特別編(前編):「逃げないで」—大邱の再会と決意—
■Scene1:大邱の空気に包まれて
韓国・大邱。
空はよく晴れ、通りには週末の観光客がちらほら。凛奈はカジュアルなシャツに身を包み、スタッフと共に中央路の街並みを歩いていた。
キム・ユリ(電話越し):「凛奈さん、今日の午後3時、地元局との打ち合わせはキャンセルで大丈夫です。今は休暇に専念を」
凛奈:「ありがとう、ユリ」
凛奈の顔には、ほんの少しの緩みが見えた。
ソン・ミンジュ:「この辺りに、凛奈さんが好きそうなタッカルビの名店がありますよ。あとでご案内しますね」
ハン・ジフンは辺りに警戒を向けながらも、凛奈の少し楽しげな表情を見て安堵していた。
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■Scene2:目が合った、過去の影
東城路の横丁に差し掛かったとき――
ふいに、向かいのベンチに座っていた男が凛奈の視線と交錯した。
男の顔がこわばる。
まさしく、あの男だった。
凛奈(心の声):「イスタンブールで、私の名前を聞いて逃げた……あの男……」
男は立ち上がりかけたが、ふと動きを止める。逃げない。凛奈が歩み寄る。
凛奈:「……逃げないのね」
男(かすれた声で):「もう……逃げるのに疲れたんです」
凛奈は静かに頷き、言葉を選ぶ。
凛奈:「じゃあ今日は、あなたが“逃げなかった記念日”。一緒に大邱を歩きましょう」
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■Scene3:観光地という名の“静寂”
凛奈は男を連れて、大邱の定番スポット・薬令市韓方文化館へ。
セヨン:「漢方とキムチって、意外と通じるものがあるんですよね〜。発酵、歴史、匂い……」
男は凛奈の少し後ろを歩きながら、ときおり空を見上げる。
薬膳茶を手にした彼はぽつりと言う。
男:「……イスタンブールで、逃げたあの日。あなたが立ってたのが、怖かった。でも今は……少し安心するんです」
凛奈:「過去は戻せない。でも、向き合うことはできる」
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■Scene4:地元の味が、心をほぐす
夜。凛奈たちは、大邱の有名な実在料理店「새마을식당(セマウル食堂)」へ。
鉄板の上でじゅうじゅうと焼かれるプルコギ。
香りが食欲を誘う。
男:「……実は、昔ここの味が好きでした。社会から逃げる前は、家族とよく来てたんです」
凛奈:「……今日も逃げずに、この席に座ってる。十分、意味のあることよ」
ソン・ミンジュがさっと追加注文した**ナクチポックム(辛いたこ炒め)**が届き、凛奈と男は笑いながら箸を伸ばす。
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■Scene5:夜の散歩、静かな約束
帰り道、大邱タワーのライトが夜空を照らす。
凛奈:「今日のこと、記録には残さない。だけど、記憶には残すわ」
男:「……ありがとう」
凛奈:「またいつか、今度は“堂々と”会いましょう」
彼は深く頷き、道の向こうへと去っていった。
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■Scene6:静かな夜、再び探偵に戻る前に
事務所へ戻った凛奈は、ソファに身を沈めた。
キム・ユリ:「今日は……いい日だったようですね」
凛奈:「ええ。“諦めた”って言葉には、逃げじゃなくて受け入れがあるのかもしれない」
夜のソウルの空。
凛奈は、次の旅に向けて心を整えていた。
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