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【連載版】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します  作者: うり北 うりこ@ざまされコミカライズ開始


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7/12

「お前を愛することはない」と言われたのに、旦那様が世話を焼いてくる②


 うぐぅぅ……。


「お肉。お肉が食べたい……」

「元気になったらな」


 夕食の時間になり、私の前にはドローンとした白いものが置かれている。


「……何で旦那様も同じものなんです? というか、帰らないんですか?」


 忙しいと言っていたわりに、ずっとこの部屋にいるよね。

 仕事は? サボり?


「調子悪い時に一人だとさみしいだろ?」

「まぁ、そうですけど。でも、旦那様じゃなくてもいいかなって」

「……俺がいると嫌なのか?」


 嫌? どうだろう。

 そんなこと考えたこともなかったや。


「嫌ではないですけど、気を遣いますかね。食事も親切心なんでしょうが、別室できちんと召し上ってください。旦那様は元気なんですから」

「…………可愛くないな」

「知ってます。可愛かったら、お肉くれるんですか?」


 それなら、全力で()び売ってもいい。その時だけならだけど。


「どんなに可愛くても、肉はやらない。早く元気になれ。そしたら、好きなもの何でも食わせてやる」

「本当ですか!?」


 旦那様、思ったよりいい人じゃん!


 これは、旦那様を本気で守らないとだ。

 そのためにも、仕事の書類はすべてチェックさせてもらおう。実は(だま)されてました……ってことありそうだし。


「…………美味しいものをくれるからって、知らない人について行ったら駄目だからな」

「私のこと、何歳だと思ってるんですか? 十八歳ですよ」

「あぁ、俺より十歳も年下だ」


 旦那様がすごく心配そうな顔で言ってくる。

 というか、十歳離れてるって知ってたのか。


「旦那様は十歳も年下のいたいけな私に「お前を愛することはない」って言ったんですね」

「それは……悪かったよ」


 伏し目がちに言われ、思わず首を傾げる。


「あれ? 今、声に出てました?」

「あぁ、しっかりとな。どんなに付き纏われたくなくても、言ってはいけないことだった。本当にすまなかった」


 旦那様が頭を下げた。

 もしかして、私も謝らないといけないやつ?

 でもなぁ……。


「別に気にしてませんよ。労働対価として美味しい食事をもらえる予定ですから。それに、私も旦那様を愛しませんし」

「──っ。そうか……。そう……だよな……」

「はい。私もわざわざ『愛することない』と言い返しましたから、お互い様ってことで」


 そう言いつつ、ドローンとした白いものを食べる。


「あれ? ちょっと甘い……」

「ミルクと少しハチミツも入ってるからな」

「見た目はちょっとあれですけど、おいしいです」


 程よい熱さになったミルク粥をスプーンいっぱいに入れて、頬張る。

 うん。優しい美味しさだ。


「消化に良くても、ゆっくり食べないとだろ」

「……はーい」


 仕方ない。心配してくれているみたいだし、大人しく言うこと聞いておくか。

 はぁ……。ミルク粥も美味しいけど、早く肉が食べたいなぁ……。



 ***



 倒れてから一週間が経った。

 まだぷりぷりのウィンナーや分厚いお肉は食べれていないけれど、ポタージュスープや卵など、確実に食べれるものが増えている。

 そのどれもが美味しくて、毎日幸せだ。


 旦那様と結婚して良かった!

 ナビレート伯爵家、最高!!


「なぁ、コレッティーナ」

「何ですか?」

「これ、何だと思う?」


 そう言いながら、旦那様はテーブルの上に細長い箱を置き、私に開けるよう促した。


 何だろう。

 美味しいものがいいなぁ……。


 開くと、箱の中には薄い黄色やオレンジ色、濃い紫色のものが白い器に収まり、三つお行儀よく並んでいる。


「ゼリーだ!!」

「何だ、知っていたのか。近頃、貴族令嬢の間で流行っているんだってな」

「へぇ、そうなんですね」


 私の返事に、旦那様は変な顔をした。


「……すまん」

「何がですか?」

「その……食事をもらえなかったということは、甘味がもらえるわけない……よな」


 おっ! 旦那様、少し察しが良くなってるなぁ。


「そうですね。で、これは私が食べてもいいんですか?」

「一つだけな」

「…………一つ」


 ということは、一つしか味わえない……。

 どうしよう。全種類食べたい……。

 まさか、一口ずつ味見して決めたいなんて言えないし。


「…………じゃあ、これがいいです」


 薄い黄色のゼリーを選ぶ。

 オレンジとぶどうは見た目で何味か分かったけど、薄い黄色は味のバリエーションが多い。

 一つしか食べられないのなら、味の予想がつかないものがいい。


 りんごかな、それともレモン? いやいや、パイナップルってこともあるかな。


「いっただっきまーす!」


 わくわくしながら、スプーンですくって食べる。


「桃だ!! おいしー!!」


 幸せ……。

 何個でも食べれちゃうよ……。


 ゆっくり味わって食べたいのに、スプーンが止まらない。


「もうなくなっちゃった……」


 幸せって(はかな)い……。

 と思いつつ顔を上げれば、目の前のソファーで旦那様がぶどうゼリーを食べている。


 いいなぁ……。

 ぶどうゼリーも美味しそうだなぁ……。


「──っ。…………一口、食べるか?」

「いいんですか!?」


 いそいそと旦那様の隣へ移動する。


「…………ほら、あーん」

「あーん」


 ぱくっ、もぐもぐ……。


「美味しい! 旦那様、もう一口ください!!」

「も、もう一口だけな」


「もう一口っ!」

「し、仕方ないな……」


「おかわりっ!」

「これで最後だからな」


 ふー! ぶどうゼリーも美味しかった!!

 あとは、オレンジゼリーかぁ。


「ねぇ、旦那様」

「もう駄目だぞ」

「まだ何も言ってないじゃないですか!」

「言わなくても分かる」


 うぅぅ……。

 目の前にあるのに食べられないなんて、何という拷問(ごうもん)


「また明日、召し上がられてはいかがでしょうか?」

「デザー! ナイスアイデアです! 旦那様、明日ならいいですか?」

「そうだな。それならいいか」

「ヤッター!!」


 嬉しいなぁ……。

 って、あれ?

 そういえば、まだ対価の労働してない。


「旦那様、大変です!」

「どうした?」

「私まだ労働してないのに、食事どころか甘味までもらっちゃいました」


 まずい、契約違反だ。

 すぐさま働かないと!


「病人の仕事は休むことだ」

「もう元気です!」

「まだ駄目だ。いい子にしてたら、今度はプリンを買ってきてやる」

「プリン!? いい子にしてます! じゃなくて、食べ物で釣らないでください」


 睨めば、旦那様は小さく笑う。


「うちの奥様は単純で助かるよ」

「──っ! 旦那様は、すぐに騙されるじゃないですか!」

「俺は騙されてない」

「騙されてる人は、みんなそう言うんですー」


 ふんっと、そっぽを向けば、旦那様の笑い声が大きくなった。


 

お読みいただき、ありがとうございます。


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