繋がる真実と広がる疑念
メイド長についていく。
仕事で使っていた部屋とは別の方向へ歩いていくのが気になった。
「働かないのですか?」
思わず聞くと、メイド長は振り返らずに答えた。
「先に状況を聞く。中に入れ」
促されて部屋に入る。
綺麗に整頓された空間。
一目で、持ち主の性格が分かる。
「私の部屋だ。好きにくつろぐといい」
やっぱり、メイド長の部屋だった。
私はソファに座る。
向かいに座ったメイド長が、にこりと笑った。
「さて――休んでいた理由、詳しく聞こうじゃないの」
「言っていた通り、足を踏み外して転んだだけです」
「でも、上階に行く理由はなかったはずよね?」
「それは……お手伝いで……」
「どこの?」
「えっと……」
矢継ぎ早の質問に、言葉が詰まる。
「もういいわ。白状しなさい」
メイド長は楽しそうに笑う。
「ある程度、分かってるのよ。あなたが“何か”したことは」
「……はい。私が関わっています」
「どうするつもり?」
「濡れ衣です!私は助けようとしただけです!」
「ええ、そうでしょうね」
「……え?」
「だって、私が“姫様を落としたメイドを雇った”ことになるもの。そんなの困るでしょ?」
にっこりと笑うメイド長。
「事件は、当然解決してもらうわよ」
「……はい。頑張ります」
⸻
その後、休んでいた間の状況を聞かされた。
城の警備は強化。
メイドへの監視も厳しくなっている。
リーゼ様への接触も制限。
――思っていた以上に、影響は大きかった。
「まずは溜まっている仕事を片付けなさい」
「はい!」
⸻
急いで着替え、洗濯場へ向かう。
目に入ったのは、山のような洗濯物。
重いカゴを持ち上げたその時。
「あの!」
振り返ると――あの二人だった。
「その……ごめんなさい!」
「ごめんなさい!」
「え?」
突然の謝罪に戸惑う。
「私たちが……」
「私が説明するわ」
後ろから声がした。
「エミ先輩」
「この子たちね、あなたが来なくなったあと心配してたのよ。結果的に怪我したでしょ?だから責任感じてるの」
……そんな風に思ってたんだ。
「別にいいですよ?」
「「え?」」
二人が同時に固まる。
「気にしてないですし」
「でも……」
「話してる暇ないわよ」
エミ先輩がぴしゃりと言う。
「働かないと昼食抜きにするわよ?」
「それはダメです!」
私は思わず声を上げた。
「もう許しましたから!働きましょう!」
――昼ごはんのために。
⸻
食堂。
やっぱり、料理の差はある。
私は一人で席につく。
「いただきます」
「正面、いいかしら?」
顔を上げると、あの二人だった。
「いいですよ」
二人は座ると、自分の皿を差し出してきた。
「え?」
「怪我してたんでしょ?ちゃんと食べなきゃ」
「ありがとう!」
受け取った料理は、色んな味がして――
なんだか、少し嬉しかった。
⸻
「それより、リーゼ様って知ってる?」
「王女様ですよね?」
「そう。その方にね、誘拐未遂事件があったの」
「……!」
やっぱり、その話。
「それ以来、城は大騒ぎよ」
「リーゼ様は……?」
「部屋にこもってるらしいの。健康的にも良くないのにね」
「そうなんですね……」
「しかも噂があってね」
「噂?」
「犯人、メイド服を着てたらしいのよ」
「へー……」
(それ、私です)
内心でツッコミを入れる。
「だから今、メイドは特に厳しくて」
「そうなんですね」
「それより――この子のお姉様ね」
「え?」
「リーゼ様の専属メイドなの」
「っ……!」
思わずむせる。
「大丈夫?!」
「すみません、驚いて……」
……世界、狭すぎない?
「話戻すけど、部屋から出てこないのよ。困ってるみたい」
「早く解決するといいですね……」
「ええ、本当に」
⸻
午後の仕事は――
正直、全く集中できなかった。
リーゼ様のこと。
そして――
ベネディクト様のこと。
(何も起きなければいいのに……)
そう願うことしか、今の私にはできなかった。




