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処刑寸前の悪役令嬢ですが、中身が不思議ちゃんオタクなので推しを幸せにすることにしました  作者: 花の香り


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5/5

記憶喪失とビスケットの誘惑

「お名前、分かりますか?」

目を覚まして最初にされた質問が、それだった。


優しく、けれど探るように問いかけてくる。

 何となくわかった彼は医師のモンドルさん

やはりここはアニメの世界なのだ。


 ……名前。ここで本名の「幸優」なんて言ったら、即座に不審者として牢屋に逆戻りだ。

「……フェリシア、です」

「では、なぜ先ほどあんな驚いた声を出したのだ!」

 食い気味に突っ込んできたのは、金髪の少年。ディラン様だ。アニメの第2王子。

 本物は、画面で見るよりずっと生意気そうで、そして――顔が良い。

「……何となく、です」

「はぁ?」

 嘘は言ってない。状況が理解できていないし、何より頭が追いつかないんだから。

「……記憶喪失」

 モンドルさんがボソッと呟いた。

「記憶喪失? 処刑が嫌すぎて、演技をしているのではないのか?」

「ディラン、言い過ぎだ。……話を止めてすまない、先生」

 ベネディクト様がディランを制する。そのやり取りを横目に、私は心の中でツッコミを入れる。

(記憶喪失っていうか、中身が入れ替わってるんですけどね!? ……でも、今はその設定に乗っかっておこう。その方が都合がいいし)

「驚かせてすまない。覚えていることについて教えてほしい」

 ベネディクト様の真摯な瞳に見つめられ、私はしどろもどろに答える。

「……先日、牢獄にいた時のことは、うっすら覚えています。あとは所々で……今は整理がつかなくて、申し訳ございません。……あ、それと先ほどは!」

 私はモンドルさんに向き直り、深く頭を下げた。

「報告しないと罰せられることを知らず、止めてしまいすみませんでした、先生!」

 先生、と呼ばれたモンドルさんは、一瞬きょとんとしてから、ふっと表情を和らげた。

「先生ではないよ。ベネディクト様がそう呼んでいるだけだ。私のことはモンドルと呼びなさい」

「分かりました! モンドル様!」

「様はいらないですよ(笑)」

「あ、すみません(笑)」

 和やかな空気が流れる中、ディラン様だけが面白くなさそうに、無言で部屋を出て行った。

 ベネディクト様がその背中を見送ったあと、モンドルさんに視線を送る。

「……すまない、二人にしてほしい」

 モンドルさんが退出し、部屋には私とベネディクト様の二人きり。

(気まずい! 目の前に推しの第1王子がいるなんて、心臓が持たないですよぉ……!)

 椅子を引き、私の近くに座ったベネディクト様が口を開く。

「……私との関係は、知っているのか?」

「はい!」

(あっ、しまった! オタクの反射で元気よく答えちゃった!)

「……あはは! あはははは!」

 突然、ベネディクト様がお腹を抱えて笑い出した。

 冷徹な王子様の、予想外の爆笑。

「……大、丈夫ですか!?」

「すまない、君の反応が予想外すぎてな」

「……バカにしてませんか?

ある程度は把握しているつもりですが、分からないところがあるのは事実です」

「そうだな、申し訳ないことをした」

(バカにはしてたのかよ…はぁ)

「それよりベネディクト様、お腹空いてませんか?」

「……何かくれるのか?」

「あいにく今は持ってません。お腹が空いたので、何か持ってたりしないかなぁと思いまして……」

 恥を忍んで聞いてみると、彼は少し驚いた顔をして、ポケットから何かを取り出した。

「……小腹用に入れていたビスケットならあるが。食べたいのか?」

(ビス、ケット……! 食べたい、猛烈に食べたい! ……でも、ダメだ。本来のフェリシア様は、毒を警戒して他人の食べ物なんて口にしなかったはず。ここでガッついて地獄を見るわけにはいかない……!)

 私は、震える心で首を横に振った。

「ベネディクト様、大丈夫です。ご自身用のものでしたら、お気になさらず。少し……少し、空いていただけですから……っ」

「……そうか。私もおかしなことを言ってすまなかった。この後予定があるから、失礼させてもらうよ」

「……そうですか。……はい」

 去り際、ベネディクト様が足を止め、不思議そうに私を振り返る。

「……大丈夫か?」

「大丈夫です! 何か?」

「いや……悲しそうな表情をしていたと思ったが。気のせいか。疲れているのだろう、ではまた来る」

「はい、お気をつけて……」

 ドアが閉まる音がした瞬間、私はベッドの上でのたうち回った。

(クッキー食べたかったぁぁぁ! ビスケット食べたかったよぉぉぉ!! これをずっと続けるの!? いやだぁぁー!)

 静かな医務室に、私の心の叫びだけが虚しく響く。

「……誰か、私に糖分をぉぉ……っ

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