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処刑寸前の悪役令嬢ですが、中身が不思議ちゃんオタクなので推しを幸せにすることにしました  作者: 花の香り


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1/5

裏設定まで読み込んだ推しアニメの最終回

ただいま。

 今日も疲れたぁ……。

 独り暮らしのアパートに帰るなり、私はコートとバッグを床に投げ出した。

 真っ先にやることは、コンビニ袋から大好きな飴玉を取り出して口に放り込むこと。そして、テレビの電源をポチッと入れる。

 これが私のルーティン。

 甘いお菓子を食べながら、大好きな作品に没頭する。これがないと、明日も頑張るなんて無理です。

「あ、今日は最終回だった……」

 画面に映し出されたのは、今期一番話題のタイトル。

 ――『聖女の陰に隠れた月』。

 最初は、よくある「悪役令嬢と聖女」のお話だと思って見始めた。

 でも、これが驚くほどの地獄設定だったのだ。

 気になりすぎて原作小説を全巻読破したけれど、結末は救いようのないバッドエンド。

 思わず「原作者さん、悪役すぎませんかぁ!?」と叫んでしまったほどだ。

 第1王子は氷のように冷たく、婚約者に心ない言葉を浴びせる。

 第2王子は兄の婚約者を甘い言葉で誘惑し、スパイとして利用する。

 聖女は、婚約者がいる王子に無邪気なふりをして愛を振りまく。

 そして悪役令嬢のフェリシアちゃんは、その渦中で孤独に悪に染まっていく。

 極めつけは、ファン向けに限定発売された『裏設定資料集』だ。

 それを読んで、私はさらに号泣した。

(みんな、本当は愛し合っていたのに。言葉が足りないだけで、どうしてこんなにすれ違っちゃうんですか……!)

 原作者いわく、「一度読み終わってから、裏設定を読んで、もう一度読み直してほしい」とのこと。

 読み返せば、すべての冷たい態度は、不器用すぎる「愛」ゆえの行動だとわかる。

 けれど、作中のキャラクターは誰もそれに気づかないまま、終わりへと向かっていくのだ。

 私はSNSを開き、視聴者の投稿をチェックした。

『このアニメ、恋愛が進まなくてイライラしてたけど、最終回どうなるの?』

『原作勢だけど、心の準備ができてない。きつい』

『みんな裏設定読んでくれ。全員が被害者なんだよ……』

 ファンの叫びを眺めているうちに、放送が始まった。

 開始早々、画面は重苦しい雨が降る処刑場。

 聖女への暗殺未遂という冤罪。

 愛した第2王子ディラン様からの、冷酷な「知らない女だ」という切り捨て。

 そして地下牢に現れた、第1王子ベネディクト様の、あまりに悲しい瞳。

「うう、辛すぎます……。お願い、みんな打ち明けて! 本当の気持ちを言ってぇ……!」

 けれど、アニメは無情にも原作通りに進んでいく。

 フェリシアちゃんは、誰にも愛されていないと絶望したまま、処刑を待たずに自ら命を絶つ道を選ぼうとしていた。

 私はお菓子を食べる手も止めて、テレビにかじりついた。

「フェリシアちゃん……っ。最後まで周りのことを考えて一人で抱えちゃうなんて。もう悲しすぎます。私がフェリシアちゃんだったら、絶対にみんなをお説教して、幸せにしてあげるのにぃ!」

 テレビの中の彼女に向けて、本気で叫んだ。

 フェリシアちゃんのために、私が生きてあげたい。

 その瞬間だった。

 ――ピカァッ!!

「えっ、何!? 目が、目がぁ! 眩しいじゃないですかぁー!」

 テレビの画面から、視界を焼き尽くすほどの白い光が溢れ出す。

 叫び声は、激しい耳鳴りに飲み込まれていった。

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