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22着目

いつも読んでくださってありがとうございます。

遅刻して申し訳ありません。

 さーてどこに行くかな……なんて言ったのはいいけれど、正直選択肢は一つだ。

 リザードマンさんが書いてくれた地図の場所に行く。それしか無い。

 なぜなら、私には街で暮らすための基盤が無いからだ。


 そもそも皇都に行く理由は情報を集めるためだった。なんでもいいから衣装 ドレスの材料になるものを探すという不確かな理由が一つと、もう一つ。私でも調達できると思えたものを、どこで手に入れればいいかを確かめるため。

 つまり一つ目は不確かであても無い情報だけど、二つ目は確実で絶対に必要な情報だ。

 だけどリザードマンさんがそれをくれた。だから、皇都に行く理由は半分以下だ。


 ではイドゥシヤンの街はどうだろうか? これはもともと、精霊魔法を使えるハーフエルフが経営してる宿があるという噂があるから、その魔法を習えないか聞きに行くつもりだったのだが。

 リザードマンさん曰く、ハーフエルフだからといってエルフの精霊魔法を使えるかというとそんなことは無い……というかむしろ精霊魔法が使えるハーフエルフの方がずっと少ないらしいので、極めて優秀な魔力を持ったハーフエルフだということになるだろう。その点ではかなり期待は高まりつつあったし、ヒューマンの魔法は多人種の魔法を模倣するだという話も聞けたことで、かなり気持ちは盛り上がっていたのだけど……一週間考えてみた結果、無しになった。

 少なくともそのハーフエルフが魔法を使うことに精通しており、人に教えることができるならそういう噂が立ってしかるべきだろう。もしくはとっくにそこにいられなくなってるにちがい無い。魔法を人に教えることができる人間なのであれば、世間が放っておかないだろうし。教えられないか、教えてくれないかのどちらかだ。

 よって、かのハーフエルフを目指してイドゥシヤンに行くのも無し。


 結果最後に残るのが、地図に示された場所に向かうことだ。

 一見妥協したように見えるかもしれないけれど、それは間違いであり、間違いじゃ無い。そもそも目的にしていた場所にちがい無いという点では間違いなく妥協はしていない。

 だけど、それとは別に先に言った『暮らしの基盤』問題がある。

 ようするに、街に行っても私達は行き場が無いのだ。

 私が金を稼ぐ手段は森に行って使えるものを集めて売るだけだ。それで長く宿を確保できるとは思えない。そして野宿をするなら街より森の方がましなのは、そう考えるまでも無くわかることだと思う。確かに人を食らう獣はいるかもしれないが、そんなものは基本原則を間違えなければ問題無い。積極的に人を襲う獣がたくさんいるような環境であれば、そもそも私が食べるものだって確保できないのだろうから。

 そして、彼女をどうすればいい。自分から動くことをせず、唯々諾々と生きる彼女をどうすればいい。街に宿を取れたとして、彼女をそこに置いていくのか? 金を稼ぐにせよ自分がしたいことにせよ、そうやって彼女を置いていって、それで彼女が治るだろうか? いや、治る以前に人さらいにでも連れて行かれかねないだろう。

 それはだめだ。それじゃだめだ。私はできる限りのことをすると、彼女が生き返るために努力すると決めたのだから。


 ……。


「って、言い訳はしたものの……」


 手を引かれるままについてくる少女の横顔を見ると、自然とため息がこぼれる。私はそんな、この子のために生きてるわけでもなんでも無い。この子の面倒を見ているのは、あくまで私のしたいことの端に引っかかるような場所に彼女がいるからに過ぎないのだ。もし私の目的のために邪魔になったら……もしかしたら私はこの子を見捨てるのかもしれない。

 少なくともあの薬師の庵で、私は一瞬その覚悟をした。

 結局私がこの子の面倒を見るには、私自身のやる気のようなもの モチベーションが保たれないことにはどうしようも無いのだろう。残酷かもしれない。薄情かもしれない。だけど、どうだろう? 何か目的があってそれを仕込むために世話をするのと、ただ別の目的のついでにもならないけどやる気が有り余ってるから世話をするの。彼女自身に対してどちらが幸せだろうか? 誠実なのは目的がある方かもしれないけど、世話をし続ける限りはどっちが幸せってことも無いんじゃ無いかな。

 少なくとも私には、彼女を世話するためのやる気が残るように努力する気はあるんだし。


「さ、今日はもう少し歩くよー! 明日は休むから」


 彼女はやっぱり唯々諾々とついてくるけれど、その足取りは若干重い。疲れが出ているのかもしれない。

 今私たちは二日ごとに一日休んで、罠や弓を駆使し獲物を多めに確保して進んでいる。

 一日目は獲物の重さで私の足が遅くなるし、二日目は疲れでこの子の足が遅くなる。その上いちいち休むのは、目的地が遠くなるようで少し辛い。だけど、もともと一週間の距離だ。その3倍くらいかかったってかまやしない。ちゃんと生きることの方が大事だ。魔力は体力とも関係してるなら、体が強いに越したことは無い。

 怖いのは獲物の匂いで獣が寄ってくることだけど、宿場を出るとき万が一の時に備えて護身用に少しだけ毒を仕入れたし、今度は熊に襲われても大丈夫のはず。ついでにリザードマンさんから熊の知識も仕入れた。まさか玉ねぎの汁で熊を追い払うことができるなんてね……他に準備し忘れたことは……あるかもしれないけれど、ちょっとわからない。


「どれだけかかるかわからないけど、一緒に頑張ろうね」

「……」


 未だ、返事は無い。

もち べい  よん=モチベーション

そんな風に思っていた時期が、私にもありました。というか私にしか無いですよね。そんなの。

ちなみに熊は玉ねぎを食べるとお腹を壊すけど、よっぽど至近距離じゃ無い限り玉ねぎの汁は熊を怒らすだけだそうです。

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