表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
29/38

第29話 ミミリアの実のある場所

「――おいおい、エルフ族って奴は通りすがりの者へ弓を向けるのか?」


 問答無用で矢を射られることに比べればマシだが、あからさまに敵意をむき出しにされるのも不本意だ。


「だまれ! この先はお前たち人族が進んでいい場所ではない。怪我をしたくなければ即座に引き返すことだ」


「そいつは困ったな。俺たちは探し物をしているだけだが、それがこの先にあるかもしれない。エルフ族には興味はないが、邪魔をするなら相手になるぞ?」


 俺は初めに声を掛けられた際に周囲に対して探索魔法を使っていた。広範囲には分からないが、少なくとも俺の目の前にいるのは姿を見せた者と隠れている者の二人だけだ。


「探し物だと? それはなんだ?」


「言ったらどこにあるか教えてくれるのか?」


「さてな。知らないものは答えようがない」


「ミミリアの実だ。薬の素材として必要なんだが、知っているなら教えてほしい」


 俺は木の上にいる男に問いかけた。何かを知っていれば動揺はするだろうと俺は男をじっと見据えた。


「知っているが、お前たち人族へは渡せない。ミミリアの実は神聖なる木に実るもので、我がエルフ族の宝だからだ」


 男はそう言うと弓を俺に向けていつでも射抜けるような動作をしてから再度警告をした。


「ミミリアの実が目的なら、なおさらここより先へは進ませることは出来ない。そこより一歩でも進めば即座に攻撃をする。これは脅しではない、最終通告だ」



 ――非常に面倒なことになった。おそらくだが、ミミリアの実を採取するためにはエルフ族の管理する地へ入る必要があると思われる。ここで見張りの二人を相手してやり過ごしたとしても増援に来られるとジリ貧だし、エルフ族と戦争をするつもりもない。


「大丈夫かにゃ?」


 ホイップが考え込む俺に声をかけたことにより考えがまとまった。


「わかった。ここは引き下がろう。だが、俺たちが後ろを向いた瞬間に矢を射るような卑怯な真似をしない保証が欲しい」


「貴様、誇り高きエルフ族を愚弄するのか?」


 弓矢を向けたままで男が俺の言葉に怒りの声を発した。


「ここには俺たちしか居ないからな。たとえ後ろから射抜いても目撃者が居なければ何とでもなるからな。まずはその物騒な弓をさげたらどうだ?」


 俺はあくまで相手のペースにならないよう言葉巧みにあしらう。


「減らず口を! やはりこのまま返すわけにはいかないようだ」


 案の定、怒りに満ちた表情で男が俺に向けて矢を射った。


 ――ギン


 俺は目の前に飛んできた矢を手にした剣で払い落とす。たった一本の矢、それも真正面から飛んでくるのだから切り払うことなどたいしたことではない。


「なっ!?」


 だが、男は驚愕の表情で固まってしまう。


「攻撃したな? 俺は言ったはずだ、エルフ族には興味がないと。そして、引き下がるとも。だが、その言葉を無視してお前は俺を攻撃した。いいだろう、死ぬ覚悟は出来たか?」


 俺は男をギッと睨みつけてそう叫ぶ。正当防衛だ、大義名分には十分だろう。

「熱き炎で彼の者を貫け。炎の矢(ファイヤーアロー)


 俺はわざと男から数十センチ外れた場所を狙って魔法を放つ。初級とはいえ攻撃魔法に驚いて引いてくれれば良し、そうでなければ残念ながら交戦するしかない。


「攻撃魔法だと!? こいつは本当にやばい奴だ。ここで絶対に死んでもらうぞ!」


「ちっ!」


 魔法は逆効果だったようだ。仕方ない、適当にあしらってから離脱をするとしよう。


「ホイップ! 左の茂みに向かって魔法を頼む!」


「にゃんだー!」


「ぐわっ!?」


 俺の指示にホイップが雷魔法を放つと茂みに隠れていた奴の悲鳴が響き渡った。


「よし、離脱するぞ!」


 木の上にいた男が仲間の居た方を見た瞬間、俺たちは大きく後ろへと飛び、奴らから距離をとった。


「逃がさんぞ!」


 仲間がやられたことに怒りを露わにした男が弓を大きく引くのが見えた。


「くそっ! しつこい奴らだ」


 俺がその矢を迎え撃つ動作をした瞬間のことだった。数匹の角兎が跳ねたと思ったらいきなり地響きのような音がして、左の森から狼の群れが飛び出して来たのだ。


「狼の集団狩りか! こいつらこんな奥まで来てやがったのか!」


 木の上で男が叫ぶのが聞こえる。彼らにとっても狼の群れは厄介な相手なのだろう。


「丁度いい。こいつらを利用させてもらうか。気配を消して狼どもが奴らに向かうように少しだけ嗾けてやればいい」


 俺はホイップに隠れるよう指示を出すと気配遮断の外套をまとって見張りたちの後方へと向かう。


「くそっ! 数が多すぎる。こうなったら、一気に押し寄せる前に風魔法で里に向かわないよう防壁を張るぞ!」


 見張りの男が風魔法防壁を展開するために詠唱を始めた。その隙に奴の後方へ回り込んだ俺は男が展開した防壁魔法の後方から狼の群れに向けて攻撃魔法を数回発動する。


「あぶねぇ! 炎魔法だと!? こいつ、いつの間に後ろに回り込みやがった!」


 男の後ろから飛んで来た炎魔法である。当然ながら自分を攻撃してきたと思った男はすぐに俺のいる側にも防壁を作り出した。しかし、俺の目的は男を攻撃するためではなかったので一撃を放った瞬間、すぐに横へと走り出した。


 ――ギャウン!


 俺が男の眼前から消えて森の中に逃げ込んだ時、男の後ろから狼の悲鳴が森に響き渡り奴がすぐに振り向いた。そこには黒くなった身体を痙攣させながら倒れる数頭の狼の姿が。どうやら適当に放った魔法が偶然複数の狼に命中したようだった。


「グルルルル!」


 仲間が複数やられた狼たちは怒りに満ちた様子で男の作った防壁へと体当たりを始める。数回程度ではびくともしないものだが、それが数十数百と増えれば威力は落ちるもの。いくら魔力量の多いとされるエルフ族の魔法とはいえ万能なわけではない。やがては力尽きて魔法の解除を余儀なくされてしまう。


「くそっ! 絶対にゆるさんぞ!」


 木の上にいた男が悪態をついて、ホイップの魔法を受けた男に向けて叫ぶ。


「俺が最後に残った魔力で障壁を作るからお前は先に里へ走って狼の群れを迎え撃つように警報を鳴らせ!」


「おう!」


 指示を出された男が森の奥へと走り出すのを見た後に奴は更なる魔法の障壁を展開すると自らも森の奥へと消えていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ