↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第2章開始】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します(連載版)  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売
家族を得た私、領地のために頑張ります

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/71

手放せない〜カリウスside〜


 わ、忘れていた……。

 たしかに、結婚した日に養子を取ると言った。

 だが、今は養子を取ろうという気持ちがあまり……、いや、ほぼない。


「養子のことだが……」

「はい」

「少し考え直そうかと思っている」


 俺の言葉に、コレッティーナはきょとんと首を傾げる。


「養子、やめるんですか?」

「そう……だな……」

「じゃあ、跡継ぎはどうするんですか?」


 どくりと、心臓が跳ねる。

 ……俺の発言は、コレッティーナとの子どもを望んでいるように聞こえる……のか?


「い、忙しいし、時期も含めて養子を取るかどうかから考え直したいんだ」

「あー、なるほど。実は、好きな人がいて、その人との子どもを跡継ぎにしたいとか言われたら、どうしようかと思っちゃいました」


 コレッティーナが作り笑いを浮かべる。

 普段、見たこともない引きつった表情に、俺の中の何かが軋(きし)んだ。


「子をもうけるとしたら、コレッティーナとだけだ!」


 …………ん? 俺は今、何を言った?

 驚いたように目をまん丸にするコレッティーナの瞳の中には、状況を理解できていない俺が映っている。


「えっと……。私、子ども産みますか?」

「そういう意味じゃない!」


 反射でそう答えていた。


「子どもを産んでくれるとしたらコレッティーナだけという話だ。妻だろ!?」

「はい。妻だから、私だけ……」

「当然だ! ただ、それは俺一人で決めることじゃない。夫婦なんだから、跡継ぎのこともコレッティーナと話し合って考えていきたい」


 そうだ。

 コレッティーナの望みもあるだろうし、俺だけで決めることじゃない。


「分かりました。それ、今考えますか?」

「……こ、今度にしておこう。まずはこの書類を片付けるのが優先だ」

「それもそうですね」


 崩してしまった書類を拾っていく。

 すぐそばでコレッティーナもせっせと拾ってくれ、あっという間に集まった。


「ありがとな」

「はい。あ、ザールに砂糖水を頼んだままです」

「あ……」


 バタバタと足音が聞こえ、ザールが戻ってきた。


「砂糖水です」


 息も絶え絶えになっているザールに、もう必要ないとは言いにく──。


「ありがとうございます。でも、もういらないので返してきてください」

「……へ? いらない?」

「はい。旦那様の体調も大丈夫でしたので──」

「ザール! ありがとな。ちょうど、のどが渇いてたんだ」


 勢いで飲んだ砂糖水は、砂糖が溶け切っておらず、少しジャリジャリしていた。



 ***



 それから数日が経ち、扉に騎士はいるが、やっと殿下と二人になった。


「殿下、折りいって相談が……」


 チラリと護衛を見れば、人払いをしてくれる。


「どうしたの?」

「コレッティーナのことなのですが」


 コレッティーナの名前に、殿下に緊張感が走る。


「また何かあったのか?」

「あ、いえ。そうではなく……」


 ここ最近に起きた自身のことを話していく。


「おかしいんです。動悸がしたり、手が震えたりして」

「え? うん」

「ありえないですよね。家族で、娘のように思っていて、ずっとこのままでいないといけないのに!」

「それ、誰が決めたの?」


 誰? 誰って……。


「俺ですけど」

「うん。じゃあさ、奥方は娘のように思ってほしいと望んでいるの?」


 どう、だろうか……。

 コレッティーナは、俺に安心感を覚えている。

 家族という繋がりを求めている。


「娘のように思いたいのって、カリウスの方なんじゃない?」


 強い言葉じゃない。

 けれど、ザクリと刺さった。


「俺の方?」

「その方が都合が良かったんじゃないかな。知らないけど」


 殿下は笑っている。

 その笑みが、あとは自分で考えろと俺を突き放す。


「……お、俺は」


 言葉が出ない。

 娘のようだと思ったのは、たしかだったはず。

 可愛いと、守りたいと、安心してほしいと願ったのも、間違いじゃなかった。

 だが、その気持ちは本当だったのか?

 殿下の言う通り、俺の都合で娘のように思っていた?


 ため息が聞こえて、小さく肩が揺れる。


「カリウスはさ、難しく考えすぎ」

「しかし……」

「大切に想ってるんでしょ。どんなカタチであれ、それは変わらないんだろうから、別に悩むほどのことじゃないんじゃない?」


 やれやれといった感じに言われ、情けなくて殿下から視線を外す。


「そんなに悩むなら、離縁しちゃえば? もう奥方のラビソン伯爵家(不幸の元凶)もない。次の嫁ぎ先を見つけてあげて、さよならしちゃえば──」

「殿下っっ!!」


 耳を塞ぎたくなるような、大声が出た。

 血が沸騰する。


 ──コンコンコン。


「殿下、大丈夫ですか?」

「あー、うん。問題ないから、大丈夫だよ」


 ノックと共に聞こえてきた騎士の声に、殿下はのんびりと返す。


「答えは出てるじゃないか。カリウスは奥方を手放す気はない。そうでしょ?」


 すべてを見透かしたように言われ、頷くことも、否定することもできない。


「大声を出して、申し訳ありません」

「いいよ。女性のことで慌てふためくカリウスが見れたからね」


 殿下に相談しても、答えは出なかった。

 俺がコレッティーナを手放す気がないという事実を突きつけられただけ。


「今まで逃げてきた分、悩むといいよ。キミは、そういう感情を知らないままかと思っていたから、友として嬉しく思うよ」


 至極楽しそうな視線に、面白がっているだけだな……と、こぼれそうになるため息を呑み込んだ。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。