表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/44

31着目

 まあ、実を言えば引っ掛け ブラフでしか無い、確信の無い問いではあった。とはいえ。とはいえだ、確信があるわけじゃ無いけど、なんとなくというほど曖昧な話でも無い。

 この剣がどういうものだかは知らないけど、見える以上のことがわかるというのは異常なことだと思う。

 いや、剣なのに見えているというのがまず異常だということはとりあえず忘れて、だけど。


『ええとな、なんのこと言ってんのかちょっと……』

「今あんた、私に大まかな方向だけだけど教えたのよ?」

『うぐぅ……』


 それはつまり、わかるだけの理由があるということになる。

 もともと目がすごく良くて完全に追えているとか、この森全体がこれの領域だとか、精霊の声が聞こえているとか、動物や木の声が聞こえているとか、可能性はいろいろあるけれど、一番妥当なのはこの剣が彼女になんらかの『印』をつけたってところだろうと思う。その上で、その方法やそれ自体がどんなものかはひとまず置いておいて、その印を付ける行為と彼女がいなくなったことに関連性が有ると判断するのは、決して不自然な思考じゃ無いんじゃ無いだろうか?

 つまり、こいつが彼女に何かをしたから彼女は走り去り、同時にその何かの力で彼女の位置を探れている、というのが私の予想なのである。


「っていうか私じゃなくてもそう思うと思うけど」

『ん? 何言ってんだ?』

「……あんた私の独り言に反応してる暇あると思ってんの?」

『そりゃねーだろ!? 勝手にお前が喋ってんのに!!』

「良いからあんたはキリキリ私の質問に答えんのよ」


 さっきの脅しの意味がわかんないわけじゃ無いでしょ?


『うぬぬ……そのな? あのな?』

「なに?」

『いや、最初あっちの嬢ちゃんが俺を拾ってさ』

「……」


 あの子が最初にこれを拾った……? 私が見つけた時、これは土の下に埋まっていたはずだ。つまり、一度掘り出したにもかかわらずそれに気づかなかった私は他の土と一緒にまとめて外に放り出し、彼女がこれを拾い上げ、手放し、そしてなんらかの理由でその場を離れた……そういう動きがあったのに気づかず掘り続けて、上から土をかけて埋めてしまったことになる。

 そんなに気をぬいていたわけじゃ無いけど、もしかしたら掘り返した土とか結構かかってたんじゃ無いだろうか? 距離と位置的に考えて、そう言った何でもかんでもに私は全く気が付かなかったことになる。


『それで、そのな、俺、喋れるだけじゃなくて特別な力があるんだよ』

「……それって、私が今元気に動けてるのと関係ある?」

『ある。俺の力は《覚醒》だ。所有者の持つ眠れる資質を引き出すのがその本質だけど、意識やなんかを強制的に目覚めさせる力もある』

「意識やなんかを目覚めさせる……曖昧だけど、何が起こったかはわかる気がするわ」

『ああ、あの嬢ちゃんは俺を拾い上げて『目が覚めた』みたいだったよ』


 辛いことがあって精神的に引きこもってる状態を『目がさめる』ことで解消できるのかどうかは知らないけれど、とりあえず剣を拾った彼女にそういうことがあったのは確かなんだろう。その結果彼女は家族の死とかそういういろんなことから目を逸らし続けていた状態を維持できなくなった、と。

 ……うん、まあ必ずしもこの剣の機能を元来の《覚醒》の意味で捉えなくても良いだろう。私自身の状態を鑑みるに、今意識がはっきりしていることはそうだとしても、疲れ切っているはずなのにこうして動けることはその言葉には当てはまらない。そして、あるいはそれが『眠れる素質』というものなら、あの子が正気を取り戻したのも『眠れる資質』というやつなのだと思ってしまえばいい。


「要するに、全部あんたのせいってことね」


 まあ、そこには私の不注意が確かに存在しているのだけど、それは置いておいてね。


『け、けど、俺のおかげでどこにいるかはバッチリ分かるんだぞ!』

「ばっちり?」

『おう、あの嬢ちゃんが俺の柄の宝石 いしを一個持ってったからな』

「なんで?」

『うーんとな、お前が掘り起こした時、俺から一個外れたんだよ。それが転がってたのを嬢ちゃんが拾ったんだ』

「えーと、うん? それがあんたにあの子の居場所を教えてるってこと?」

『そうそう』

「じゃあそっちに喋らせてあの子の足止めなよ」

『無理無理、俺だって生きてるからな。バラバラにされたりしたら当然性能は下がるんだ。あれだけじゃ喋れないよ』

「ふーん?」


 ふーん、生きてるからってのはよくわからないけど、そんなものなのか。でも、《覚醒》させるだけの力はちゃんとあるんだよね? 私の意識をはっきりさせるより、あの子を正気に戻す方がよっぽど力がいるような気がするんだけど……まあ、こいつの細かい仕組みとか考えてもしょうがないか。どっちかっていうとどうでも良いし。


「まあ、使えないとは言わないであげる」

『言ってる! 言ってるぞ!』

「うるさいな。良いから誘導だけしてれば良いのよ。こっちであってるの?」

『あってるけどさ』


 さて、そろそろ最初の距離が詰まった頃だけど……

いつも読んでくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ