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妖の料理番 〜いただきますで始まり、ごちそうさまで終わる、妖たちの食卓譚~  作者: 奇理可羅
東の国編

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プロローグ

「ふう……ようやく終わったな」


 最後のテーブルを拭き終え、俺は小さく息を吐いた。


 ここは、地方の片隅にある昔ながらの定食屋――『葉山』。

 そして同時に、俺の家でもある。


 だが、もうこの店に親父の姿はない。


「まさか……こんな形で店を継ぐことになるとはな」


 俺の名前は葉山栄太。


 料理の修行で都会に上京していたが、実家の父の訃報を受け、5年間勤めていたレストランを辞め、実家である定食屋「葉山」に戻ってきた。


 葬式を終え、主のいなくなった店を見渡す。


 母は俺が幼い頃に他界している。

 親戚付き合いも薄い。


「俺が継がなくて、誰が継ぐんだってな」


 親父の味は覚えている。

 子供の頃から食べ続けてきた味だ。

 仕込みの手順だって、横で何度も見てきた。


 それに――俺自身も、この5年で料理の腕を磨いてきた。

 料理の腕もレストランで磨いてきた……5年間だけど。

 跡継ぎの為の結婚相手や彼女は……いない。忙しいを言い訳にしてきた。


「まあ、やるしかないよな……」


 明日は食材の仕入れ。

 その後は近所への挨拶回り。


 再開準備で忙しくなるだろう。


 そんなことを考えていた、その時だった。


 店の外が突然、昼間のように明るく照らされる。


「……ん?」


 窓の外を見る。


 まぶしいヘッドライト。

 異様なエンジン音。


 次の瞬間――


 ドゴォォォォンッ!!


「――は?」


 轟音と共に、大型トラックが店の壁を突き破った。


 木材が砕け散り、ガラス片が宙を舞う。


 避ける暇などなかった。


 衝撃。


 浮遊感。


 そして、全身を襲う激痛。


「が……っ……」


 視界が赤く染まり、意識が急速に遠のいていく。


 ――その後。


 地方ニュースでは、居眠り運転の大型トラックが定食屋に突っ込んだ事故として報道されたらしい。


 だが――


 葉山栄太が、そのニュースを見ることは二度となかった。

なるべく早めの投稿を心がけます。

誤字脱字等ございましたら、ぜひとも教えてください。

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