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【連載版】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売


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「お前を愛することはない」と言われたけれど、ドレスをオーダーメイドすることになりました④


「何するんですか!」

「……コレッティーナは俺のむす……妻だ! くっつくなら俺だろう!」

「え、嫌ですけど」


 いきなり、何を言ってるの?

 雇用主に抱きつく従業員なんて、いたらマズイって。

 それに私はアンネがいい。


「離してください」

「断る。席につけ」


 ……席? あ、そういうことか。

 くっつくの意味を間違えた。ギューじゃなかった。


「分かりました。こういうことですね」


 旦那様の手を引いて、椅子に座ってもらう。


「ちょっとつめてください」


 おしりでギュッと旦那様を押して、一つの席に二人で座る。

 半分しかおしりが乗ってないけど、二人で座れないこともない。

 この部屋の椅子は六つ。

 けれど、マダムとお姉さん二人、私と旦那様、アンネ、護衛騎士のマルモ、全員で七人いる。

 つまり──。


「これで全員座れますね!」


 みんなで座るための話だったのだ。


「ナビレート夫人、伯爵はそのような意味でおっしゃったのではなく──」

「そうだな。だが、これだとコレッティーナが椅子から落ちる。俺の上に座ればいい」


 そう言いつつ、旦那様のお膝の上に乗せられる。


「……旦那様のお膝にクッション()いてもいいですか?」


 固くて、座りにくい。


「我慢しろ」

「えー」


 って、何だろう。

 マダムがにやにやしてる。


「まぁ! 伯爵は夫人を愛していらっしゃるのですね? いいですわ。あまいですわぁ!」

「……そうだな。可愛がっている」


 ん? 可愛がって……は、もらってるか。

 労働対価として、ごはんとお菓子くれるし、対価の負債を急かさずに待ってくれてる。

 何より、必要経費でたくさん食べさせてくれたもんね!


「はい! 旦那様は(雇用主として)私を可愛がってくれています! って、そんなことよりデザイン使用料ですよ。アンネとマルモも座ってください」


 アンネはすぐに席へと着く。けれど、マルモは首を横に振った。


「自分は護衛ですので──」

「マルモ、座れ」

「しかし、いざという時──」

「お前の実力なら、問題ない。座れ」


 旦那様の低い声に、振り返れば微笑まれる。


「どうした?」

「マルモは味方なので、お前は駄目です。あと、怒るのよくないですよ」

「コレッティーナは優しいな」

「そういう話じゃないです」


 旦那様は良い雇用主だけど、時々横柄なんだよね。

 パワハラ系上司ってやつだろうか。

 そんなことしてたら、転職されちゃうよ?



「──では、そういうことでお願いしますわ」

「はい。こちらこそお願いします」


 アンネのおかげで話がまとまり、頭を下げる。


「……あ、このドレスのデザインが私だって、バレますか?」

「ご希望でしたら、秘匿することもできますが、よろしいのですか? 社交界での地位確立に繋がりますわよ?」


 地位……ね。別にそんなものはいらないんだよね。

 バレたら、義母と義妹がうるさそうな方が面倒だし。

 義妹の考えたデザインを盗んだとか言われそうだもんなぁ。


「秘密でお願いします。……あと、私のデザインしたドレス、ラビソン伯爵家には売らないでほしいです」

「……承知いたしました。ラビソン伯爵家と縁のある家門にはナビレート伯爵家を除き、一切お売りしないことを約束いたしますわ」


 にっこりと美しく微笑みながら、マダムは言う。


「そんなことして、大丈夫ですか?」

「問題ございませんわ。その代わり、王妃にはナビレート夫人が社交界でこのドレスを着られた後、すぐに作ってもよろしいかしら?」

「王妃様……ですか?」

「えぇ、古くからの友人ですの」


 え!? 貴族令嬢だったとは聞いたけど、マダムってかなりの大物だったなんじゃ……。


「それに王妃が着れば、売れますわよ?」

「是非、お願いします!」


 かなりの収入が期待できそうだ。

 この費用を使って、食糧庫をいっぱいにしたら、保存食の研究をしよう。

 それから、和食を探すんだ!


「ですので、もし新たなデザインを思いついた際は、是非当店でよろしくお願いいたしますわ」

「あ、じゃあ、お茶会のドレスなんですけど……」


 なんて、はじめたのがいけなかったのだ。


「屋台、売ってないです……」


 ブティックから出たら、既に日は沈み、私の心を躍らせた屋台がすべて店じまいしている。


「甘いもの……」


 じわりと涙で視界が滲む。


「ワイルドお肉、もう一回食べたかったのに……」


 次の市場調査がいつかは分からない。

 もしかしたら、もうしないかもしれない。

 それなのに……。


「また来よう」

「またって、いつですか?」

「そうだな……明日は王城に呼ばれてて、明後日は議会があるだろ。明々後日は……」


 やっぱり無理なんだ……。

 グッと歯の奥を噛み締める。


「ら、来月じゃ駄目か? それまでは、屋敷でバーベキューしよう? ワイルドお肉、自分で焼いてみたくないか?」

「……自分で?」

「そうだ。自分で焼けば、屋敷にある調味料で色々な味を試せるぞ」

「色々な味……」


 それって、すっごく……。


「最高です‼」

「だろ⁉ な、そうしよう。そうと決まったら、お土産買いに行くぞ。そのあとディナーだ」

「ディナーですか?」

「あぁ、予約してある」


 え、予約?

 それって、美味しいお店確約だよね⁉


「必要経費ですか?」

「そうだ」

「やったー! 楽しみです!」


 どんなお料理だろう。

 いーっぱい食べようっと!



 

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