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【連載版】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売


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友人の過去と今〜第二王子side〜

第二王子視点になります。


「分かった。それだけの価値があるということだね」

「……たぶん?」


 首を傾げ、カリウスの奥方が言う。

 たしか年齢は十八歳だったか。

 歳のわりに言動の幼さが目立つな。


「どうぞ」

「ありがとう」


 受け取った紙は三枚。

 どれど……れ…………。


「……は?」

「何か変なこと書いてありましたか?」

「変なことっていうか……」

「お願い分の価値ありますか?」


 価値があるとか、そういう次元じゃない。

 不正についてと、その証拠の隠し場所。さらには関わった貴族まで書かれている。

 これは、かなりの数の貴族が関わっているな……。


「そうだね。もし本当なら、とても重要なものだよ」

「じゃあ、稲作、調べてくれますか?」

「証拠が見つかれば……かな」


 そう言うと、奥方は不満げに唇を尖らせる。


「というわけで、一緒に行こうか。明日でいいよね? 早いに越したことはないし」

「どこ行くんですか?」

「ラビソン伯爵家だよ」


 証拠の隠し場所は、奥方が一番詳しいだろうしね。


「分かりました」

「駄目です」


 カリウスと奥方が同時に話す。


「カリウス、これは国として動かなければならない案件だよ」

「だからといって、コレッティーナを連れて行く必要はありませんよね」

「一緒に行ったほうが手っ取り早いでしょ。夫人が断るならともかく、カリウス、ちょっと過保護なんじゃない?」

「それは!」


 何か言いたげなまま、カリウスは口を閉じる。

 まぁ、単に奥方が心配なんだろうけど。

 さっき見た、家族ともめている様子だけでも、ラビソン伯爵家でどんな扱いを受けていたのか、想像がつく。

 でも、それはそれ……なんだよね。


「夫人、一緒に来てくれないかな?」

「いいですよ」


 表情一つ変えることなく奥方は了承する。


「……俺も行く」

「はい。一緒に行きましょう。行ったら、カリウスには、美味しい実をあげます。今の季節なら、たくさんあるはずです」

「……もしかして、それが目当てで引き受けたのか?」

「違います。一番は稲作です」


 奥方がそう言うと、カリウスは優しく目を細める。


 カリウス、変わったなぁ。


 女性が苦手で、社交界に来ても常に仏頂面(ぶっちょうづら)だったのに──。



 ***



 カリウスがまだ社交界に顔を出していたのは、十年前くらいだったかな。

 その頃のカリウスは、周りが引くほどの近づくなオーラを放っていた。


「ねぇ、カリウス。愛想を良くしろとまでは言わないけど、その眉間のシワ、どうにかならない?」

「無理ですね」

「無理ってさ……。社交界は社交をする場所だよ? それじゃ誰も近づいてこないって」


 実際、オレとカリウスの周りだけ、誰もいない。

 けれど、女性たちの視線はカリウスにばかり向けられている。


「誰にも近づいてほしくないから、こうしているんです」

「……そこまでして、社交界に来てる理由は?」

「婚約者探しですよ」


 カリウスは深いため息をこぼしながら言う。


「探す気ないよね?」

「まぁ、そうですね。できれば、誰とも婚姻せず、分家から優秀な養子を引き取って、後継者として育てたいんですよ」

「……十八歳の言葉じゃないね」


 なんて答えつつ、カリウスは本当に結婚しなそうだな……と思う。


 婚姻は貴族にとっての当たり前。

 その当たり前をしないと、余程の変わり者か、婚姻相手を見つけるのが難しい厄介な人物として扱われる。


「女性絡みは、ろくな事が起きないですから」

「あー……、普通はそんなこともないんだけどね」


 カリウスの場合、女性から付きまとわれるなんて日常茶飯時(にちじょうさはんじ)。心中を図ろうとした人もいたっけ。

 無駄にモテるから、男性からは嫉妬をされ、逆恨みされることもある。


「顔が良すぎるのも大変だね……」


 オレだって、顔は整っている方だけど、カリウスは別次元だからなぁ。


「というか、社交界に無理して来なくてもいいんじゃない? 養子を取るつもりなんでしょ?」

「……いいんですか?」

「うん。変わり者扱いされるだろうけど、カリウスの場合、困らないでしょ?」


 なんて言ったのが、まずかった。

 翌日、社交界免除証明書ってものを自作して持ってきたカリウスに、サインさせられたもんなぁ……。


 サインした時の嬉しそうな顔といったら……。


 少し休んだら、また社交界に姿を現すかと思ってたんたけど、十年近くも参加しなかったし。

 参加しないことについて誰かに言われる度に、「第二王子殿下より、社交界不参加の許可をもらっていますので」って、全責任をオレにぶん投げられたしさ。


 カリウスのおかげで、いろいろと大変な目にあったんだよなぁ。



 ***



 思わず昔を思い出していれば、奥方と目が合った。


「いろいろと残念ではあるけど、カリウス、悪いやつじゃないから」

「はい。かなりヒロインっぽいです」

「……ヒロイン?」

「心優しい頑張り屋です」


 あー、たしかに。

 それは間違いない。


「夫人、あなたのおかげでカリウスの幸せそうな顔が見れたよ。ありがとう」

「いえ、妻ですので」


 ……やっぱり、奥方も独特だな。

 まぁ、カリウスも相当な変わり者だし、変わり者同士、うまくいくのかもしれないな。

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