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つまり私はそういうことができるように鍛えられてたってことか。
……まあだからといって自信が湧くわけでも無いのだけど。それでもまああれよ。
「できるならできるわね」
「……」
「どうかしました?」
「い、いや、もう治ったの?」
「まさか。痛みを抑えてるだけです、それでまともに喋れるようになるとは思いませんでしたけど」
「いや、声がかすれるのは喉に傷があるからだ。痛みが無いくらいで声が出るようにはならない……声に魔力が通っているんだ。本当に才能は大したものだな」
声に魔力が通るとどうしてまともに喋れるようになるのかしら。舌に集めるやり方とはまた違う感じだから、私の知っている以上に、魔法を使うわけじゃ無い『魔力を扱う技術』ってたくさんあるのかもしれない。ただし痛みを抑えてるって言っても基本的には我慢してるだけだから、今あまり喋りたく無いのは変わり無いのよね。魔力を作り続けると疲れるし。
それでも滞りなく会話ができるのであれば多少の我慢はやむなしか。
「じゃあ、これで私は彼女を助けられるのかしら」
「恐らくね。それだけの魔力をあの子に注げるのなら、しばらくは飲まず食わずでも持たせられるだろう……ちなみに君、どこまでできるんだい?」
「どこまでって言われても……こんなのとか」
魔力を『しゅうれん』して指先に偏らせて、空に線を引く。舌に偏らせるのは今はやめておきましょう。喉のほうが大事だし……そういえば、村長の言うことを鵜呑みにしてこれで魔法が使えると思ってたけど……今思えばこれも全然関係無い技術の一環だったのかもしれない。いや、でもそもそも村にできる人がいなかったわけだから、教えられたことにも意味が無いのかもしれない。実は村長も意味がわかってなかったけど、私にやる気を出させるために適当なことをいって煽ててただけだとか……
うわ、『こんなのとか』とかいって披露しちゃったけど、もしかしたら別になんでも無いことだったりとかしたりして! 恥ずかしっ!?
「……君、なんというか本当に運が悪いんだな」
「え゛……あ、えっと、なんですか?」
「いや、それだけ出来れば普通に考えて里子の話とか出そうなものだけど」
あ、ちゃんとした魔法使いになるための技なんだ、これ。
それと、そういう話はあった。一度だけだけどあったのよ。そもそも他に弟子がいるから無理って言われたけど……んん? いや、そうじゃ無いのか。これだけできる上で魔法を習いたいというなら、どこかしら経由で紹介状とか書いてもらえたんじゃ無いかって、そういうことを言いたいのかしらね。もしかして。
もし現実的にそういう可能性があったとしたら……まあ村長通さないとか絶対無理だし、普通に握りつぶされたでしょうね。
でも結局なんで村長は私を捕まえておきたかったのかしら。そこがさっぱりわからないわね。
……。
まあ、そんな細かい事情はこの人には関係無いし、単に運が悪いでいいんだけど。
……。
いや、ちょっと待ってよ。
「まあその辺の事情は聞いてもしょうがないし」
「あの、ちょっといいですか?」
「うん?」
「勇者様の仲間だったんですよね?」
「まあ確かにそうだけど」
「魔法使いの知り合いとかいないんですか?」
普通にこの人に紹介状とか書いてもらえるんじゃないだろうか。
勇者様自身もすごい魔法を使えたらしいし、実際勇者様が魔法を込めて残した道具の力はものすごいものだ。でも、勇者様はそもそも異界から来られた方で魔法はこちらで学んだとされている。つまり仲間の中には勇者様に魔法を教えた人もいるわけで、そうじゃなくても女王様経由で魔法学校への紹介状でも書いてもらえれば、私はそれで魔法学校に入れるんじゃないかしら。ちょっと正規の手段からは外れるけど、それがどうした。最後か最初かもわからないような一歩の質を問うような贅沢をできる身分じゃ無いし。
人生は決して長く無い。努力を惜しむ気は無いけれど、楽できるときはするべきだ。それもできるだけ全力で。
「いや、ヒューマンの魔法を教えられるのはヒューマンだけだし、ヒューマンの魔法使いの寿命は多少伸びてもヒューマンの倍くらいだぞ」
つまりいないんですね。
「じゃあ、女王様にとか……」
「君、100年音信不通だった人の紹介状信じるかい?」
「女王様この後800年生きるんでしょ? 100年くらいものともしないんじゃ無いの」
「いや、1000年女王(予定)とは言うけど、それは新しい王が現れなかったらね」
やっぱり1000年生きれる予定がある上に、実際今の女王様も当時の本人のままなのか。
というかまだ200年ちょっとしか生きてないのに、誰が1000年女王とか呼び出したんだろうね。いくら本人が1000年の太平を築く女王になると宣言したからって、それで1000年女王とか呼ぶのは若干失礼じゃ無いだろうか……何が失礼なのかよくわからないけど。
しかし残念。紹介状欲しかった。
「まあいい。とにかくあの子の話を進めよう」
「はい」
いつも読んでくださってありがとうございます。
1000年女王っていうと、松本零士先生の作品と富野由悠季監督の作品、どちらが先に浮かぶでしょうか。私は富野監督ですが、この話の女王様は延命で長生きをしているので、コールドスリープとかはして無いです。




