日常
「白井……お前はこの記事でウチの雑誌を買う奴が増えると思ってんのか?」
「……はい」
「お前は!これのどこに人を惹き付ける魅力があるってんだ!えぇ?!企画案だって金が掛かってる!タダじゃあ無いんだ!!自分の趣味でやりたい事なら勝手に一人でやってろ!会社の金を使うんじゃあない!!」
「しかしこの記事は今の中高生にマッチしている…」
「黙っていろ!お前は戻って芸能人のネタでも探していろ!!」
「……失礼、しました」
部長であり総括の人物に頭を下げ、自席に戻る
また案は通らず、記事は作れず、重たい雰囲気だけを作って戻っていく。
部署のメンバーから白く冷たい視線が、先程まで叱責を浴びていた者、白井 胡瓜の背中に刺さる。
何か、面白い話でも空から振ってこないかな。
そんな事を考えながら、席に戻って、処理能力の低い、私にお似合いのパソコンを打つ。
それが私の日常のはずだった。
叱責で冷めてしまったぬるいコーヒーを口に含もうとしたその時。
ドゴオオオオオオン!
何かが崩れて、音と地響きが起こった。
(近くで工事でもしてるのだろうか……)
そう思い、そのままコーヒーを喉に流し込む
苦みなのかカフェインなのかはわからないが、少し脳が覚醒した様に感じた。
(…っ違う!工事ではここまで響いたりはしない!)
全身に緊張が走る。
しかし、私だってゴシップ記者、願い叶って、空から面白い話が振ってきたのだ。
(これはチャンスだ、まだ誰も気が付いていない様だし、ここからのしあがって……)
何か、不自然だ。
ここまで大きな音がして、同僚達が声も上げないことに違和感を感じる。私よりも優秀な記者だ。こういう事には、鋭く噛みついてくる筈だと。
また先程とは違う大きな緊張が走る。
危険信号に近い緊張だ。脳が動くな、見るな、静かにしてろ、と言わんばかりにサイレンを鳴らしてくる。
しかし、私はゆっくりと体を立ち上がらせて、同僚の居る席を確認した。
「誰も……居ない……?」
そこに居る筈の同僚達が一人残らず、消えていた。
この日から、幸か不幸か私の日常は大きく姿を変えていった。




