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 どこからともなく聞こえた声、驚愕する間もなく全身によくわからない感触が走る。

 あえて言うなら何かに叩かれた感触が骨に響いてしびれる感触に似ている。それが一瞬で全身を駆け抜けた。だけど痛いとか苦しいとかって感じじゃない。むしろ……どちらかといえば活力が湧いてくる。感覚的には目が覚めたみたいにすっきりしている。

 変な感じ。

 だけど、不快じゃない。

 ……なんて浸ってる場合じゃないわね。慌てて身を起こして周りを見渡してみる。今私の身に何が起こったのかはわからないけれど、何かが起こったのは確かだ。そしてそれは『何者か』に寄って引き起こされた。だとしたら、少女が行方不明なのもその何者かによるものだと判断するのが妥当じゃないだろうか?

 足を持ち上げ、一気に振り下ろして勢いで立ち上がる。うん、全身にぴんと力が入る。これなら何があっても対応できそうだ。


「誰!? どこにいるの!」


 ……声を張り上げて周囲を見回してみる。けれど返事はない。

 おかしい。声をかけてきたのは向こうなのに、こちらから声をかけると返事がない……そんな馬鹿な話があるだろうか? あるんだとしたら、それなりの理由があるはずだ。例えばあの言葉しか喋れないとか? いや、それならそもそもしゃべりかける理由がない。じゃあ、一言一言喋るのにすごく時間がかかるとか……


「……まさか」


 私の下敷きになった痛みで、息も絶え絶えに声を発したのだとしたら? 私今思いっきり体重と勢いをつけて立ち上がった。そのときかかる力を全部肺か何かで受け止めたとしたら、お腹の中身が潰れて見るも無残な有様に……?


「うわあ!?」


 思わず跳びのき、そして振り向く。

 しかしそこには何もない。何者の姿もない。

 少なくとも声を発しそうに見えるものはない。ほっと息を吐く。どうやら私の思い過ごしだったみたいだ。では、あの声はなんだったんだろうか? さすがに私が掘り返した土で生き埋めになるなんて馬鹿な話があるわけもなし……でも手がかりないし、いっそ掘り起こしてみようか?

 改めて周囲を見回して、やはり何もない。こうなったら思いついたところから片付けていこう。

 さっきまで私が倒れていた場所、背中の跡が残っている場所を軽く手で撫でてみる。ん? なんだろう、一箇所だけ硬いものの気配がある。もしかしてここに何かが埋まってるとか?

 ぐっと力を入れてみると、さっき落下した衝撃でも思ったほどかためられていなかったようで……というか、やっぱり私が思ったほど衝撃がなかったってことかな? あっさり手が土の中に潜り込んだ。触れたのは、何か細くて薄くて丸くて硬いもの。感触は冷たくてすべすべしている。金属の塊と見た。そしておそらく……おそらくこれは剣の柄だ。

 だとすれば、土を掘り返したときに一緒に積んだのではなく、少女をかどわかした何者かの落し物、か?

 さっき声だと思ったのは、これの存在を感知した私の本能の訴えだとか……そういうことはあるだろうか? そうならば、その形を見ればもっとはっきりわかるかもしれない。

 引き抜く。

 案の定、それは短剣だった。いや、短剣にしては少し柄が長い。あまり大きい手だとは思わないが、それでも拳二個分の長さがあり、端に飾りのような、スプーンのような凹みがある。反対側には輝く石があるから、多分こちらのものはどこかで落ちたのだろう。つまり壊れた剣を短剣に改造したもの、あるいは半ばで折れた剣を短剣として磨き直したものといったところか。柄はおそらく革などが巻いてあったのが朽ちたのだろうが、今は地の金属しかない。総合的に考えて、少女の件とは別だ。普通にずっと埋まってたものを掘り出したときに気づかなかった。それだけのことのらしい。やっぱり手がかりなし。


「はぁ」


 無駄な時間を使っちゃった。これからどうしよう?


——おい——


 とりあえずまだ頭がはっきりしてることには変わりない。この正体不明の幸運を受け入れて先に進むのが吉か。


——おおーい——


 この剣は……売ろう。すごく路銀のた


『ぅおおおおおおおおおおおーいぃ!? ちょっと待て! 話を聞け!』

「!? な、何、この声どこから!?」

『俺、ここ! お前の手の中!』


 私の手の中? 動物でも抱えてるならいざ知らず、私の手の中に喋るようなものなんていないわよ?


『剣だよ! お前の右手の剣! 俺は魔剣なんだ、魔剣サーシス』

「……?」


 変な声は剣が喋っているとか言い出した。試しに周囲を見回してみるけれど、特に言葉を喋りそうなものは見当たらない。誰かがこのお宝を横取りしようと思って適当なことを言ってるのかと思ったけど……そういう気配はないなぁ?


「私の知る限り〝物〟はしゃべらないんだけど?」

『うん? そうか? ドワーフたちがものに命を込める魔法を持ってるし、今ではともかく喋る道具が出てくる昔話は少なくないんじゃないか?』

「まあ、でもそれは昔話でしょうが」

『昔のものが今も残ってる。お前のばあちゃんに子供の頃があったみたいにな。それだけのことさ』

「へぇ?」


 なんか自慢げだけど……だから?

いつも読んでくださってありがとうございます。

ようやくこのキャラが出せた……ストーリー構想時はこいつと主人公の二人三脚が見所だったのに、なんでこんなにかかったんだか。

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