表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
209/255

第171話:迷宮の扉、東京の朝に


■Scene1:羽田空港、東京の匂い


飛行機の扉が開いた瞬間、

凛奈の鼻に飛び込んできたのは、東京の湿ったビル風と排気の匂いだった。


(空気が違う……“忙しさ”の匂いがする)


スーツケースを引きながら、凛奈はスマホを確認。

数日前に届いた、都内からの依頼メッセージが表示されていた。


《港区・三田にて、不審な記憶障害事件が複数発生。

香りと記憶の関係に関心を持ち、ご連絡しました》



■Scene2:三田の依頼者と“記憶”の相談


凛奈は、都営浅草線「三田駅」近くのオフィスビルへ。


出迎えたのは依頼人――40代の女性研究者・広瀬 志乃しの


「2週間前から、同じ通りにある3軒のビルで、

全く面識のない人たちが“数時間だけ”記憶を失う事例が連続して起きていて……」


彼女は凛奈に、事件現場近くで発見された“ある瓶”を差し出す。


「これ、中身は空でした。でも……キムチの匂いが微かに残っていて」


凛奈:「……これは、“保護型の発酵香”に似てる。

心のストレスから一時的に記憶を遮断するような、そういう香り」



■Scene3:昼の休憩、味から読み取る“記憶の遮断”


凛奈は現場近くの韓国料理店に入り、注文したのは――


**「自家製ゆず白菜キムチ」**と「アミの塩辛のチヂミ」


食事を始めると、ふと、キムチのひとくちが口内で広がる。


シャキシャキとした食感の中に、ゆずの爽やかさが一瞬弾け、

その直後に“唐辛子の痺れ”ではなく、“舌の中央が麻痺するような沈黙”が訪れる。


凛奈:「……この味、香りで記憶を落とさせてるんじゃなくて……

“味覚で記憶をそらしている”?」


キムチの余韻は、記憶を整理するはずの“香りの終点”を、曖昧にしていた。

まるで、“思い出すことをやめさせる”ために作られたかのように。


凛奈は、紙ナプキンに小さく記す。


『この味は、“迷宮”の入口。目的は記憶の中断。犯人は、優しさに偽装された沈黙を使っている』



■Scene4:通風口の謎と、不審な香り


凛奈は現場へ戻り、

あるビルの通風口の吸気口に微かな“ゆずと生姜”の成分を検出。


凛奈:「イカ塩辛とゆずキムチ……まさか、“香りで記憶を管理する装置”?」


そこへ、管理会社の男性が通りかかる。


「ここ、一度“異臭騒ぎ”で専門業者が入ったことがあって……

結果は“発酵調味料の自然な香り”で処理されたけど」


凛奈:(いや……この香り、“偶然”じゃない)



■Scene5:記憶喪失者との面会


凛奈は、今回の記憶障害者の1人――

編集者・田口 晴人に面会。


田口:「記憶がないのに、怖くなかったんです。

逆に、“ほっとしてる自分”がいた。……不思議ですよね」


凛奈:(……“思い出さないほうが楽”な記憶。

それに寄り添うようなキムチ。だけど、それが果たして正しいのか)



■Scene6:夜の屋台、心を決める一杯


凛奈は浜松町の屋台で、「東京風・小松菜キムチ」と「あさりキムチ」を肴にしていた。


味は穏やかで、だがその分、“真実”の一欠片を物足りなく感じる。


『これは、嘘をついていないけど……真実も語らない味』


凛奈:「このキムチ、誰かの記憶から“怒り”や“悲しみ”を抜いてる。

でも、同時に“大事な何か”も一緒に消してる……」


目を閉じたその瞳に、決意が灯る。


『香りも、味も、“記憶の鍵”になる。

だから私は、迷宮の中へ進む。キムチを手にして』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ