第197話:味の記憶と、焼けた真実
■Scene1:広島駅、懐かしき人の影
山口県での事件を終えた翌日、凛奈は広島駅に降り立った。
朝の改札を抜けると、微かに潮の香りが鼻をくすぐる。
凛奈(心の声):
「広島……以前、旅番組で来た時より、ずっと賑やかになってる。
でも、この空気の中に、“懐かしさ”を感じるのは、なぜだろう……」
駅の構内でふと目にしたポスター。そこにはこう書かれていた。
《あの“味”を、あなたはまだ覚えていますか?》
一瞬、胸がざわついた。
そして次の瞬間――「凛奈……?」
振り返ると、そこには10年前、韓国で共演した女優――
((当時29歳現在38歳の)川辺 美幸の姿があった。)
■Scene2:再会の昼食、お好み焼きの記憶
美幸とともに訪れたのは、お好み焼きの老舗「みっちゃん総本店」。
鉄板で焼かれるソースの香り、パリパリに焼かれたそば、卵の甘み……それは10年前の、あの懐かしい味と同じだった。
美幸:「……あの時、凛奈が撮影の合間に泣きながらこれ食べてたの、覚えてる」
凛奈:「……あの味だけが、私の心を救ってくれたの。
今思えば、それだけ“無力”だった」
美幸はふっと笑い、真剣な目を向ける。
美幸:「その味を、誰かの“記憶”に変えてくれる存在になってる。
あの頃の凛奈が、いまの“探偵・女優”凛奈になったんだね」
■Scene3:宮島の午後、事件の火種
昼食後、2人は宮島(厳島神社)へ渡った。
その帰り――観光客でにぎわう表参道商店街の一角で、火災報知器の音が鳴り響いた。
店員:「倉庫の裏で煙が……! 火が出てます!!」
すぐに鎮火されたものの、警察の現場検証では放火の可能性があるという。
凛奈:「意図的な引火装置……。でも動機が見えない。美幸、少し“あの店”の裏口、覚えてない?」
美幸:「ええ、たしか……キムチ専門店があったわ。
昨日買ったばかりの“瀬戸内レモンキムチ”があって……」
■Scene4:味から読み解く“過去の怒り”
凛奈は件のキムチのふたを開け、口に運んだ。
(酸味の奥に、“レモンの渋味”と、若干の焦げ香……?)
その瞬間、意識が霞んでいく――
映ったのは、火を放った男性と、ある言葉。
男:「この街が、彼女を奪った。あの味が、心を壊した。
……だから、消すしかなかったんだ」
彼は、3年前に広島で芸能界を引退した舞台照明スタッフの弟。
姉がキムチ店を継ぐはずだったが、突然芸能の仕事を選び、
重圧から心を病み、他界していたのだった。
弟は、そのキムチの“香り”と“味”に、姉の記憶を重ね、
耐えきれず――復讐のように火を放っていた。
■Scene5:告白と和解、再びの夜景
警察に引き渡されたあと、男は静かに言った。
「あの味が、姉の“最期”の顔と重なってしまったんです。
怖くて、どうにかしたくて……でも、後悔しています」
■Scene6:ホテルの窓から、静かな灯り
夜、広島市内のホテルグランヴィア広島。
窓の外には市街の夜景が広がっていた。
美幸:「……また、一緒に作品やれたらいいな」
凛奈:「その時は、今度は“助けられる側”でもいいかも」
ふたりは笑い合い、夜が静かに過ぎていった。
凛奈(心の声):
『味は記憶を刺激し、香りは心を揺らす。
その揺らぎの中に、私は“真実”を見つける』
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