。
うっすらと記憶にある駅で下りた……はいいが、店もなしか。あのときは迎えが来てたから尋ねるもなかった。
「たぶん、あっちだ」
体力も付いたので十キロ二十キロ歩くくらい問題はない。なんなら一日中でも歩いてみせるさ!
記憶を辿って道を歩くが、周囲が田んぼすぎてわからなくなってきた。
「空から探すか?」
人に尋ねようにもその人がいない。今の時期なら草刈りとかしているはずなんだがな~。
どうしたものかと佇んでいたら向こうから三輪トラックがやって来るのが見えた。ちょっと尋ねてみるか。
すみませ~んと手を振ったらなんと、友達の良二だった。なんの偶然だ?!
「……お、お前、純なのか……?」
「ああ、純だよ。そっちこそ良二なのか?」
日焼けをしていたが、四年前と顔は変わってはいなかった。
「久しぶりだな! どうしたんだよ、こんなところで!」
「ちょっとこっちに来る用があってな。米坂線に乗っていたら見覚えがある風景に降りて歩いてたんだ。まさかお前に会えるなんて。嬉しいよ!」
そんなセルフが自然と出てしまった。
「お前、本当に純か? 昔はすましていたのに」
「それだけ歳を重ねたってことさ。お前も農家の顔になったじゃないか。色男が台無しだぞ」
二枚目で女から人気だった。それが婿養子になるとはわからないものだ。
「本当に変わったな、お前。そんなこというヤツじゃなかったのに」
「だったら知り合ったヤツの影響だな。明るくて裏表がなくて、臆することなく誰にでも話し掛ける。そんなヤツといたから移ってしまったんだろうよ」
良二に会えた嬉しさも追い風になっているんだろう。良二と出会えて本当にうれしかっから。
「時間があるならうちに来いよ。子供も見せたいしな」
「ああ、寄らしてもらうよ。子供は三歳になるのか?」
四年前だから三歳くらいのはずだ。
「ああ。今年の冬には二人目が産まれるよ」
父親なんだな、良二は。それが羨ましく、それだけ時間が流れたことを痛感させられた……。




